アテクチさん
Wさんが高校生の頃に体験した恐ろしい話。
彼女たちの学園では、とある怪談話がはやっていた。アテクチさん、というものだ。
なんでも、昔その学園に通っていた女生徒の霊で、何かを呟きながら夕暮れの校舎を徘徊するらしい。それも、後ろ向きで。
Wさんにその話を教えてくれた友人によると、アテクチとは当て口、つまり当てこすりや皮肉のことだという。Wさんは笑った。延々と嫌味を口にしながらムーンウォークをする霊など、怖いはずもない。
しかしWさんはその認識を改めることになる。部活終わりの薄暗い校舎で、彼女はアテクチさんに遭遇してしまったのだ。
髪の長い女。制服は随分昔のデザインで、スカートは長い。そして、不自然な動きで後ろ向きに歩いている。すれ違い際、
「アテクチ……アテクチ……」
と呟いているのが聞こえた。当てこすりではなく、そのまま「アテクチ」と言うからアテクチさんだったのか。
女がそのまま数メートル進んだ時、驚いたまま固まってしまったWさんと、その女の目が合った。アクテチさんはぎろっとWさんを睨むと、こちらに引き返してきた。今度は後ろ歩きではない。ブツブツと呟きながら、どんどんこちらに近付いてくる。
逆再生されていたのだと、Wさんがようやく気付いた時、すでに女は目の前に迫ってきていた――「見つけた」
みつけた mitsuketa
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あてくち atekuchi(m)




