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4、この世界の状況●

「まず一国の王として、そして貴様らをこの世界に召喚した代表としてわびようと思う。すまなかった」


 頭を正しく深々と下げる王様。デブなので脂肪が邪魔をするがこの際気にするまい。


 そんなことより俺はこの肥えたおっさんのセリフに少し驚いていた。


 てっきり、姉からの情報(変に偏った)と奴の口調から考えて他人を見下す人間である、と推測を働かせていたからだ。また瞳を覗き込んでもそこに嘘は入っておらず、欲こそはあれど純粋であると考えられる。


 ともかくこの王からいくつか情報を引き出そう、そう考えた瞬間、


「いえ! そんなことよりもこの世界を救いましょう!」


 そんな早とちりもいいところの発言を行ったのはクラスメイトの1人である、天翔 総司(てんしょう そうじ)だ。


 確かに明らかファンタジーの世界ではあるが・・・それでもその発言は無知がひしひしと伝わってくる。持ち前の正義感を活かすのはいいが周りのことも考えろ。そう思った瞬間だった。


 流石の速攻返答に戸惑ったのか王はボーゼンと総司を見つめた。『えっ? コイツ何言ってんの?』、そんな声が聞こえてこなくもない。


 しかしそれだけで終わらないのが俺のクラスメイトだまである。


「よっしゃー! 異世界冒険譚だぜ! 帰ったらママに自慢してやる!」

「学校に行かなくてもいいとか・・・マジ天国かよ」

「ラノベみたくハーレム作れるかな・・・俺!」


 もはやクラスメイト達は王の発言に一切の興味を抱いていないのか黒沼のようなドロドロとした願望を口ずさんでいく。それらは正しく呪文のようであり、とりあえず俺は目と耳を全力で背けた。


 そして俺はほぼ二人きり同然の状態で王と見合っていた。


「・・・なんか、俺の連れどもが、すまない、な」

「うむ、・・・別に、良いのじゃが・・・な」


 え? 他の人たちは? クラスメイトは部屋の隅っこでドス黒くなってるし、騎士達はそれを止めてるから、ね。


 まあ、そんなわけで俺は交渉相手と二人きりになれている。これは非常に有難い状況だ。下手にクラスメイトがいるよりはいいし、あちらにも王を助ける人物がいない。故に情報の獲得には最もといってもいいほどやりやすい場面である。


「まあ、俺もあいつらとはある程度同様だ。だが、まだ俺たちには情報がなさすぎる。その状態で信じろ、だなんて言われても無理だ。と、いうわけであんたらに対していくつか質問させて貰ってもいいか?」

「ふむ、良いだろう」


 よし、ありがたい。


 ではまず一つ目だ。


「まずはこの世界について軽く教えて欲しいかな? 一応聞いておくが・・・ここは地球ではないんだな?」


 これは必ず必要な情報だ。世界が分からなければ何もわからない。あと地球のは本当についでである。できれば地球と言って欲しいのだが・・・。


「チキュー? ・・・ふむ、ワシはそんな場など知らぬ。まあ、確かにまだ教えておらんな。よし、それでは説明してやろうではないか!」


 そこからおっさんの説明が始まった。

 情報は基本的に王国の私情が多く入っていたが、それでも大体のことは理解できた。


 まず、ここが本当に異世界だと理解できた。


 ここはヨウムと呼ばれる世界で、この王国は『龍王国カルデア』というらしい。


 そしてこの世界には人間以外にも高い知性を持つ生物がいることも分かった。例えば、魔人やら聖人やらエルフやら天使やら悪魔やら巨人やら小人やらextra。


 ただし多少、概念が違うようだ。例えば天使は翼が生えていないようだし、悪魔もばいき○まんみたいな格好ではないようだ。そのあたりは必要に応じてまた説明していきたいと考えている。


 そして、この世界の生き物は基本的に“聖”と“魔”で区別されている。


 これは予想通り『聖』が人間側、『魔』が魔王側だった。例えば魔獣のような凶悪な動物もいれば聖獣と呼ばれる正義のヒーローてきなものまでいる。


 ただし、人間は『聖』でも『魔』でもあるらしくどちらに転ぶかは本人の資質によるらしい。人間があくまで『聖』の生物とされているのはあくまでも信仰的な問題らしい。


 そして、その『魔』の動物、すなわち【魔獣】が最近相当繁殖しているようだ。


 その魔獣の繁殖には【魔王】が関係しているらしく、魔王の勢力が大きくなったためだそうだ。


 そして俺たちは最近弱ってしまった強者の代わりに人間側の兵力として呼ばれたようだ。


 あと、神法などという魔法もどきもこの世界にはあるようで先ほどの“空壁”もそれなのだとか。


 あとはしつこく俺に対して「協力してくれ」と頼み込んでくるのでとてもうざ垂らしかったが、最低限の情報は聞き出せた。


 それにしても本気でそろそろうるさいのでその辺りの交渉を行っていきたいと思う。


 愉快は鋭く目尻を釣り上げ、王様を睨みつけた。


「でも、それじゃあ俺たちにメリットがない。そもそも俺たちはその魔王を倒せても、元の世界には戻れるのか?」

「・・・残念ながら、それはできないのじゃ」


 ほう、あっさり認めたか。てっきり、その辺りをはぐらかしてくると思ってたんだがな。やはり誠実なのか、それとも単に間抜けなのか・・・まあ、どちらにせよ困ることはないな。


「しかし、もし魔王を倒せたなら、できるだけ帰還できるように努力しようと思っておる。・・・それでどうじゃ?」

「恩着せがましく言ってくるようだが、それはお前たちの当然の義務だ。なんの関係もない場所で俺たちは【魔王】とやらと戦わなきゃいけないんだろう? それじゃあ、釣り合っていない。だから俺たちはあんたらに最低限の条件を求める」


 さあ、どう出るかな。

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