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窓の外
Yさんが、骨折した友人の見舞いに行ったときのこと。
季節は冬で、その日は雪が積もっていた。病院のエントランスホールに入ったYさんは、かじかむ手を温めながら、事前に聞いていた病室に向かった。確か1階の奥だったはずだ。
難なく病室までたどり着いたYさんを、友人は歓迎した。入院生活に退屈していたのか、思いのほか話に花が咲いた。
しばらくして、Yさんは興奮した様子で言った。
「おい、後ろ。今すごい綺麗な女が通り過ぎたぞ」
病室の外を、女が通り過ぎたという。横顔だけだったが、かなりの美人だったそうだ。
だが友人は困惑の表情を浮かべている。
「柵があって、近寄れないようになっているはずだが……」
気になったYさんは、窓の外をのぞき込み、息をのんだ。
一面に白い雪が積もっている。そこには、足跡一つ付いていなかったのだ。
「じゃあ、さっきの女は、いったい」
そこでYさんは、あ、と叫んだ。どうして気付かなかったのだろう。当然だ。足跡なんて残るわけがない。
窓の外を通り過ぎた女は、逆さまだったのだから。




