42、まるで悪女のような主人公(男)
『 歩こー歩こー、ボクラは元気ー。』
「・・・」
このなんだか懐かしいような、とある面で危険なような歌を歌うのはランであった。
勇馬はすごく突っ込みたかった。
「なんでお前が知ってんの!?」的な感じで。
ただ、なんだか突っ込んだら負けのような気がするので突っ込まない。突っ込むものか!
『マスター、目的地が見えましたよ』
手に持っていた賢者の書に新たな文字が浮かぶ。俺はそれに答える。
「ああ、そうだな」
俺は少しだけ嬉しかった。ついに人々との生活を送れるのだと。血の色生活を送らずに済むのだと。
着いたら久しぶりに普通の飯と布団と人を殴る感触を味わいたい。特に布団は大切。洞窟は床が硬かったからな。
・・・え?なんか変なのがあった?なんもないけど?
勇馬、そのままスルー。そして
「村が見えたぞ、ラン」
『わぁあい、楽しみだねシショー!』
「ああ、そうだな」
自身の愛弟子であるランに呼びかけた。すると子供らしい声が返ってくる。あまりにも可愛らしいので少しモフモフした。
その村まではあと10分もかからなそうだな。
そんなこと思いながら、俺は全速力で目的地まで走った。すなわちラストスパートだ。
......................................................................
・・・結果2分で着いた。
こんな無駄なところで成長が感じられる。
到着したその村は少し大きめの柵で囲まれているが、その柵自体は簡単に侵入出来そうな高さだ。
目測せいぜい4、5m辺りか?どちらにせよ低すぎる。ジャンプ軽く一発だ。
これ意味あります?もしかしたら空中に何か罠があるかも?
そういうわけで正当な方法で入ることにしよう。
門はどこかなぁ?早く普通のライフを~。
ぐーるぐる
柵に沿うようにして歩いていく。走んのはやめとく。
のんびりいきましょうや。
15分後、門が
「『あったぁあ!』」
俺たち2人の声が響く。
でも門番さんがおられるな。軽装だけど強いかなぁ?とりあえず後で賢者の書にあいつらのステータスおしえてもらお。
「そこのお前!」
ん?俺のことかな?
「俺ですか?」
「?ああ、そうだ。ここでは見ない顔だな。何者だ?」
・・・ヤベェ。
その辺りの設定考えてなかった。どうすればいいですか、賢者の書!
バッ!と賢者の書を開ける。
すると、
『【魅了】すればなんの問題もございません』
とのこと。
なんで?
あれって襲いかかってくるだけじゃん。まさか人目のないところまで連れて行って気絶させろと?
『暴力的な発想ですね』
家の奴らよりかはマシだと思う。
『その【魅了】はあくまですごく強い威力で発動した時のみです。普通なら相手に言うことを聞かせるレベルです』
え?そなの?
まじかよ、今まで使っておけばよかったよ。残念。
『えげつない発想ですね』
・・・ほっとけ。
それじゃとりあえずやってくる門番たちに【魅了】(弱)を使いますか。
結果成功だがなんだか男としての尊厳が低くなったように思えた。
だって、門を開けさせた後に「食事行かない?」とか「きれいだね」などと野郎どもに言われるんだぞ!
・・・正直、鳥肌たつんだが。
『まあ、結果オーライというやつです』
・・・お前後で覚えとけよ。
俺は密かに一冊の本を恨んだ。




