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35、イソギンチャクですがなにか?

 俺が最後の試練としてたどり着いた所はただただ白い空間だった。もう白以外に何もなく、逆に気持ち悪いくらいだ。


 俺はその白い空間をまっすぐ進んでいく。その間、不気味なくらいに静かだった。恐らくこういうのが嵐の前の静けさと言うのだろう。


 やがてその空間のど真ん中へとたどり着いた。


 するとはたまた真っ白な神法式がその場に展開される。


 ズガァン!ズガァン!ズガァン!


 俺と相対する形で本当に純白としか表せないような光沢を見せるイソギンチャクのような魔獣が地面を砕き、破片を撒き散らしながら現れた。


『やあ、勇馬君って言うんだよね?これでやっと最後の試練だ。気分はどうだい?』


 このタイミングで聞くか?性悪賢者様。


 ていうか、いつの間にお前は俺の個人情報を盗んでんだよ?


『・・・どうやら不機嫌のようだ。さて、分かっているとは思うけど、そいつはボクの迷宮の中で最強クラスの化け物だ。ランクは大体B+くらいだよ。せいぜい足掻いてくれよ』


 プツンッと脳内で音がした。


 B+か、・・・ランク上がりすぎじゃね?


 正直、本当に目の前のコイツがそのランクなら勝てる気がしない。それどころか相手になる気もしない。


 それほどの敵が目の前にいるわけだ。


 それでも勝たなければならない。だから・・・そこを退け!


 俺は一気にスキルを発動していく。【剣術】【闘術】【気配遮断】【気配感知】【威圧】【堅固】【天眼】【鱗装】etc.


 そして本能が叫んだかのように俺は踵に力を入れ、一気に加速する。


 だが、イソギンチャクももちろん動かないサンドバッグではない。だが正直、予想外ことだった。


 地面から轟音を立てていきなり現れる白い壁、いや触手だ。触手が俺の進路を遮った。視界が白く染まる。


 俺は視界を開けるため剣で触手を横薙ぎにする。しかし、相手はB+、おめおめとやられる相手ではない。


 剣が少し触手に食い込むと中から白濁液が破裂したような勢いで俺に襲いかかった。


 危険を察知し、俺は慌てて避けた。しかし、俺が来ていた軽装の鎧の一部が風化した。


 なんだこれ!?と思うものの正体がわからない。俺はあえなく撤退する。


 しかし、いつのまにか床、壁、さらには天井をつき破り、その姿を見せる白い触手が俺を取り囲んでいた。


 そしてそれら全ての触手の先が俺に向けられていた。それは確実に数多の銃口を自身に向けられるよりもまずい、と瞬時に感じた。


 なんとか俺はそこから逃れようと策を考える。しかし、完全な手詰まり状態だった。


 そして嫌な予想が当たったようであった。


 触手の先から白い光沢のある液が噴射された。しかも十数はあるほどの触手の先から。


 それらが一斉に俺の肌を、装備を、髪を、筋肉を、焼き尽くした。


 炎とはまた違う熱さに俺は歯をくいしばる。


 なんとか意識を保つものの周りは未だ囲まれたまま。勝つことなどできはしないだろう。


 勇馬はその光景に絶望感を抱いた。劣等感を抱いた。敗北感を、抱いた。


 その時ふと親友たちを思い出した。自身の核である彼らを、彼女らを思い出した。


 それだけだ。


 だがその光景が、情景が、


 「諦めろ」そう語ってくる身体に叱咤を打つ。


 「無意味だ」嫌に冷静な脳を熱くさせる。


 「絶望」、そんな言葉を信念の炎の中へとぶち込んだ。


「ガァアアアアアアアアアアアッ!!!!」


 まるで獣の如く叫びながら立つ。


 諦める前に考えろ。自身の全ての細胞に命令する。


 肌はもうただれている。


 目は片方は見えない。


 聴覚、嗅覚などもはや無いに等しい。


 それでも目の前の存在に勝たなければならない。


 周りを見てみるとどうやら【思考加速】と【天眼】によって触手らの第2射が放たれるおり途中のようだった。


 周りが再び白に染まる。


 その白は次の瞬間には青く侵食された。


 【雷攻撃】だ。Lv.8へと至ったその力はただの水のように白濁液を一瞬で蒸発させた。その分、自身の腕も焼け落ちたが・・・。


 どうやらこの白濁液の弱点は熱のようだ。それが判れば楽だ。


 俺は雷閃を剣へと集中させる。雷撃がまるで獣のように鳴く。


 そして、今白濁液を吐き出そうとする触手達を回転斬りで焼き焦がしていく。


 白濁液も触手も炭化していった。


 炭の黒色が辺りに舞う。それと同時に身体に疲労感が現れる。最大威力の【雷攻撃】によるものだ。


 触手達は未だなお壁から生えている。それどころか俺が焦がしたはずの触手からも新しい触手が生えていた。


 もう、俺に余力はない。それでも俺は死ぬことは許されない。あいつらに出逢うまでは。


 俺は魔石をアイテムボックスから取り出し、乱暴に食らう。身体の傷こそなくならないものの身体中から活力が湧いた。


 息をもう一度大きく吐き出す。雷撃がパリパリと音を鳴らす。


 戦ってやる。何度でもいいから。


 もう諦めはしないと決意をし、どこかしら欠けている満身創痍の身体で勇馬は進み出た。


『はいはーい、第3の試練、しゅうりょーう』


 すると、藪から棒に聞こえた声が消したかのように目の前の白いモンスターの姿が消えた。


「・・・は?」


 あまりに突然の現象に俺は呆気に取られた。


 ・・・まさかこの試練って時間制限つき?


『んなわけないじゃーん、この試練が終了したのはあくまで君が“課題”をクリアしたからだよ』

「でも倒せてねーじゃ、ねーか!!?」


 酷くやる気だったのにまさかの横槍に少し憤慨している勇馬だが


『ところでボク、いつ「この試練は敵を倒せばクリアでーす」って言ったけ?』


 ・・・あ


 そういえばそんな言葉は言われていない。つまり・・・


「自分の勝手な想像ってことかよぉおおお!!!?」

『ピンポンピンポン大正解!』


 こいつ・・・生身であってたら殴りたかった。


 こうして微妙な感情を残しながら俺の試練は終了した。

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