表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/13

10話

仕事の転職とうとうで更新できていませんでした申し訳ございません


アイリーンが酔い潰れて現実から目をそらし始めた頃にようやく事態が進展した。フランクの部下とセレストの銀級冒険者が襲撃犯を連れて広間に入ってきたのだ。


いや、正確には襲撃犯だったものか。


「ボス、申し訳ありません」


広間に入ってきた連中が皆、視線を伏せて謝罪の言葉を述べる。


彼等は命令通り連れてくるには連れてきたのだが生け捕りには出来なかったようだ。襲撃犯の死体を部屋の中央まで引きずってくる。


彼等は一様に顔を青くさせ心拍数が上昇している。あぁ、俺の命令通りにできなかったから怯えているのか。


確かに最近は暇潰しと称してギルドにいらない人材や害悪になる人材を玩具にしていたが、部下達に誤解されるのは困る。俺は自分の務めを果たそうとした人間をむやみに罰したりはしない。


「まぁ、仕方ないだろう。相手も玄人だったようだしな、気にするな」


俺の言葉を聞いて部下達はホッとしたのだろう心拍数がいくらか落ち着いたのを感じる。


死体は全部で三体だ。服装は黒づくめで持ち物は武器の短剣と毒の入った小瓶のみ、身元が割れる物は一つも持っていないようだ。


襲撃は三回でどれもフランクの部下が護衛についていた、統率も取れていたようだし元軍人相手でも問題ない戦闘力、何処かの組織の奴だな。


「ボス、いかがいたしますか?」


フランクが長剣に手をかけながら声をかけてきた、セレストも薙刀を立てている。どちらも俺の号令があれば街に繰り出して怪しい奴を片っ端から始末しそうだな。


「まぁ、今日のところはとりあえずお開きにするか。お前達もご苦労だったな今日はゆっくり休め」


殺気だったところでどうしようもないだろう、部下達に労いの言葉をかけて俺は広間を後にした。


もちろんバーカウンターで酔いつぶれていたアイリーンを肩に担ぐのを忘れずにだ。


アイリーンを彼女の部屋のベッドに放り投げて自室に戻り考えを巡らす。


連中が生きていれば魅了(チャーム)で聞き出せたんだが仕方がない。それよりもこのままだと『夜の血族(ミディアンズ)』は経済的に破綻する可能性もある早く手を打たねば。


「そうだ、いいこと思い付いたぞ」


アルコールで冴え渡った俺の頭に一つの名案が思い浮かんだ。








襲撃犯殺害から数日、夜道を一台の馬車が通っている御者と馬車を囲む護衛達の手の甲には目玉と逆さ十字を組み合わせた不気味な刺青が彫られている。


ランプと月明かりを頼りに薄暗い街道を進んでいると最後尾にいた護衛が音も立てずに後ろに倒れこんだ。そして一人また一人と護衛は欠けていく。


「狙われているぞ!!」


護衛の中でも経験豊富な者が襲撃に気付くが護衛は最初と比べると三分の二ほどの人数になっていた。


腰から長剣を抜き背中を仲間達に預けるように馬車の周りを囲む。御者の男も座ったままクロスボウを構えた。


彼等は姿も見えない襲撃犯に焦りながらも頭をクリアにして剣を構えている。


何処かから紙クズを丸めた玉のような物が投げられてきた。それは護衛達の近くに落ちると地面に当たったと同時に激しい煙を吐き出す。そう煙幕だ。


「ちくしょうっ!めんどくせぇ!」


催涙効果も有るのだろう護衛達は苦しそうに目と鼻を押さえている。そんな彼らの間を黒い人影達が素早く行き交いその度に護衛達がどんどんと倒れていく。


護衛達も剣を振るい必死で応戦するが残念ながら襲撃犯の方が一枚上手だったようだ。


「ごほっごほっ、全員退け!退却だ!」


護衛達のリーダーらしき男が叫ぶと護衛達は戦闘を中断し路地へと逃げ込んで姿を消した。スラムは彼等の縄張りだ要り組んだ路地に逃げ込めばいかに腕のたつ襲撃犯でもそうそう捕まえることはできまい。


襲撃犯達もそれを理解しているのか護衛達が逃げると短剣を懐に納め馬車に乗り込んで走らせた。


これで通算四度目の夜の血族(ミディアンズ)への襲撃である。








俺はというと現在、体を窮屈な木箱のなかに折り畳んで息を殺している。先程までは外が多少騒がしかったが今は馬車に静かに揺られているのみである。襲撃犯達は無事罠にかかってくれたようだ。


しばらくすると馬車が停止し荷台から荷物が下ろされていくのを感じた。俺の入っている木箱も抱えられ運ばれているようだ。どうやら連中のアジトについたらしい。


「なんだこりゃ?やけに重いな」


こいつめ紳士に向かってなんて失礼なこと言いやがる。


木箱が降ろされると同時に腕で木箱を突き破り抱えていた男の喉を握りつぶす。これでもう失礼な事は言えないだろう。


そのまま木箱から出る、どうやらここは倉庫のようだな。回りには雑多な荷物と俺のギルドから盗まれた物も積まれているようだ。


俺の姿に気付いた作業員が声をあげようとするが彼が叫ぶ前に俺は数メートルの距離を一息で詰めると爪で彼の喉を抉りとった。


倉庫にいる作業員はこの二人で全員らしい。今回は木箱のなかに隠れていたせいでサーベルは愚か丸腰の状態だから自前の爪と牙で戦うしかない。


「さてと夜のお散歩と洒落混みますかね♪今夜は快晴時々血の雨に注意ってね」


俺はにやりと笑って手に付いた血を払い落とすと倉庫の外に向かって歩きだした。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ