32、環境という敵
海蛇がうねりながらその口に淡い光を収束させる。
直感でまずい、と感じた俺は咄嗟にその場から離れる。が、その口から渦巻いた海流が岸を削り取っていく。
相手がとっている戦法は恐らく、こちらを水の中に引き込むことをメインとしている。
正直、水中戦では勝機はだいぶ薄い。まだ俺は【立体機動】によってマシではあるが、それでも勝つことはできないだろう。
だから俺は剣を引き抜き、そのまま振り抜く。海蛇に向かって。
その瞬間、海蛇は身体を急に逸らした。だがその右脇腹(?)から鮮血が噴き出した。
これが俺が最終Lv.まで成し遂げた【剣術】の力だ。ようは斬撃波を飛ばせるのだ。
だが、うねる奴の身体はそう簡単には両断させてくれそうにない。しかも危険を察知する能力にも長けている。
【雷攻撃】をしてもいいのだが・・・正直それをする前に水の中に引き込まれる可能性の方が高い。
引き込まれて仕舞えば【雷攻撃】は自身にすら牙を向ける。俺は耐性は持ってはいるが無効にはできない。
よって、俺は手詰まりといったところだ。【雷攻撃】を飛ばせたら楽なのだが・・・。
もしくは雷神法を持っていれば自分を巻き込むことはないのだが・・・。
そんな時海蛇がまたその口を上に向ける。だが、さっきとは全く違う。
その口から溢れる光は俺の周りを包み込んだ。
何かが来る。そう予想したがどのように躱せばいいものかわかるはずもなく・・・。
周りにいきなり水爆が大量発生する。
それらは容赦なく俺に襲いかかり、あっという間に俺を湖の真上まで運び込んだ。
そして海蛇は口にまた淡い光が発生させる。今度は最初と同じような眩しい光を。
あの渦潮に飲まれればまず命はないだろう。それほどの威力をあれは持っている。
周りに足場にできるものを探し出すがなかった。
またアイテムボックスから足場にできるものを引き出す時間もない。
だから一か八かの勝負をする必要がある。
俺は剣を海蛇へと向ける。
海蛇は淡い光を全てを飲み込む渦潮へと変貌させる。
そしてそのまま俺に向けて発射させる。
俺はその青い脅威に剣を突き出す。雷撃を纏いながら。
剣の先に収束された雷閃は渦巻く海を蒸発させ、削り取っていく。
その雷撃は海蛇の元へと進撃を行いながら。
だがここで予想外のことが起きる。
避けられたのではない。
受け止められたのだ。
俺の必殺だった雷撃を。
「!?」
渦潮は蒸発させた。だが、このままでは湖へと一直線。水中へと入って仕舞えば俺は負ける。
海蛇はその瞬間を待つように俺を見つめている。
どうする。
考えろ。
今この瞬間を生きる方法を。
えーっと、こんな時に役立つスキルはーー!!!
・・・あっ!あったな、そういえば。
【立体機動】、これは空気よりも抵抗があるものならば足場へとできるスキル。
これを俺は水中で使う方法しか考えていなかった。
だがこれで水面を足場とすればどうなるかは考えていなかった。
勇馬は水中へとボチャン仕掛けたところで水面へと足を伸ばす。
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パシャンッ!
海蛇にはその音と巨大な水柱が出来上がったようにしか見えなかった。
よってそこにブレスを叩き込もうとした。
口内に淡い光を収束させる。先程こそ予想外の方法でカウンターを決められたがあんなものでは自分は倒せないし、今ならば倒せる。
そんな確信を持っていた。
しかしその瞬間、身体に異変が起きる。
強力な衝撃がその身体に襲いかかった!
その衝撃によって海竜は陸地へと吹き飛ばされた。
何が起こった!?
海竜は戦慄していた。
水中は自身のテリトリーであり、そこに敵を誘い込めば自身の勝利は確定する。
だというのに相手を自身のテリトリーに連れてきた瞬間に相手のテリトリーへと連れてこられた。
その海竜の中を怒りが渦巻く。身に任せて暴れ回ろうとした。
だが、
カツン、カツン
靴と陸地が奏でる音が響く。
来る
奴が来る
自身に災厄を与えるものが来る
それだけで水竜は正気へと戻らされた。むしろ海竜の心中を恐怖が満たした。
「油断したのか?自分の領地に連れてきたら勝ちだと思ったのか?」
凛とした清音が響いた。
その声に竜である自分ですらも一瞬心を奪われたが、そのあとかの人間が持つ剣に恐怖する。
チャキリ
剣が高く高く、まさしくギロチンのごとく上昇する。
このまま惨めにやられてたまるかと水竜はなけなしの力で目の前の人間を力の限り噛み砕こうと目の前の人間へと突撃する。
だが、次の瞬間黒の一閃が海竜の意志を切り落とした。
『第1の試練、クリア~!!』
そんな声が最後に聞こえたような気もした。




