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閑話、帰還の裏では●

今回は書き忘れていた&改稿する前に出ていなかった人物のお話です。


●つけんの忘れてた。さーせん

 ワッドライト王国の王都。そこは変わらず賑やかで、仏頂面を務めている者も怒号を飛ばす者も種族に関係なくどこかに幸せを植え付けていた。


 そんな中、狭い裏路地では街からは予想すらもできない光景が広がっていた。


 人を蒔にする青白い炎、辺りは熱波で唸っているが周りの路地からは一切それを感じさせない。ここから分かるようにこれは神法であろう。


 そして悲痛な死体を見て下卑たな笑みを浮かべる男がいた。


 その名は北村、地球から来た神法士の一人だった。


 ...........................................................................


 北村 亮平(きたむら りょうへい)、称号は【火法士】、【熱法士】を持つ。転生者の中でもレベルが高く、天翔やアゲハなどの第一級の神法士達とも肩を並べる存在である。


 ちなみに以前、勇馬が徹夜騒ぎになった要因の一人でもある。それ以外にも彼は色々、勇馬の迷惑になるような事ばかりやらかしている。


 と、いうのも。


「あの野郎…俺のアゲハと今日もまた206回話しやがって。ただじゃおかねぇ。いつかあいつの四肢を焼いて…ヒッヒッヒ」


 このようにアゲハに対しての独占欲が酷い。そのため勇馬に対して異常なほどの嫉妬を抱いているのだ。


 確かに勇馬とアゲハの距離感というものは一般とはかけ離れて近い。それこそ恋人同士のもののそれだろう。


 それにアゲハへ歪んだ愛を向ける彼が憤りを持つのも無理はない。


 だが無闇に勇馬を殺すわけにもいかない。


 なんといっても今や勇馬の名は王都にさえも届くほどに有名、人望もある。


 麗しいその姿に限らず今までの阿呆らしい政治を一挙改革し、地球からの転生者を纏め上げ、王都の治安の回復(本人は無意識でしてる)を行っている。そんな彼に人々が関心を向けないわけがない。


 そんな元から王都で名を賑わせた男だったというのに更に轟いたのはつい前日。


『あのユーマ・クロキが黄色い弾丸を討伐!』『異界の文官、奇跡の生還!』『神法皆無の勇者の素性に迫る!』


 このように王都での勇馬の好感度などは更に増した。街の中では『ユーマ・ファンクラブ(非公式+勇馬の不快をかっている=本人によって何回か滅ぼされ、只今18代目)』すらもできたという。


 街の至る所では勇馬の形を模した置物や絵画に勇馬の伝記が売られており、各完売が予想されている。


 しかも勇馬の髪型を真似て黒髪に染めたり、剣や蹴りを使い始めたり、影響は大。


 ちなみにそんな本人と言えば片足と片手で四つん這いになり、悶えたと言われている。「なんでこんな事にぃ!!?」と叫んだとも言われている。


 だがやはり北村はそんな街の賑わいに苛立ちに歯を軋ませる。彼の親友たる九重や安藤でさえも距離を置いてしまうほどに。


 結果、魔獣にその怒りをぶつけるだけでは済まなくなり、こうして街の野郎どもを蹂躙することで身体を落ち着けていたのだ。


 だがそれも今日まで。心の底で熱く、ドロドロとした何かが彼自身を焦がす。


 目を見開き、肩を震えさせ、道路を脚で踏み鳴らす。


 自身が生み出す炎に耐えられなかったのか、彼自身の指が変色する。


 それにすら気づかぬ北村はより強く、より激しく炎を噴き上げていく。


 今まさに彼の服に火が届こうとする、その時だった。


『ほう、面白きかな。その欲深さ、大層面白い!』


 嘲笑


 北村の浅い性格を大声で笑う頭に響く人の声。


 もちろんその声に北村が怒りを向けないわけがない。怒りの捌け口として北村はその人間へと炎を向けよう()()()


 だが、彼が見たものは予想だにしない物質(・・)


 空中に浮かぶ一振りの怪しい黒剣であった。


 西洋剣の一種で豪華絢爛な装飾が幾重にも備わっている。その上に柄頭には見るものを震えさせるほどに赤い宝石が照り光る。


 今までファンタジーを謳歌し続けた北村でさえも、その異常な武具に固まる。


 だが剣はそんな様子など気にしない。


『どうした? よ? 許す。好きなように話すが良い』


 その時だった。


 火炎がその剣を襲った。


 下位の冒険者を軽く超える北村の炎撃は裏路地をフレアで埋め尽くし、焼き焦がしていく。


 北村の原動力とは支配欲、アゲハに対する歪んだ感情も勇馬に対する異常なほどの殺意もそこから生まれたもの。


 自身を見下した、それだけで彼にとっては殺すべき条件を果たしており、誰も見ていないことからすぐ様に攻撃を行ったのだ。


 性根は腐っていようが転生者の戦闘チート。軽めに放たれた一撃とはいえ生半可なものではない。


 ないはずであった。


『面白きかな!? フハハハハ!! 褒めてつかわす! 偉大なるおれをここまで愉しませるとは!! 愉快にも程がある!!』


 そこには少しだけついていた砂埃が取れ、新品同様の姿へとなった一切の穢れも無い剣の姿が浮かんでいた。


「な!!?」

『…? 何を呆けている? 許す。好きなようにおれに尋ねるが良い』


 北村はここで目の前の物体の埒外な潜在能力を感じ取った。自身よりもさらなる高みに届いている存在だと、そう感じ取ったのだ。


 だが彼は意地の悪い性格をしている。故に今度もまた神法が放たれた。


 再度爆進する炎の渦。


 しかし炎の中で漂う無機質な陰はまた揺らぐことをしない。不動であった。


『ふむ一度ならずに二度までも、といったところか。良いだろう。いかせん手荒ではあるが…“伏せ”』

「!!?」


 その瞬間、北村は落ちた。


 その現象は『重力が増した』とか『脚が無くなった』などではない。


 純粋に『自身から倒れた』のだ。


 なぜこのような事態が起こっているのか。


 なぜ自分がこの剣の命令を聞いたのか。


 それを理解する前に剣は声を響かせた。


おれは【十之正義】の[独裁]の正義! 名を…』


 そして続けて剣は愉快に、激しく声を張り上げた。


『アーサー・クロスウェルトだ! 偉大なる王の名だ! 覚えておくがいい!』


 “アーサー”、“おれ”。


 果たしてこれは偶然なのか必然なのか。


 そしてこの出会いもまた、偶然か必然か。


 それこそ神のみぞ知る、のであった。

まじで北村書き忘れてた。ごめんさい。

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