第1章
俺は、気が付いたら野原にいた。
いつ、どうやってここに来たのか
少しも覚えてない。
しばらく、どこまでも続く野原を見ていた。
ふと、後ろを振り返ってみたら
小柄で白いワンピースを着た女の子が立っていた。
「ねぇねぇ…あそぼ?」
女の子は笑いながら一歩一歩
俺の元へと近づいてくる。
どうすればいいのか戸惑っている俺に、
女の子は手を差し伸べてきた。
手をつかむべきか少しだけ悩んでから
俺は女の子の手をとった。
どうせ暇だし、幼女なら大歓迎だ。
女の子の手はピタッとひどく冷たかった。
少し驚いて女の子を見つめる。
女の子は何を思ったのか意地悪な顔をして、
俺の手をひいた。
少しずつ引っ張られる力が強くなって
女の子との距離が短くなっていく。
「えっ…ちょっと待て!!!」
手を離そうとするが女の子は離れてくれない。
「おい!離せ‼」
力が弱まったひょうしに地面へと倒れる。
地面がこすれて、俺の服が破れていくのがわかる。
痛みを噛みしめて女の子を見ると、
女の子はさっきより嫌な笑みを浮かべていた。
「お前はいったい
俺をどこに連れて行く気なんだ‼」
女の子を睨みつけながら言った。
「フフフッ
おにーちゃん こっちこっち‼」
いつの間にか森にいた。
引きづられた道を見ても、
さっきまでいた野原は見えない。
膝や肘、顔からの血や、こすれた跡で、
来た道が分かる。
俺は、弱まった女の子の手を振り払って
血のある道を走った。
「ハァ…ハァ…」
女の子に会いたくなくて、ひたすらに。
しばらく走ったところで
もう大丈夫だろうと振り返ると
女の子が追いかけて来るのが見えた。
「うそだろ…はえぇ‼」
追いつかれないようにスピードを上げて走る。
「お…おにーちゃん…?」
急に声がして横を見ると、
そこにいたのは、
後ろにいたはずの女の子だ。
「ハァ?」
思わず叫ぶ
いきなり、冷たい手が首元にあたり、
意識が途切れた。
森には
不気味な女の子の声が響いていた