58、俺、青クセェー!!
勇馬とキリア、あと勇馬の肩にランがくっつきながら森を猛スピードで駆け上がっていた。その出鱈目な速さはあの兎を追いかけた時よりも断然速かった。
おそらくだがキリアは普通ならあの速さで限界だった筈だ。
その筈なのだが、未だ加速する勇馬にキリアはきちんと付いて来ている。
おそらくは怒りによるもので一時的にリミッターが外れたのだろう。勇馬はそう予想する。
『アイってなんなんだろうねー?シショー』
『愛・・・自身の存在意義を相互的に支え合うものだと考え・・・』
『そういうのは後でにしてくれお前ら。今ツッコめるほど暇じゃないから』
ボケ始めた自分の仲間たちに勇馬はちょっとした指摘をしてからまたスルーを始める。
と、そこで・・・
『止まれ!キリア!』
「!?」
突然の【念話】にキリアが息を飲み、硬直する。そういえば、俺が【念話】使えるって言ってなかったけ?
『いいか、よく聞け。今から俺たちは別行動を行う。それに伴い、俺は【念話】を使用し続けるから声を出すなよ』
『・・・これでいいのかい?了解だよ、ユーマ』
初めての【念話】にキリアは戸惑うものの、流石はRPGの世界の人間。適応が早い。
『俺はここら辺に集まってる奴らを俺だけに集中させる。だから、お前はランと一緒にリーラを救い出しにいけ!』
『ちょっと待って!そうなるとユーマが1人で負うリスクが高くなるし、ランを連れて行くっていうのも・・・』
『いいから行け!まずランは役に立つから!』
それに、と勇馬は続ける。
『助けたくないのか!?リーラを!』
『!!?』
勇馬の目は真っ直ぐキリアに向けられている。
その目がこう語っている。
『御託はいい。サッサと行け!!』
と。
『どっちも助けたい!なんて理想論は捨てろ!お前にとって大切なのはリーラの方だろうが!!』
キリアが歯をくいしばる。
分かっている。そっちに行く方が正しいのは。
それでも・・・
『それに、俺がやるのはあくまで引きつけるだけで終わったらサッサと逃げるよ。だからもう行け』
『・・・わかった。ありがとう』
嘘である。本当は納得などしていない。
相手には上級冒険者など何人いるか?
たとえユーマがバーバリアンをソロで倒せたとしてもおそらくはギリギリでのことだろう。それで逃げることなど無理である。
それでも、友がお膳立てしてくれた舞台。
失敗すれば1番、ユーマに申し訳ない。
だから、行く。自分の最愛を助けるために。
キリアはそこから駆け出した。
...........................................................................
たく、やっと行ったか。本当にあいつらぐらいなら問題ないってんのに。
・・・ていうかああいうセリフ口に出すのって本当に恥ずいな。木暮のアイアンハートが羨ましい。
それじゃまずはあいつがバレないように【魅了】でヘイト稼ぐか。
俺は茂みの中から姿をチンピラどもに見せると同時に弱めの【魅了】を行う。これでやつらは俺を無意識に注目することになる。
って?あれ?なんだか見覚えがあるのが何人かいるんだが・・・。
1人はお痛い【エターナル・リロード】さん、そしてその連れ。なんだか興奮気味で頭に血管浮き上がってますが・・・健康大丈夫?
さらにお坊さんとモヒカンも発見。ていうかモヒカンよ。なぜ髪に包帯を巻くんだ?それでくっつくの?
あ、お坊さんもちゃんと股間抑えてるよ。そういう時は焼きゴテで止血ちゃんとした方がいいよ。最初は痛いけどその方がまだマシ・・・らしい。うちの筋肉バカ曰くだが・・・。
あとはギルドに行く前にとっちめたアホとギルド行く途中にデコピンったアホども数人、さらにメモがギルドに置かれた瞬間に逃げた白いやつ。
・・・世の中は狭いとはよく言ったもんだなぁ。
「てめぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!!!ついにきやがったなぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
・・・お前、肺活量すごいですね。【エターナル・リロード】さん。・・・本名なんだっけ?
「やっと、テメェを潰して泣き喚かなくなるまでこき使ってやる!!覚悟しやがれ!!」
・・・お前、それ三流のセリフって理解せずに言ってんの?ある意味尊敬に値するんだが・・・。
「ですから、この者は性奴隷として売ると言っているでしょう。この大馬鹿者」
「なんだと!!この銭ガバがぁ!!」
「だったらぁー、もうぅー、先に仕留めたぁー、人がぁー、決定権をぉー、有するってぇー、ことでぇー、いいんじゃぁー、ないですかぁー?」
「「それだ!!」」
・・・言わせておけば、だな。
落ち着け俺。まだだ。相手はまだ攻めてきてないでしょ。ちゃんと相手に絶望させるように行動しろ!!
「てっことでぇー、覚悟してぇー、くださいねぇー」
「貴方は素直に抵抗せず前に出なさい。さすれば貴方の罪は軽くなるでしょう」
「そしたら、ぶち壊しコースで勘弁してやるよ!!!」
・・・もう、ダメだな。
俺は前に進み出た。
そして、同時にあるスキルを使用する。
瞬間、空間が軋むようなプレッシャーがチンピラどもに襲いかかった。
次回!戦闘開始!




