26、狼さんは逃がさない
ていうか、狼よ。お前らチガの実の匂い無理じゃなかったけ?なのに何堂々と行進されていらっしゃるんですか?
そこら中にはチガの実の生える樹が群集となって生えている。あくまでチガの実バリアーは最終障壁なのだ。
なのに堂々ときていらっしゃる。
とりあえず、洞窟から出る。そうじゃないとまず勝てないし逃げられない。
だってあいつら速いし雷纏うんよ。そんなん真正面から受けて平気でいられる自信がない。だから狭い洞窟では逃げ切れないのであいつらが攻めて来る前に逃げる。
洞窟から逃げ始めたところで狼どもも気がついたようで俺のことを追いかけて来た。
・・・て、あれ?あいつら前よりも遅くない?舐めてんの?
そんなんだったら逃げられるよ。
さらにスピードを速める。
んんん?あいつら遅くね?これだったら逃げられ・・・ミスった。
何がミスったかって?目の前の光景を見れば一目瞭然だ。
目の前は恐ろしいくらいに下へ直行コースの滝になっていた。つまり誘い込まれたのだ。
狼、そういえば物語とかでも狡猾な性格を、持ってたな。
後ろを振り向けば合計10匹の狼に取り囲まれていた。
俺を倒す準備は万端のようで。
俺はアイテムボックスから剣を取り出す。もう逃げられない。俗に言う“背水の陣”という奴だ。
狼全員が身体から黄色い火花を散らしている。
俺は構える。地球の頃の剣技を利用した構えで。
雷に一発当たってもアウトか・・・ハードなことで。
狼たちの足元に力が入った。それと同時に俺も飛ぶ。
・・・後ろに。
狼どもが『えっ?そっち?』みたいな顔をする。つうか、十字傷の狼、お前その顔が1番似合ってるような気がするよ。
というか別に気が狂ったわけではない。
【視覚拡張】でギリギリ見つけたのだ。滝に呑み込まれないで済む足場を。
そこへ着地した。最近着地することが多いような気がする。
そして上を見てみるとそこにはぶつかるものが居なくなった所為で滝へと呑まれていった狼たちがいた。
とはいえ全ての狼が呑まれたわけではない。4、5、・・・6匹がどうやら呑まれていったようだ。つまり残り4匹の相手をしなければならない・・・。
正直、勝てる気はしない。
だが俺が目指していること、アゲハたちと並べる強さを持つには、コイツらに勝つぐらいのことはしなければならない。
見ると狼たちがこちらの足元に降りて来ていた。その中には武士風漂う狼もいた。
範囲は大体50㎡くらいの足場。有利とも言えないが不利でもない。
改めて俺は剣を構えた。
4匹の狼はさっきよりも警戒しているのがすごく分かった。さっきあんなことしたしね。
1匹が俺目掛けて突進してくる。剣で脳天を突こうとするが、その前に多方面からの電撃を纏った攻撃が殺到する。
また別の狼を迎撃しようとすると別の狼牙が襲いかかってくる。
ここは離脱しかない。電撃と電撃の間を潜り抜けなんとかその場から逃げる。
・・・正直に言って相性が悪い。なんと言っても相手は攻撃中のみとはいえ電気を纏って攻撃してくるわけだ。そうなると鉄で出来ているこの剣を通して俺を攻撃出来るわけだ。
攻撃手段でありながら防御も兼ねる。まさにこれこそが“攻撃は最大の防御”というのだろう。
実に厄介だ。倒す、と決心したはいいが倒す手段がこれではない。
ただ避けることしか出来ない。あの時と同じ、違うのは今度は助けが来ないという点だろう。
もうあのような惨めな思いはしたくない。もう傍観するだけの自分は嫌だ。
必死に倒すための手段を探し出すために勇馬は【並列思考】を使いながらスキルを確認した。すると、
#黒輝 勇馬__くろき ゆうま__# #♀__以下略__# Lv.10
【種族】
上級世界人
【ステータス】
HP 1874/1990
SP 1670/2100
MP 0/0
AP 2690
GP 1230
MGP 62
FP 2450
【称号】
中級剣士、中級闘士、軍師、料理人、美女、被封印者、上級世界人、仕事人、逃走者、愛植家
【スキル】
剣術Lv.7、闘術Lv.7、見切り、AP上昇、SP上昇、FP上昇、視覚拡張、運気上昇、念話、万能味覚、魅了、封印Lv.3、成長倍加、アイテムボックス×180、並列思考、高速思考、逃げ足、瞬脚、雷攻撃Lv.1、雷耐性Lv.1
・・・あれ?ステータス伸びてない?というか初見のスキルもあるんだが・・・。
とりあえず【瞬脚】を試してみる。
スキルの使い方はいつも通りだろうか?頭の中でスキルの名前を叫ぶ。
【瞬脚】!
狼たちの包囲網の中、勇馬はスキルを答える。
瞬間景色が入れ替わった。1匹の狼の背後へと移動したのだ。
狼たちも俺の動きを認知出来ていないようだ。スパークすら体から発していない。
(隙だらけだ!)
1匹の狼を両断する。
前以上に簡単に刃が通っていた。これもおそらく、というか絶対ステータス上昇のおかげだろう。
それと同時に疲労感がどっと襲いかかってくる。もう【瞬脚】は使えなさそうだ。
残り3体の狼、1匹ぐらいになれば逃げられると思う。
だが、相手ももちろん俺を警戒してきている。なんといっても俺はすでに7匹もの狼を葬っているのだから。
狼たちが発していた雷光がさらに眩く輝く。恐らく奴らのフルパワーだろう。3匹までに追い込まれたからこそ使う奥の手に思えた。
・・・これに当たらずに包囲網を突破して狼に剣を突っ込めと?
・・・無理です。死ねと?
そう考えているうちに狼たちが同時に3方向から俺目掛けて突進してくる。
生命の危機を覚えた。いや、もう詰んだといった方がいいだろう。
だがそれでも俺は出来るだけ電撃が薄いところへ突っ込んでいく。
最後の悪あがきというものだろう。
だが・・・それが活路を切り開いた。
身体が少し痺れた。それで終わり。
・・・え?弱くね?
横をただ今通っている狼を切った。スパークに囲まれる狼をやはり少し痺れるだけで他には特に問題も無く分断できた。
・・・弱ぇ。
もう1匹、俺の背後から襲いかかって来ていた狼を下から剣を振り上げぶった斬る。やはり麻痺は少しだけして回復した。
武士風の狼がすごく困惑したような目でこちらを見てくる。・・・俺こそ困惑しているんだが。
とりあえず決着はつけねば。次の瞬間狼が姿を消した。
「!?」
【視覚拡張】を全力で使用!だが見つからない。どこに行った!?
『グルルルウウ』
唸り声が上から聞こえた。そこには武士風の狼が佇んでいた。まるで『今回は逃げさせてもらう!あばよ、とっつぁあん!』というが如く去って行った。
勝ったんだよな?勝ったことでいいんだよな。
とはいえ雷の正体は子供騙しのビリビリだった訳なのだが・・・。
まあ、それでも勝ったんだ!
俺の心の中は歓喜に満ちた。
さてと、それでは殺した狼は全部頂くとしますか。
俺は狼に目を向けジュルリと音を鳴らした。




