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ツメキリ

 

 Rさんの母方の家系は、江戸時代から続くという歴史ある家だ。そのせいかどうか、人知を超えたものが棲み着いていたところで、家の者は誰も気にしない。


 その一つ、「ツメキリ」の話を、Rさんは耳に挟んだ。


 名前の通り、爪を切る物のだそうだ。爪を切っていると、自分が切る音に混じって「パチン」という音がする。そんな時、足下にツメキリがうずくまっているという。


 Rさんは怪談の類は信じていない。むしろ馬鹿にしている。だから、「爪を切ってくれるなんて良い奴じゃないですか」と言い放った。彼は少しずぼらな性格で、よく爪が長くなり過ぎる男だった。


 話をした親戚は苦々しい笑みを浮かべただけで、Rさんの勘違いをただそうとはしなかった。しかし数日後Rさんは、実際にツメキリに遭遇し、自分の思い違いを悟ったという。


 その妖怪は、背丈15センチほどの、人型だった。そして、口から大きく飛び出た、まさに爪切りの刃のように湾曲した形状の前歯で、床に散らばっていたRさんの爪のかけらを、一つずつ噛み切っていたのだ。パチン、パチンと、細切れになるまで。


 なるほど、素足で爪を踏んで怪我なんかしないように、掃除してくれているのか――Rさんはいっそう感心すると同時に、その妖怪の容姿に既視感を覚えた。飛び出した前歯。


 そういえば、母方の親戚には、出っ歯の者が多い。






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