64、剣は壊れる
諸事情でしばらくペースが落ちるかと思われます。すみません
『ゴォアアアア!!!』
木々の隙間から姿を現わすは気味の悪い軟質的な黄緑の体皮をもつ龍、種族名はクドリウェルト。水龍の一種、ランクはA−である。
手と身体の一部が膜で繋がっており、それが瞬間的にも空を浮かぶ役割を果たしている。
またブヨブヨとした皮膚は水陸両用であり、衝撃や斬撃、神法を緩和する能力を持つ。
龍の中では中くらいのランクであるもののそれでも災害レベル、普通の人間が出会えば直ぐに逃げることになるだろう。
しかし・・・
「うるせぇ!」
『ガッ!!』
よりにもよって襲いかかった人間はとても普通の相手とは言えないような龍以上の怪物。
黒髪を撒き散らしながら身体を半回転させ放った蹴りは見事に龍の顔面に的中。
体重は優に400キロ、体長は5mを越す龍が独楽のように回転する。
骨が圧殺される音とともに龍は命を投げ捨てた。
ぐしゃりと龍が崩れ落ちるとその人間は手に持っていたマンガ肉にかぶりついた。
「たく、こっちは飯中だっていうのに・・・雑魚は身をわきまえろよ」
『シショー、今のはボクがやりたかったー』
「マジで?でもあんなのレベルの足しにもならん・・・2つ上がってる」
『今のは一応A−でしたからね』
「嘘だろ!!?こいつ阿修羅、海蛇どころか蜘蛛よりも弱いんだけど!!?」
そう、普通の人間が災難と感じるような脅威をこの者たちは唯の雑魚としてしか認識していないのだ。
【剣姫】の称号を持つ上級冒険者、黒輝 勇馬は神法の天才の魔獣、ランと意思を持つ神具、賢者の書は危険地帯と言われる龍の巣である山脈の一角でワアワアと騒いでいた。
『まあ、あの町の位置や私たちが最初にいた場所はランクと戦闘能力があまり一致していませんからね。ほぼあいつらの方が格上です』
「そこは一致させろよ、ギルド」
『戦闘もできないような相手の実力はステータスではあまり理解されませんからね』
「ああー、たしかに」
勇馬はかぶりつきながらかの森での戦いを思い返していた。
あいつらは何かしらの普通ではない能力を持っていた。
狼は速さと群れとしての統率力、鹿は立体的な戦いの知識とその実力、ゴリラは駆け引きとそれを押し通す馬鹿力、海蛇は神法と防御力、阿修羅は全てのバランスの良さ、イソギンチャクは敵の逃げ場をなくすほどの攻撃範囲と腐蝕液の破壊力、そしてラヴァハートは魔石を食べる力と尋常じゃないほどのヘイト能力。
長々と書いたがつまり!全部が全部のモンスター、なにかが突発していたのだ!
蜘蛛でさえも森外のモンスターだったとはいえ、それなりの知能を持っていた。それだけでまたアドバンテージになりえる。
それがこのモンスター、まったくもって何もない。せいぜい防御力が多少ある程度。決め手も生き延びる術も謙虚さもない。イコール、ただの雑魚。
こんなのがA−なのだから同格とされている阿修羅や海蛇が可哀想である。ああ、あいつらが懐かしい。
というかだな、
「俺、剣使ってないのになんでこんなに圧勝できんの?」
『周りの質が下がっているからでしょう。とはいえ、あの森に戻るとなるとラヴァハートがどうなるか・・・』
「そうなんだよなぁー」
あいつさえいなければ俺はずっとあそこでレベル上げし続けるのになー。残念。
『シショー、さっきの龍の丸焼きかんせーい』
「おおー、すごいぞラン!!今回は炭になってないじゃないか!!」
『ですが・・・一部すごく焦げてますよ』
「いいんだよ、そんなの!!ランが作ってくれたんだ!俺は死んでもいただくぜ!!」
バリバリガリガリモグモグ、普通の食べ物を歯で砕く音ではない。勇馬の口の中で何が起きているのか・・・宇宙は謎がいっぱいである。
『!!【探知】に何者かが引っかかりました!龍に追われています!!』
「こんなところにか?」
珍しいな。ここにもう一週間ぐらいいたけど・・・特に人は誰もいなかったしな。
「それじゃひとまず人助けと行くか。賢者の書、場所は?」
『目の前です』
『ほんとだー!いたー!シショー、ボクが仕留めていい?』
「・・・いや、あれは俺にやらせろ。ぶった斬りがいがありそうだ」
目の前に現れたのは人、数人と地龍だ。地龍はノロイがその分GPが高い。なかなかいいサンドバッグなのだ。
座布団がわりに敷いていた勇馬と同サイズの大剣を拾い上げる。
これは森の途中で拾ったものだ。村の剣はどうにも質が悪かったのだ。これもなかなか年季が入っているが・・・仕方あるまい。
「あんたら、死にたく無けりゃどきな!」
「「「はぁ!??」」」
目の前の奴らをジャンプして避ける。人々はその行動に瞠目する。
そして、高々と掲げた大剣を自身の落下とともに振り落とす。
地龍の鱗と大剣が轟音を生み出す。
土色と銀色が粉々に舞い散る。
ああ、大剣よ。これでお前は死んだ剣シリーズ第11代目だ。・・・この数日でどんだけ滅びるんだお前ら?
ともかく、龍は倒した。とりあえず剣を振ってスカッとしたぁあああ。
「貴様!!何者だ!!?」
「・・・あぁ?」
「「「ひぃいい!!」」」
銀のサーベルが勇馬の目前に突き刺されると同時に反射で勇馬は【威圧】を行なった。
怒涛のプレッシャーはあっという間に彼らを恐怖で支配した。
さて、このままどのように料理してくれよう。
敵は13名、男が12名、そしておんnaがぁあああ?
そこに座っていたのはまさしく銀色の天使。
さあっと乱れる銀の髪は勇馬の目を焼くほどの光を放った。
瞳も銀色で光沢を持っており、一切の濁りを許していなかった。
ところどころがはだけ、見えている肌は雪のように白くみずみずしい。
そして何より長い髪の合間を裂くように生える横長の耳。それが彼女が【エルフ】であると表している。
だがそんなことはどうでもいい。
勇馬は現状理解を放り捨て、今やるべきことを行う。
彼女の目の前まで進み出る。
銀の視線は不思議そうに、そして怖そうにこちらを見ていた。・・・そういえば【威圧】解除してねぇな。
とりあえず解除する。
そして、勇馬はゆっくりと口を開く。
「好きです。俺と付き合って下さい」
勇馬は彼女の手をゆったりと弾きながら片足を地面につき、・・・俗に言うプロポーズをした。
静寂がその場を染め上げた。
さっきまで【威圧】で意識が朦朧としていたエルフも、日頃から勇馬の規格外の行動を見ている1匹と一冊も、
みんな仲良く、
「「「「『『えぇえええええええええ!!!!!!???』』」」」」
合唱した。
そして1人、場違いな驚きの言葉をはせる。
「私に触れているぅうううううううううううう!!!???」
森に恐ろしいくらいに響き渡った。




