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A1、勇気を出して

 勇馬くんが居なくなってからもう少しで2ヶ月に達しようとしていた。


 私や連ちゃん、園田君は最初の一週間こそ部屋にこもってたけど今では普通に前と同じ活動を行なっていた。


 私は戦闘の訓練を、


 連ちゃんは劇場の俳優としての活動を、


 園田君は会計の仕事を再開していた。


 それでも私たちの顔から陰は抜けてはいない。むしろ日が増す度に濃くなっていく一方だった。


 もうすぐ訓練の質も更に高くなるだろう。集中をしなければ、集中を・・・


「アゲハ様!!」


 その時、私に叱咤の言葉が向けられた。その声で目の前の光景が鮮明に私の頭の中に映った。


 ランクDの化け物、ゴーレムが私を殴りにかかっていた。慌てて私はその攻撃を回避する。


「“精霊爆破(スピリッツ・バーン)”!!」


 そして精霊を経由した神法でゴーレムの目の前に爆発を生み出した。その爆風によってゴーレムが砂へと還る。


 一応無傷で倒せたのだが・・・


「アゲハ様、油断は禁物です!油断をしてしまえば本来勝てるような相手ですら勝てません!」

「ごめんなさい、アルベルトさん」


 こんな風にアルベルトさんに怒られてしまった。アルベルトさんは剣技だけでなく神法も使えるので、たまに戦闘方法を教えてもらっているのだ。


「・・・アゲハ様、」


 アルベルトさんはいきなり神妙な顔となり、私に言葉を吐いた。


「今、アゲハ様はとても迷っているように見えます」

「・・・」


 事実だ。でもどうしようもない。勇馬君は信じたくはないが死んでしまったのだ。


「信じてみてはどうでしょう?」

「・・・へ?」


 どういうこと?信じる?


「私は昔、魔獣達の死ぬ光景を見て、その罪悪感から死ぬほど苦しみました」


 私たちはどちらかというとまだ現実感がないこの世界ではそこまで考えていない。どちらかといえば『守らないと』とかいう正義感の方が勝つかなぁって感じ。


「その時に私自身の護りたいものは人々であると思いました。今でも罪悪感こそあれど躊躇いの感情は持っておりません」


 「薄情なことですがね」と自嘲気味に笑うアルベルトさんを見て、この人は本当に強いのだと感じた。


 それに対して私は・・・


「私は人々のことを信じ、それを護るため今ここにいます。アゲハ様の信じたいものとはなんですか?」


 私の信じたいもの・・・私の・・・。


「ここでお邪魔虫は失礼いたします。あとはそこに隠れているお2人を交えてお話しください」


 アルベルトさんが林の方をチラリと見やるとそこには苦笑しながら現れた蓮ちゃんと園田君がいた。


 「それでは」という音がした。3人もいながらこの場はしばらくの間、静寂が訪れていた。


 やがて、


「俺は今でもあいつは生きてるって信じてるぜ」


 と園田君が口を開いた。


「あいつはいつも人騒がせで自分から貧乏くじを引きに行くようなやつだ。だけど、」


 一瞬の間、園田君は唇を閉じた。でもその後すぐに次の言葉をこの場に響かせた。


「だけど、あいつはどんな時でも生きて帰ってくる。ギリギリのラインまで行っちまうがそれだけだ。ずる賢いし、どうせ平気な顔で「よう、久しぶり」とか言ってくんだよ。心配するだけ損なヤローだぜ、本当に」


 ケッと言わんばかりに口を窄める園田君。だけどその目には確かな確信があった。


「そうですね。北村君こそああ言ってましたが、彼の目が節穴だっただけでしょう。帰ってくる頃にはきっとその襲ってきた魔獣とやらを従えてるんじゃないですか?」


 アゲハちゃんはどうです?みたいな目でこちらを見てくる連ちゃん。


 ・・・私は・・・。


「私は信じたい!勇馬君がいつか帰ってくることを。信じるから、勇馬君が帰ってこれるように、いつか「お帰り」っていうために、頑張って、勇馬君を驚かせるぐらい強くなって、出迎えてやる!」


 アゲハは決心した。自身の信じる道を進むことを。


 いつか、1人の少年とこの3人の再会を待ち望んだ、その道を。


 アゲハは今日も進む。

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