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異世界で無双してもコンプレックスは直らない件  作者: 製造物
三章、始めの街的なところ編
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54、アルコール教再び!!

 森林の中を白色の影が逃げかう。


 その兎は逃げることに特化した額に一角を持つ特殊個体、種族名をボイド・ホーン。ランク自体はEと低いものの捕獲の難易度は相当高い。


 そしてこの個体、ぴょん吉はさらに他のボイド・ホーンよりも逃げることにステを振りまくっていた。


 自身に追いつけるものなどいるはずがない。この自慢の脚に敵うものなどいようものか。


 そんな風にさっきまでは傲慢に思っていた。しかし・・・


「この兎、速いな。特殊個体か?」

「たぶんボイド・ホーンだけどそれにしては速いかな?」

「よし、後で賢者の書さまを見てみよう。載ってるかもだし・・・もしかして特殊個体だしいつもの兎料理よりも美味くなるかも(ジュルリ)」

「オッケー(ジュルリ)」


 自身が一生懸命逃げてるというのに片や楽そうに、もう片方も少しきつそうだが軽口交じりに、だがしかし舌舐めずりと唾を飲み込む音を立てながら距離を詰めてきていた。


 まさしく悪夢だ。自分のプライドはこんなにも軽く折れるものだったのか。


 兎は一歩、大人になった。慢心ダメ絶対、と。


 だが、もう大人の階段は登れそうにもないわけなのだが・・・。


 いや!諦めてなるものか!


 自分は帰ってぴょん子ちゃんに告白せねばならぬのだ!


 走れぴょん吉!諦めるなぁあああ!!


 エゲツないくらいに死亡フラグを立てるぴょん吉。


 しかし、神は彼を見捨てなかった。


 木の下になんと自分だけが通れそうな木の根っこによる穴が!


 コレはいける!


 ぴょん吉はその穴へ速度を全開にして入り込んだ!


「うわ!兎が穴に入ったぞ!」

「これじゃあ、逃げられちゃうね」


 背後から悔しそうな声がする。


 ふふふ、これで自分の勝利だ!


 またもや自覚ナッシングで死亡フラグを建設するぴょん吉君。


 今度はそれが災いしたのか・・・。


 いきなり自然の天井がなくなったのだ。


 ・・・え?


「まあ、引っこ抜けば良いだけの話なんだけどな」

「・・・それができるのは君みたいなステータスのおかしい人達だけだと思う」


 そう、彼が引っこ抜いたのだ。すごく丈夫そうな木を。手一本で。


 えー!!そりゃあナイワー!!


 これがぴょん吉君の最期の心情だった。


 ...........................................................................


「たく、やっと捕まえたー」


 勇馬はいい汗を掻きながら一息を入れた。


 まあ、勇馬は速く走れはしたのだが・・・気にしないでおこう。


「にしても、木を抜くって普通じゃできないんだけど・・・どれだけAPがあるのさ?」

「黙秘権を行使する」


 それを言ったら筋肉モンスターってバレるだろ。


「それにしてもお前もなかなかついてこれるようになったじゃん【聖人】取るまでもう少しか?」

「・・・それを言ったらユーマは【聖人】取れてるでしょ?君が取れてないなら僕は永遠に取れる気がしないんだけど」


 とってるよ?あくまで【魔人】だけど。


「あと、この兎はやっぱり超特殊個体だったみたいだ。名前がボイド・ホーン・ソニックになってるし」

「へー。・・・で味はどうって?」

「美味しいらしいぜ」

「「(ジュルリ)」」


 またもや勇馬とキリアは唾を飲み込んだ。リーラの兎料理が待ちどうしくて仕方がない!


「よしじゃあ、『ちょと待て、ちょと待て、あんたらー!!』・・・あ?」


 帰ろうぜと言おうとした瞬間に引き止められるという事件。勇馬は帰りたいのに止めてくる輩、・・・どうしてくれよう。


「あんただよなぁー、この前兄貴等をとっちめたっていうの?」


 兄貴等?門番A&Bのこと?


「わかるかー?こんな感じにモヒカンの人と、最近去勢された人等だよ」

「あー」

「待ってユーマ、去勢したの?ねぇ?答えて?」


 キリアが細かいところに敏感に反応した。股間を痛そうに抑えながら。・・・キリアそこは別にいいではないか。


「まあ、あの方々がお嬢ちゃんを『喰らえ!』グブフッ!!」


 勇馬、目の前の失礼極まりない方々に石を食らわせる(文字通り)。


 チンピラの歯のHPはもう0だ!彼は明日からスープやゼリー状の物しか食べられない身体になってしまったのだ!


「・・・ユーマ、去勢したって本当なの?」


 そしてキリアは未だその話を引きずっていた。勇馬はなにも気にせずに町へ向かった。

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