禁忌の森
手探り状態ですみません。
「とりあえず動くしかないか。」
食料や水、安全を確保しなければ、すぐにあの世行きだ。
理想は、川から少し離れた場所。そう考えて、歩きだした。
休憩を挟みつつ、森の中を進む。
3時間くらい進んだところで物音がした。
(なんだ⁈ 魔物か⁈)
そこには3メートルほどの屈強な馬がいた。黒い鬣に2本の大きな角。攻撃されれば一撃で吹き飛ぶだろう。
(気づかずに去っていってくれればいいが。)
草陰に隠れて、すぐに身体強化を出来るように身構える。
すると魔物がこちらを視界に入れた。
(バレたか⁈)
魔物はこちらの警戒をよそに首をゆっくり縦に振り、静かにその場をあとにした。
(なんだったんだ? 会釈したようにも見えたが)
その後は、他の魔物に会うことなく2時間ほどで川にたどり着いた。川沿いにも魔物の姿はなく、一心不乱に喉の渇きを癒した。
(禁忌の森。思っていた雰囲気とはだいぶ違うな。一度は魔物に会ったが、綺麗な森だし川にも特に障害なくたどり着けた。)
川の水を飲み休憩をしているとあるものが目に入った。
(何だあれ?建物みたいだが。)
そこには古く、ぼろぼろな遺跡のような大きな建造物があった。
(どう考えても危険な気がするが、森を彷徨っても仕方ないし行くしかないか。)
魔物に注意しつつも建物に向かう。
(こんな状況じゃなければ、冒険気分で楽しいだろうが。魔物に襲われたらと考えると最悪だ。)
無事魔物にも会わず建物に着き、周囲を探索するが入口が見当たらない。
(建物自体はすごく古い感じだ。でも扉が無いな。異世界らしく魔力でも込めてみるか。)
建物正面の壁に触れて、魔力を込めてみる。
すると、何かが外れる音と共に壁が扉のように開いた。
建物の中は外と違い、美しいステンドグラスと女性の像が立っていた。
(教会なのか? だが適正検査で行った王国の教会とは雰囲気が違うな。あちらは金が装飾されていたり豪華絢爛な感じだったが、ここはステンドグラスと彫刻ぐらいで普通の中世の教会みたいだ。)
「お客さんとは珍しいね。」
突然に建物内に声が響いた。
「500年ぶりくらいかな。久々のお客さんだ。」
声はするが姿が見えない。敵だったらと思うと不安だが話しかけてみる。
「誰かいるんですか?」
声の主は楽しそうに言葉を返してくる。
「ハハッ 私はここだよ少年。」
声の方を見ると小さな妖精?がクルクルと陽気に飛んできた。
「妖精??」
「私は妖精じゃなくて、精霊だよ!しかも実態化もできる上位の精霊なんだから。」
えっへんと胸を張って精霊が言う。前に母が精霊について教えてくれたが、普通の精霊は自我もなく空間を漂っている属性付きの魔力のようなもので自我がある精霊は神の使いのような扱いだった。
「やっとこの神殿に入れるくらいの使徒が来たんだから、私の役目を果たせるわ。」
思っていたより子供っぽい精霊は、嬉しそうに話しかけてくるが訳が分からない。
「使徒?」
「使徒って言うのは、女神様の使いよ。炎の神や雷の神みたいな神々が平和や地上を豊かにする為に適正の高い人達を選んで、使徒になって使命を果たすの。」
クソ親父は光の使徒だと言ってたな。他の属性にもそれぞれ使徒がいるのか。
「でも俺はここに入ってきただけだけど?」
「ここの入口は、魔力を込めれば開くけど普通の魔力じゃあダメなの。一定以上の適正がないと開かない。闇魔法のね。 」
闇魔法か。てことは、、
「で、貴方が闇の使徒!ってこと。闇の適正が低かったら入れないどころか、ここに辿り着くこともできないしね。」
「辿り着けない?」
「あの森は、闇の女神様の眷属達の庭なの。眷属達は闇の適正がある程度ないと敵だと認識するわ。」
「あの馬に襲われなかったのはそういうことか。そのあとは何も出てこなかったが。」
「イドラホースね。あの子がこの森の守護者なの。あの子が神殿に通したんなら、他の子達は
手を出してこないわ。」
確かに凛々しくて強そうだったな。実際強いんだろう。
(それにしても闇の使徒に闇の女神かぁ。なんか悪役って感じだな。)
「そんなことないわ‼︎属性自体に善悪はないし、女神様はいい方よ。光の女神は性悪だけど!」
「えっ⁈⁈ 心が読めるのか⁈」
「ここは闇の神殿だから、私の領域なの。この中でなら表面的な心だけだけど、読むことができるわ。」
「そうなんだ。それで闇の使徒って何すれば良いの?」
使命やらが怖くて聞いてみた。
「特に指示とか命令がある訳じゃないよ。自分が正しいと思う事をしていけばいいよ。まぁまだ魔法も何も使えないだろうから、体も魔法も鍛えた方がいいだろうけど。」
命令されないのはうれしいな。とりあえずは戦闘力アップが目標かな。
「確かにある程度強くならないと、コネも金もないから生きていけそうにないな。体はまだしも魔法をどうやって覚えていくかだ。」
「闇魔法は私が教えてあげるわ。体術や戦闘技術は眷属達と実践あるのみね。」
「それは助かるよ。これからよろしくね。そういえば君の名前は?」
「私は闇の精霊、フィーナ。貴方は?」
「グレン。家名はない。ただのグレンだ。」
「?? これからよろしくねグレン。ビシビシ鍛えてあげる!」
凄くご機嫌なフィーナに不安しかないが何とか生きていけそうだ。。
また明日には次を投稿します。
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