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異世界で無双してもコンプレックスは直らない件  作者: 製造物
四章、無法侵入する帝国編
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65、絶望の山での桃色君

 ああ、世界はこんなにも美しかったのか・・・。


 勇馬は柄になくそんなことを思った。


 ちなみに彼がそんなことをのんびりと考えているのはちょうどドス黒い血をそこら辺に撒き散らした火龍の死体の上である。普通の感性の持ち主ならばそんなことを思うよりも格上を倒した優越感に浸るだろう。


 だが、勇馬にとって今雑魚の火龍のことなどどうでもよかった。


「す、すごいな、こんなにも簡単に火龍を倒すなど・・・」

「もっと褒めてくれてもいいんだぜ」


 銀の女性が少し戸惑いながら勇馬を褒め称えた。勇馬はもうすでに浮かれている。


「貴様ぁ!!姫さまと軽々しく話すなぁああ!!」

「ぁあ!!?」

「すいませんでしたぁああ!!」


 厳重なガードで勇馬を彼女から引き離そうとする兵士達は勇馬のひと睨みで吹飛んだ。


『・・・なんだかこんなシショー珍しいね〜』

『・・・それに関しては同感いたします。ラン』


 そして隅の方にはランとその両手で抱えられている賢者の書が違和感をビンビンに感じ取っていた。


 なぜこんなことになったのか・・・賢者の書は自身の記憶を慎重に探り寄せていた。


 ...........................................................................


「私の名はリシャーナ・チューズ・ヴァレンティア。帝国内にあるエルフ国の臨時女王だ。よろしく頼む」

「リシャーナか・・・いい名前だな」


 正座をしながら右手を胸に左手を膝の上に置き、自己紹介を行う銀の少女、リシャーナ。一つ一つの機微だけにも礼儀の正しさが伺える。・・・また一つ勇馬は惚れ直した。


 可愛らしい女性の顔立ちをしながらも多少、声に男らしさがあるところに勇馬は僅かな疑問を覚えていたが、・・・恋は盲目と言うべきか。そんなものは彼女の可愛らしさのスパイス程度にしか感じていなかった。


「それでリシャーナ、なんでさっき触れた時にあんな驚いたんだ?エルフって他人と触れたらダメって言う制約でもあんの?」

「貴様!!姫さまに無礼だぞ!!」

「よさないか、ヒスリア!彼は命の恩人なのだぞ!それごときにこだわっていては情けないではないか!!」

「・・・っ!」

「謝れ!」

「・・・すみませんでした」

「おう、いいぜ」


 普段の勇馬であれば「無礼返しにキックをプレゼント!!」といったところだが・・・やはり恋は人を鈍らせる。普段の勇馬の姿を知るランと賢者の書は唖然としていた。


「それで・・・えーっと・・・」

「黒輝 勇馬だ。ユーマって呼んでくれ」

「わかった、ユーマ殿」

「・・・殿って」


 明らかに外国の女性に見える人が「殿」っていうのはすごく違和感。というか異世界に来てまで言われるとすら思っていなかったな。


「失礼だったのかな?我が国では『殿』という呼び方は()()()()()()()()()()()なのだが・・・」

「姫!!?性別を間違えております!!」

「間違えてんのはテメェだ!!そこの野郎エルフがっ!!」

「ガフっ!!」


 勇馬の流れるようなデコピンがエルフの男性に被弾する。何回転かしてからやっと止まった。・・・すごく痛そうである。


「それで?なんで手触れたらダメだったんだ?」

「いや、ダメというわけではないのだが・・・」


 少し口ごもってから彼女はその言葉をはっきりと口に出した。


「私は・・・呪い子なんだ!!」


 顔を強張らせながらやっとの思いで真実を答えたリシャーナ。しかし帰ってきた言葉は・・・


「呪い子ぉー?なにその不穏そうな言語?言葉のセレクトミスじゃね?」


 と明らかに場の空気とミスマッチな言葉だった。


「う、うむ。その通りなのだ。私は通常“聖”か“魔”の性質を持つところを持っていないんだ」

「持っていない?それだけで呪い子って呼ばれてんのか?」

「それだけではない。私は生物に触れるとそのものを殺してしまう特性を持っているんだ!!」

「・・・?」


 めちゃくちゃシリアスな展開!しかし勇馬は「はて?おかしいな?」といった顔だけを浮かべていた。そこには驚愕も畏怖もなかった。


「でもよ、俺のことは殺せなかったじゃねーか?それはどうゆうことなんだ?」


 そう、その言葉はもっともであった。


 リシャーナはつい先ほど勇馬と手と手で触れ合っていた。それにもかかわらず、勇馬が死ぬどころかなんの影響も存在していなかった。


「わ、私もそれはわからない・・・だが!私が普通でないことは言える」

「うん、それで?」


 苦しそうにその言葉をリシャーナは述べた。だが、勇馬の方はあっけからんとして次の言葉を催促する。


 勇馬にとっては呪いなどどうでも良いのだ。


 勇馬は見抜いていた。


 彼女が()()を勇馬に頼もうとしていることを。


 その言葉が図星だったのかリシャーナは眼をそらし、手の力を僅かにだが強く握った。


 おそらくはそれほどに危険なことを勇馬に依頼しようとしているのだ。


 やがて彼女は決意したのか顔を上げた。そして、


「君の善意に漬け込むようだが・・・依頼したい」

「なにをだ?」


 そして彼女は告げる。


「エルフの国まで、護衛をしてくれないか?」

次回!珍しくシリアス回!(かもかも)

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