25、平和だからこそ日常はできる●
ついに総合PV100000突破ですぜ!
ちょくちょくサボりますががんばります。
俺が、俺たちが異世界に来てから一年が経っていた。
思えば早かったようでその実、長く感じた。
やはりこの世界に来てからというものの、濃密だったと言わざるを得ないと思う。
転生してすぐさま蹴り倒し、王様と仲良くなって、そのあとすかさず気絶。起き上がってからというもののブラックで心身ともにきつい労働と訓練の毎日。個性のすごいクラスメイトたちの手綱を引き、王の無能な政治を口出し、アルベルトさんの素晴らしく酷い指導を受け、友人を取り巻く羽虫どもを遠ざけ、王都でもろくに休めないし、ファンクラブとかできてるし…極め付けに腕と脚片方ずつ削られるし……しかもその後も自分からすると言ったとはいえ前と同等以上の仕事が出たし…利き手消えたのに…ファンクラブとか謎の商品などで心労半端じゃないのに………
…あれ? 異世界初日1日目以外ほぼ全部苦悩ばかりだ? 夢と希望のキャッチフレーズで有名の異世界なのに。
これを高校二年という子供にやらせる異世界間違ってない?
なんだか頰に温かいものが伝ったが…これは仕方がないと思うんだ。うん。…うん。
「勇馬くん? なんでそんな涙流してるの? やっぱり傷が痛むの?」
「あ、いや。特には痛まん。…随分遠いところまで来たなぁと思っただけだ」
「?」
車椅子を押すアゲハは不思議そうに首を傾げた。
片足で移動すら困難になった今、アゲハや園田、蓮や他のモブ騎士たちに車椅子を引いてもらっている。自身で操作しようにも片腕しかないから操作しづらいからね。
「だけれど王様もイキだよねー」
「ああいうのは能天気って言うんだ。だがまぁ、確かに…」
と言って目の前に広がる光景を二人ともぼんやりと眺める。
「まさか俺たちが来て一周年のパーティーをするっていうのは…果たして馬鹿なのかそれともイキなのか」
そこはあまりにも広い空間。大理石で建てられた舞踏館は二階建てながらも隅々まで整理されている。天井ではシャンデリアが吊られている。もちろん神具である。
ステージでは一級の音楽家らしき人々が歌声、音色を奏でていく。ちなみにここでもマイクなどのような神具が扱われている。もはやなんでもあり感が否めない。
これはアルベルトさんから聞いた話なのだが、このような神具は基本的に『ペルズ・オルガダ』という人物が作り上げたそうな。…転生者だったりせんだろうな?
異世界組や王族は勿論、騎士や従者、更には一般市民まで織り混ざって賑わえるほどの。流石に王都の国民全員とは言えないが老若男女種族貧富関係なく酒を飲み、肉を齧り、舞い踊る。
もちろん食べ物も大量に並んでいるのだが…その人数となるとどんどん減っていく。…別にウチのクラスメイトどもが大量に食い占めているなどということは…ないぞ(?)
「…で、俺帰っていい?」
「何で!!? 勇馬くん、ここはみんなと楽しもうよ!」
「…先週から昨日まで徹夜で今日こそ、と意気込み寝ようとした瞬間にお前に連行されていた俺の気持ちがわからんか?」
「…ワカリマセン」
と、本当に俺は疲れている。のに賑わいの中に入るとかどんなプレイだよ?
俺一人でも頑張って帰って寝よう。と俺は頑張って車椅子を操作する。なかなかできないけども。
しかし時すでに遅し。
『あ!! ユーマ・クロキだ!!』
『モノホン!!?』
『握手してください!』
「い、いや俺今から『サイン下さい!』お、おい!? 話を…『ついでに虐めぬいてください!』『お姉様! ネバー! ですわ!』…女じゃねe『来たぞ! ユーマさんの決め言葉だ!』『ああ、男の娘とか…神だろ』『ブヒーブヒー!』…(顔面青し)
俺はあっという間に人の大鯨波に飲まれ、車椅子からも突き飛ばされ、完全に包囲される。逃げる間ももはや無し。
今日こそゆっくり寝る、という俺の夢は叶わなそうだ。
そうやって軽めに絶望かつ、ある程度接待していると…
「ユーマ!! 飲んどるかのー!!?」
ととある駄王の呑気で馬鹿らしい声が聞こえた。
第一、俺は未成年です。飲めるわけが無いでしょうが。
人垣がザッと割れて俺から人々が離れて行く。未熟とはいえ流石に王様。その程度の権威はあるようです。
そんでもってイミスは車椅子の持ち手を乱暴に掴む。
脚を踏みしめ、力強く蹴る。
「ユーマ!! ゆっっくぞーー!!!」
「まっ、待ちやがれ!! イミスぅうううううう!!!!」
叫び虚しく、超加速! 超爆走! 太ってるとは思えないほどに。
聖王たるアルベルトさんと同様のレベルの速さ! てめぇ、一体何もんだぁああああ!!!!??
『行っちまったなぁ』『ユーマさんってやっぱり王様と仲がいいんだな』『流石は英雄だな』『流石は狼殺しの英雄だな』『…ウルフ・スレイヤー』『あっ! それいいな!!』
人々が勇馬の話で賑わって行く。もっとも話の肴である本人は連れ去られたのだが…。
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俺とイミスは今、王城の庭園に来ていた。
イミスの爆走もいよいよ止まり、俺は安全装置無しのジェットコースターのホラーからやっと解放された。
そして俺は息を整えて、未だに嫌に上機嫌なイミスに話しかける。
「…でイミス。もう酔ってるフリしなくていいぞ?」
「ありゃま? バレておったのかのう?」
「当然だろうが。酔ってる人間があんなに爆走できるかよ?」
「確かにそじゃのう。言われてみれば、じゃ」
盲点じゃったわい、と付け足してイミスは笑う。
だがその笑い声は数秒もすれば無かったかのように静まり、代わりに重苦しい空気が雪崩れ込んだ。
「のう、ユーマよ。一年前の…狼の件なのじゃが…」
「ん? ああ、あれか。あれがどうした?」
俺は気づかないフリをして、イミスの声を聞く。
「あの時、ワシが…お主の事に気がついていれば…」
「そういうのはいらん!」
「…うむ?」
だが勇馬さんはそんなシリアスムードに耐え切れる人間ではない。むしろ即崩壊させるのが彼の特徴だ。
流石のイミスも「え? 何で?」的な感じを抑えきれず、顔までもポカンとな。
「第一、謝んのなら休みをくれ。それが今の俺にとっての最高のお返しだ」
「ぅああ?」
「返事をちゃんとしてくれ」
きっと普通の人間ならばそんなことでは許されない。勇馬の立場ならばわめき散らし、怒り狂い、罵詈雑言を吐く。それが自然な流れだ。
しかし勇馬はそんな衝動を抑え切った、
自分が勇気を振り絞った良き思い出
勇馬はそう考えている。
「そんなんだから俺は寝るぞ? クラスの奴らにはなんとか言っといてくれ」
「う、うむ。分かったわい」
「というわけで連れて行け」
「…分かったわい」
無礼極まりない
本来ならば臣下と王、このようなやりとりなど許されるはずもない。
しかし、勇馬とイミスはなんの気兼ねもなく互いを思いやり、笑い合う。
二人が城に戻った後、彼らのいた場所には精霊たちが集まったという。
だがこのわずか数日後、ついに勇馬の真の波乱の人生が幕を開けるのだった。




