A2、妖精は騒がしい
今更ですがA=アゲハです。
王都の近隣に存在する巨大な森、ヒューマ森林。
そこには今日も魔獣と人々の雄叫びが響いていた。
「「「「「おおおおおおお!!!!!」」」」」
「「「「「ガァアアアアアア!!!!」」」」」
こんな感じに。
ちなみにこの声の発生源は下級冒険者とコボルドの群れ。どちらも互角。アゲハ的には見ていて逆に関心するぐらいだらしない戦いであった。
『なんで、あんなの見てんだぁー?アゲハ?』
『・・・ザッコ』
『皆さん、そんなこと言ったらダメ〜』
『そんなのいいから早く帰りたい』
『雑魚、乙』
「・・・」
アゲハの周りを五つの光がくるくると回っている。赤、青、桃、緑、黒の光である。・・・なんだかとある五人組ヒーローを思い出すような色の組み合わせであった。
「レイド、ブル、ピン、グリ、ブラーク、とりあえず黙れ、虫ども」
『『『『『イエスマム!!お嬢様!!!』』』』』
この光の正体、精霊である。
最初は未知の生命体ということで始めて見たときに目をキラキラとしたものだが・・・ドMなのである。
それが分かったのはブンブン周りを飛んでくるのがウザかったのでつい蚊と同じように全員ペチンッとしてしまったのだ。
すると、信仰されるほどに今まで乱暴な扱いをされることがなかった精霊たちには始めての体験だったのか・・・快感へとなってしまったようだ。
いや、勇馬君がいるまでは知らなかったです。今では一定間隔でいじめなければ『放置プレイですか!!?』とハアハアされる始末。何を間違えたのか・・・。
とりあえず八つ当たりとして全員を棍棒で殴る。さっきまで手やアイテムボックスに棍棒はなかったはずなのだが・・・世界は未知で満ちている。
というか八つ当たりをするあたり、やはりアゲハは主人として相応しいのであろう。本人にその自覚はない。
うーんうーんと頭を悩ませているところで、
「アゲハ!国王が呼んでるぞー!」
「どうやら訓練に関しての話のようですよー」
園田君と蓮ちゃんが私に話しかける。訓練に関してか・・・アルベルトさんがついに倒れちゃった?
アルベルトさん最近色々あったしなー。勇馬君の事件に関してとか、人の恋愛事情調査とか、訓練のスケジュールまとめとか、勇馬君が今までやってたぶんが帰ってきたとか。
そういえば勇馬君について2人と話し合ってからさらに5日間たっている。私たち個人、王国自体も調査こそしてるけど成果は虚しくと言った感じである。
そしてそれと同時に王国の調査は打ち止めとなってしまっている。アルベルトさんや国王は協力してくれているのだが・・・あくまで裏でこっそりとしか行えない。
国王は「彼奴は役立つし、何よりもしぶとく生き延びることには長けているはずじゃ」と協力してくれている。案外ツンデレさんなのかも。
それはともかく、会議室にだよね。さて、いこー。
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「単刀直入に言わせていただきます。皆さんは現状において成長は難しいかと思われます」
これはアルベルトさんが放った一言だ。・・・え?ドユコトで?
「アルベルトさん!それはつまり僕らじゃ役立たずということですか!?」
天翔君が机にバーン!と手を叩きつけ叫んだ。
「いえ、そのようなことはございません。現状、私たちは皆様に勝てる実力がありますが、それも時間の問題かと」
「だったらなぜ!?」
否定するアルベルトさんに天翔君がさらに食い入るように叫ぶ。なんだか必死さがあった。
「あくまで今のままでは経験値が少なすぎるため、皆さんの成長が遅くなり始めているということです」
「そういえば私のレベルも最近打ち止め感があるね」
そうなのだ。最近Cランクの魔獣をソロで仕留められるようになったのだがその分レベルアップが前よりも遅くなっているのだ。
私のレベルは今29、最高の天翔君でも35であり、ここ最近は上がったという報告を聞いていない。
なのでアルベルトさんが言っていることはたしかなのだ。
「そうです。ですのでもう少し待ってから皆さんを連れて行こうと思っていたのですが・・・思っていたよりも皆さんの成長が早いため、計画を早めることにいたします」
・・・計画?なんだろ、それ?
「すなわちこの世界最高ランクの危険地域、ハルヴァナイ大森林へと赴きます!」
「「「「「ハルヴァナイ大森林?」」」」」
どこだろう?そこ?
「ハルヴァナイ大森林は最低でもランクC、最高になるとS−の化け物が現れることになります」
「「「「「Sランク!!!??」」」」」
どんな怪物ですか、それ!!?魔王並みじゃないの!!?
「ラヴァハートと呼ばれる特殊な龍です。その実力は一部の【王】や真龍すらにも及びます。つい最近暴れたようですね。ただ・・・会えば死ぬことは確実です」
「なんでですか?」
たしかにそんなのに勝てるはずもないけど・・・でも最悪逃げる事は出来るんじゃ?
「これはラヴァハートと人々が戦っているところを監視していたものの話なのですが・・・一切、逃げられないそうなんですよ」
「逃げられない?」
逃げればいいじゃん?・・・もしかして速すぎるとか?
「その者が偶然高能力の【鑑定】を持っており、使用したようなのですが・・・【闘争本能】というスキルによって近づいた者は強制的に戦闘させられるようになるのです」
「うわぁああ」
なにそれ、悪夢じゃないですか?勝てない相手に突っ込むって・・・。
ちなみにスキルの中でレベルが存在しないスキルは使っている頻度、つまりそのスキル自体の経験値によって高い性能へとなっていく。おそらくその人のスキルはなかなか使い込まれていたのだろう。
「しかも闇雲に殺して仕舞えば森の生態系も変わるのでどうもこうもできないんですよ」
うぼぉああああ
・・・絶対に近づかないようにしたいです。
「まあ、心の準備などもあるかと思われますので。・・・そうですね。一ヶ月後に出発いたしましょう」
ごくり、部屋全体に緊張の色が広がる。
それでもまだ、みんなの瞳にはギラリと光る強さがあった。
その森自体も本当の悪夢だとも知らずに。




