禁忌の森②
初心者の長編に付き合って頂いて感謝。
それからフィーナに魔法を教えてもらいながら、森の眷属達と模擬戦をしたりして外の世界で生きていけるように訓練を積んだ。
「未だに、イドラホースには勝てない。あいつがラスボスって事はないよな?」
「んなわけないじゃない。グレンが弱いだけよ。私を除外してこの森では最上位とはいえ、そろそろ勝てるようにならないとダメよ。」
神殿に来て3年、他の眷属達には勝てるようになったがイドラホースは頭が良いだけでなく、ちょっとした隙や攻撃の間に凄まじい威力の魔法をぶっ放してくる。
「まぁ魔法の幅も広がったし、手札でいえば負けてないのよ?後は戦術とか予測とか、要は経験だと思うよ。」
(戦術と予測か。ちょっと戦い方を変えてみるか。)
今までは接近戦で様子をみて、低級魔法などの発動の早い魔法で繋いで中級や上級の魔法でダメージを与える流れで戦っていた。
(悪くはなかったが無駄があるとすればそこか。)
「よし。フィーナ、ちょっとリベンジしてくる。」
「頑張れー。あの子に勝てば、そこら辺の魔物や人間には負けないわ。」
神殿を出て森に入り、イドラホースを呼ぶ。
「イドラホース!!リベンジマッチするぞー!」
木々の間からイドラホースが堂々と出てきた。
「今日こそ勝つからな。」
直ぐにイドラホースと間合いをとりつつ狙われないように走る。
バチバチとイドラホースの角が黒に近い色の稲妻を纏う。
「ダークバインド」
イドラホースの足元に出た黒い手がイドラホースの脚を狙う。
イドラホースは素早く反応し、宙を駆ける。
(よし。ここだ!)
「マルチ・ダークバインド」
今度は複数の手が一斉にイドラホースに向かう。
足元や視界を遮るように魔法を操る。
(訓練期間はたった3年だ。付焼き刃の体術だと、イドラホースには勝てない。体術は接近された時の牽制ぐらいにして、小規模な低級魔法を上手く使って隙をつくる。)
「拘束は出来なくても、足元で行動を妨害したり視界を短時間奪うぐらいは発動が早い低級魔法で十分だ。」
マルチ・ダークバインドは魔力を込める分だけダークバインドを出せる便利な魔法だ。その分数が増えるとコントロールが難しいが、大雑把に足元や顔の前に発動すればいい。
「ダークナイフバレット。」
すかさず闇魔法で作った黒一色のナイフを大量に飛ばす。
次々と魔法を放つがイドラホースはしっかりと対応してくる。目の前の魔法は角でかき消し、足元は空中を舞うように駆け抜けて避けている。
その間に闇の魔力を纏って、次の攻撃の準備をする。
大量のダークナイフを複数のダークバインドが受け止めて投げる。違う角度からの全方位攻撃を仕掛けてイドラホースの死角を狙う。
イドラホースはダークバインドが邪魔だったのか角から黒い稲妻を放つ。
(今だ‼︎)
稲妻が放たれる寸前にイドラホースの目の前まで接近する。そして闇の魔力を纏って黒くなっている右腕を角に向かってつきだす。
「闇の侵食。飲み込み犯し、我の力に。」
イドラホースが放った稲妻が右腕に飲み込まれる。
「倍返しだ。」
イドラホースに右腕で触れた瞬間、稲妻がイドラホースを襲う。完璧なタイミングのカウンターだ。
イドラホースの稲妻は、闇と雷の複合属性で中級から上級の威力がある。それを自分の右腕に込めた魔力を上乗せして返した。
(ちょっと無茶だったかな。右腕が痛すぎる。)
「おー!やり方は微妙だったけどイドラホースを倒せたじゃない。」
フィーナが嬉しそうに飛んでくる。
「イドラホース相手で正面からの一対一じゃなかったら、他のやり方にしたさ。」
「まぁ魔法の使い方も戦い方もこれで合格かな。」
そう言ってフィーナは回復魔法をかけてくれる。
「ありがとう、フィーナ。それにイドラホースも。」
イドラホースはフィーナの回復魔法で傷を治ると軽く頭を下げて、森に帰っていった。
「森でできる特訓は終わったし、これからどうするの?グレン。」
「闇魔法の使い手は王国に居場所がなさそうだし、とりあえず他国の街が目標かな。そこで情報を集めるさ。」
「そうと決まれば、旅の準備ね。」
「そうだな。今日は休んで、明日は必要な荷物をまとめて明後日には出発だ。」
「私も久しぶりの外だから楽しみ〜。」
「フィーナも一緒にきてくれるのか?」
「当たり前でしょ。私が居ないとグレンはダメダメなんだから。」
そんなことないと思うが、フィーナが居ると助かる。フィーナは闇魔法はもちろん、回復魔法などの便利な魔法を沢山使える。それに1人旅など経験がないから心強い。
「ダメダメってのは引っかかるが助かるよ。これからもよろしくな。」
転生してからは散々な人生だったが、ここから心機一転、楽しくなりそうだ。
次話は少しあきます。話をためてから投稿します。