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6話

ちょっと諸事情により投稿が遅れてしまい申し訳ございません。毎日、遅くても二日に一度のペースで投稿していくように頑張ります。


「ぐがっ!!?」


ナイフで男の首を切り裂く。《透明化》は攻撃の時に効果が解けてしまう、なので隠密行動には最適だが攻撃には効果が薄い。


これで何人目だろうか事務所内にいる構成員を殺し続けているがなかなか終わりが見えない。


「かはっ!」


また一人の男の喉を切る。切り口から空気が漏れる乾いた音が鳴った。それと同時に通路の奥から声が響いてきた。


「なんだ!てめぇは!!!?」


視線を向けると武装した構成員が数人、二人一組(ツーマンセル)で完全武装、どうやらまともな見張り番もいたようだ。


気付かれてしまったので《透明化》を解除する。通路は狭く逃げ場はない。姿を消しても無駄だろう。


「襲撃犯って奴だよ。ピザの宅配にでも見えるか?」


ちょっとしたジョークなんだがあちらさんは馬鹿にされたと捉えてしまったらしい。実際に馬鹿にしているから文句は言えないが。


見張りの一人が首から下げていた笛を吹いた。かん高い音が通路中に響く。


「なめやがって、ぶっ殺してやる!」


見張り達が腰から剣を抜き走ってきた。


「数は四人か…」


俺は手に持っているナイフを先頭の男の首を狙って投げる。命中する前に腰のサーベルを手に持って走りだし先頭の男に切りかかる。一人を切り伏せる、そして下から上への切り返しで二人目を切る。遅すぎて話にもならないな、三人目は喉にナイフが刺さり絶命している残りは一人だ。剣を構えているが剣先が小刻みに震えている。


「ひいいいいい!!」


情けない叫び声を挙げてがむしゃらに剣を振り回してきた。今にも漏らしそうな程びびってるな。


「おいおい、活きのいい腕だな」


男が間合いに入ってきた瞬間にサーベルを二度振るう。そして視界に真っ赤な飛沫が舞う。


「あ、ああぁぁ…腕が!!俺の腕があああ!!!!!」


両腕の肘から先を失った男は無様に床を転がって泣きわめく。


俺は手に持っていた忘れ物を返してやる。男の腕を放り投げると泣き声が大きくなった。


「喧しい」


サーベルを喉に突き刺して黙らせる。


事務所中から金属音と人の声、走る音が聞こえる。さっきの笛で

俺が侵入したのがバレたようだ。もう《透明化》は要らないだろうどうせ皆殺しにする予定だったしな。


俺はサーベルを右手に投げナイフを数本左手に持って通路を進む。


一時間近く経っただろうか、部屋も通路も血と肉片で床も壁も汚れている。事務所にいた人間はこれであらかた殺し尽くしたようだ、耳を澄ませるが聞こえる心音は事務所の最上階にいる一人だ。


最上階は部屋が一つしかない、ここがギルドマスターの部屋だろう。扉には『黄昏の大鬼』の紋章が彫られている。


「おじゃましまーす!」


扉を蹴破って中へと入る。部屋のなかは高そうな酒を飾っている棚に革張りのソファー、装飾がされた応接用のテーブル。部屋の所々には美術品が飾られている、部屋の奥には執務机が置かれ一人の大柄な男が椅子に腰かけている。その上の壁には持つのも大変だろう両手鎚が飾られている。


「お前どこのギルドのもんだ、ここが何処かわかってんだろうな!?」


大柄な男が立ち上がり叫ぶ。こいつがドン・ガンビーノか。


「分かってるよ三流の悪党どものお家だろ?俺は地獄への片道切符を届けにきてやったんだよ」


にやりと笑ってドン・ガンビーノに応える。俺の言葉を聞いてガンビーノは額に青筋を浮かべて憤怒の表情になる。


「ざけやがって!ぶっ殺してやる!!」


ガンビーノは壁に飾られている両手鎚を手に取ると執務机を踏み越え俺に向かって殴りかかってくる。


「ぐおおお!!?」


「おお、さすがは元白銀級冒険者だな!」


俺はガンビーノの両手鎚をサーベルの柄頭で受け止める。片手で受け止められたのが信じられないのかガンビーノの目は驚愕で見開かれている。


情報屋から仕入れた情報によると『黄昏の大鬼(トワイライトオーガ)』のボス、ドン・ガンビーノは元々冒険者で等級も上から三番目の白銀級となかなかの実力者だったようだ。だがそれは人間の枠組みでの話だ。俺の相手をするには役不足だな。


「ざけやがって!てめぇの澄まし顔ぶち抜いてやんよおお!!!!」


ガンビーノは両手鎚の重量を物ともせず巧みに操って頭上や足元時には石突きの部分をも使って攻撃してくる。力任せに見えるが相応の技術がないとこうは出来ないだろう。俺はガンビーノの両手鎚をサーベルで払ったりかわしたりしているため一撃も食らっていない。


「あんまり怒るなよ、不細工な顔が更に不細工になる」


俺はガンビーノの顔に向かってサーベルを投げつける。それと同時に俺は奴の懐めがけて姿勢を低くして駆ける。ガンビーノは両手鎚でサーベルを防いだがそこで動きがぴたりと止まった。俺が両手鎚の持ち手と鎚の部分を掴んでいるからだ。


「どうした、早く振り払ってみろよ?」


ガンビーノは全力で俺を払い退けようとするが両手鎚はピクリとも動かない。少し力を込めると乾いた音をたてて両手鎚の持ち手と鎚の部分がへし折れる。


「なっ!?」


両手鎚から手を離し呆気に取られているガンビーノの両手首を握りつぶす。手の中で肉と骨が潰れる感触がする。


「ぎゃああああ!!手がああ!!!」


ガンビーノが膝から崩れ落ちて悲鳴をあげる。クズの悲鳴を聞いていると清々しい気分になるな。


「おいおい、落ち着けよちょっと手首がスリムになっただけじゃないか」


「ざ…けんな!てめ…ぇ人間じゃねえ…だろ!」


息も絶え絶えになりながらガンビーノは俺を睨み付ける。仮にも元白銀級冒険者、俺が人間じゃないことに気付いたようだ。


俺は目の擬態を解いてガンビーノの目を見る。今、俺の目は吸血鬼特有の瞳孔が縦に切れた獣のような紅い瞳になっている筈だ。


「おいおい酷いだろ俺は正真正銘人間だぜ?」


「くそっ!ヒル野郎が!!」


「ああっ?」


ヒル野郎だと?ふざけやがって、ガンビーノの胴体と顔に何発か蹴りを入れてやる。肋骨が何本かと鼻の骨が折れたようだ。


「そうだ、お前現役時代は戦鬼(オーガ)って二つ名でやってらしいな?」


そうだ、良いことを思い付いたぞ。前からちょっとやってみたかったことだ。動物でできるんなら人間でも出来る筈だろう。


俺の笑顔を見てガンビーノは怯えた目で俺を睨み付けてくる。

そんな奴を見ながら俺は懐から大きめのナイフを取り出す。戦闘やサバイバル用途でも使える刃渡りのナイフだ。狩人は獲物の革を剥ぐのにも使うそうだ。


「オーガの剥製なんてどうだ?カッコいいだろ?」


俺の言葉と手に持ったナイフで俺が何をしようとしているのか気付いたらしい、ガンビーノは情けない悲鳴を挙げて逃げようとする。だが肋骨折が数ヵ所に手首は千切れてしまいそうなほど潰れている。弱りきった体は上手く動かせないようだ。すぐに躓いて床に倒れる。


「やめろ!頼むやめてくれ金ならいくらでもくれてやるから!」


俺がゆっくりと近づいていくと泣きながら命乞いを始めた。それにしてもこいつは何か勘違いをしているようだ、金をくれてやるとはだと?


「なに勘違いしてるんだ?もうこの事務所も組織も金も人間も俺のもんなんだよお前の物じゃあない」


そう、敗者が勝者に全て奪われるのは当然だろう。こいつらも今まで弱者から散々奪ってきたんだから。


俺の言葉を聞いたガンビーノは絶望に満ちた顔で口からは命乞いの言葉も出ないのかうめき声を小さく出すだけだ。


「さあ、解体ショーの始まりだ!」


『黄昏の大鬼』の事務所からは数時間に渡って男の泣き叫ぶ声が響き渡った。

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