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それはお盆のことでした
幽霊を信じる気になったことが、一度だけ、Kさんにはあったという。
それは大学生の頃。盆休みに帰省したKさんは、数年ぶりの、実家での夜を迎えていた。Kさんには年の離れた妹がいたので、二段ベッドが置いてある。いつもKさんが下の段、妹さんが上の段を使っていた。
『おねえが上に乗ったら、底板が抜けるからね』
『ぶっ飛ばすよ』
布団の中でまどろんでいると、そんな懐かしい日の記憶が蘇ってきた。と、その時。
ギシリ。
寝返りでもうったのか、上のベッドが軋んだ。なんだ、人のこと言えないじゃん、と一瞬思って、すぐにはっとした。一気に目が覚め、そして、静かに泣いた。
妹さんは、ずっと昔に、幼くして世を去っていた。




