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異世界で無双してもコンプレックスは直らない件  作者: 製造物
三章、始めの街的なところ編
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62、からん、からーん

今日はいくつか投稿しまーす(予定)

 ギルドの中にコツコツと靴が床を叩く音が響く。


 その音につられるようにして、その人物の顔を人々は見た。


「あ!見ろよ!【剣姫】だぜ!!」

「あの主殺しの?」

「それどころかアルコール教の信者、半数を敵にとって全員返り討ちにしたとか・・・」

「まじかよ!!?」

「しかもその戦いのあとすぐにストレッド・キャッスルを完封しての勝利らしいぜ!」

「・・・どんだけ尾ひれがついたらそんなことになるんだよ!!?」

「いや、嘘だと思ってかかっていった奴らも全員デコピンでやったらしいぜ」

「そういえば昨日、ザルド達がまた吹き飛ばされたらしいぜ」

「もう、【剣姫】に吹き飛ばされる常習犯だよな、アイツら」


【剣姫】、ここら中ではもはや知らないものなどいない超上級冒険者。入ってたった数日でそこまで上り詰めたことやそのルックス、さらにはその人物が立てた数々の伝説に近い実話により注目されている。


 そんな彼は今、


「・・・キリア」

「なに?」

「ここ全域、吹き飛ばしたらダメか?」

「ダメに決まってるでしょ!!なにいってんのさ!!?」


 めちゃくちゃストレスがたまっていた。


「冗談に決まってんだろ。真に受けてんのか、キリア?」

「その冗談は言ったらいけない部類だと思う!!」

『そーなの?吹き飛ばしたらダメなの?』

「ダメです!!」


 キリアでストレス解消するぐらいには。そしてその度にキリアの胃はキリキリと音を立てる。


 そしてランはガッカリしていた。どうやらランさんは相当の戦闘狂のようだ。どうやって教育をすればこんなことになるのか・・・キリアは想像だけで胃が痛い。


 さらに言えば勇馬の隣を歩いていることで「なんであんな奴が【剣姫】の隣にぃー?」「ふざけやがって、多少顔がいいくらいで」「調子こいてやがるぜ」みたいな雰囲気が漂っているのでさらに胃に深刻なダメージが与えられる。


 ちなみに【剣姫】が男だという真実は広まっていない。というか【剣姫】=女神という説まで出ている。この説はある去勢お坊さんが広めたらしい。そのあと女神による天罰が起こりそうになったのはいうまでもない。


 そんな感じで勇馬とキリア、ランで盛り上がっていると奥から妙にサングラスと黒スーツが似合いそうな男、ムスクが現れた。


 説明が遅れたが今日、勇馬とキリアがここに来た理由はストレッド・キャッスルの換金が完了したためだ。


 あの戦いが終わり2日立っているのだが町の興奮は全くもって落ち着いておらず、むしろ高まる一方である。


 結果的にあの事件はビトールがザルドどもを意識外のレベルで【洗脳】し、キリアに金を出させようとしたそうだ。


 俺が呼ばれたのはあくまでそのついでであり、なんらかのことで使えるかと呼び寄せたようだ。結果的にそれが災いになったわけだ。・・・哀れな。


 それはともかくストレッド・キャッスルの値段はなんとぉー、


「金貨30枚かな?」

「・・・魔石無いのに?」


 ついでに言っておくがいつも通り魔石はバリバリといただきました。人目のないところでだけど。異常らしいしね、この行動。


 それに関わらず金貨30枚、クソ高いな。


「そりゃあ、この辺り最強の魔獣だったからね。魔石があれば金貨170はかたかったかな?」

「それは生憎無理だ。残念だがな」


 もう食べたしね。


「それは残念だ。・・・そういえばもうそろそろこの町から出て行くんだっけ?」

「ああ、ここじゃあ魔獣が弱すぎるからな」

「昔、ハルヴァナイ大森林で暮していたならそれほどの実力も仕方がないか。ところで次はどこを目指すつもりだい?」


 そういえばあのアホ賢者の森、あそこ外じゃあハルヴァナイ大森林って呼ばれてるみたいなんだよ。通りで周りの人間が弱く思えるはず。バケモンだらけの森と比較して悪かった、人類よ。


「そうだなー」


 言うのを忘れていたがここはワッドライト王国の辺境で、まだ国内である。北村のことを考えても王国内からは出た方がいい。


「山を横断してから帝国の方に向かうよ。しばらくはこの国からは出て行くつもりだ」

「・・・本当にふつうの冒険者じゃあ命がいくつあっても足りないようなルートだね。帝国も危ないときくが・・・君なら問題ないかな?」


俺が今回通る森はクスルフ山脈、ハルヴァナイ大森林よりもモンスターは弱いもののランクDからA−。それなりの高ランクの危険地帯である。


そして何より竜、龍種が多く生息しており、ドラゴンスレイヤーは必ず通らねばならない関門である。


 帝国は王国よりも差別が激しく、特に亜人やエルフに対しては特に厳しいようだ。


 そう考えると王国は差別ないし、平和だよなぁー。ナイス、イミス!


「ああ、あと最近君のルート上にエルフ達が発見されているみたいだよ。彼らと関わると帝国がちょっかいを出してくるから気をつけたほうがいいよ」

「了解だよ。説明多すぎ」

「ユーマ・・・多分それはムスクさんが心配するぐらい君が世間知らずだからだと思う」


 ・・・否定はできない。


「そういえばだが・・・これ、ギルドカードだ。上級冒険者として更新してあるから様々な特典があるよ。例えば国境線が楽に超えられるとかね」

「お、サンキュー。そういえばこんなのあったな」

「・・・忘れないでくれよ。これ相当大切なんだからね。・・・無くしちゃダメだよ」

「了解だ」


 なぜここまで詳しく言うかは以下略だよな。まあ、これで国境線は見せるだけで超えれるし、いいよな。


「それじゃあ、ユーマ君。またこの町に来ておくれよ」

「ああ、約束しとくよ。ムスクさん。お世話になったね。あと、シシラさんにもよろしく言っといてくれ」

「彼女は仕事で忙しいからね。すまないが言っておくよ」


 そうして俺は町の出口、門を目指す。


 途中、キリアが町行く人々に目配せをしていたような気がするが気のせいだと思う。


 ...........................................................................


「勇馬、ホント君との故郷の話できて嬉しかったよ!弁当作ったしガンバ!」

「おう、サンキューな。そっちも末長くな、お二人さん」

「「・・・」」


 リーラの弁当を受けとったところで俺は2人の仲の話に切り替える。2人はシーンとする。


 実はキリア、あんな大胆なことを言ったくせにまだ告白はしていないのだ。この意気地無しめが。


 俺がキリアにアイコンタクトを送る。キリアは緊張している様子だ。


 なんだか無言の時間が流れる。早くしろ!こっちも暇じゃねぇんだよ!!


 そして、ついにその時がやってきた。


「リーラ!」

「はっ、はい!!」


 お二人さん、肩の力をお抜きなさい。ガッチガチやんか。


 キリアが右側の膝を地面につけ、ポケットの中を探る。そして取り出されたのは、


「・・・結婚前提でお付き合いしてください」


 結婚指輪だった。


 色々早い気がしてならないが俺はその光景を傍観する。


 リーラは顔をどんどん赤くしていく。多少、俯き気味だ。


 そして、


「はい!お願いします」


 肯定の返事を返す。


 そして、キリアはホッとした様子で差し出された左手の薬指にそっと、通した。


「おめでと!皇子!」

「へ!?・・・ああ、そういえばビトールさんっていう人がそんなこと言ってたけど・・・ホントだったの!?」

「おう。コイツ、ワッドライト王国の皇子様」

「なんでバラすのさ!!?」

「いづれバレることじゃん」

「・・・嘘でしょおおおおおおおお!!!!」

「あ、狂った」

「・・・胃が痛い」

「お前ら最後ぐらい普通にしろよ」


 こうして、彼らのラブストーリーは始まったのか終わったのか・・・これからどうなんの、コイツら。


 俺は首をランといっしょに傾げた。

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