19、アゲハもやはり変わり者●
「そっかー、ごめんね。レイド、ブル、イロエ、グリム、ピン、グリちゃん。・・・残念ながら近くにはキャンプないみたいだね」
「そうか・・・ところでなんか精霊の名前、すげぇ安直だな。それと似てる名前があるぞ」
「グリムは緑色の精霊、グリちゃんはこの肩に止まってる鳥だよ。グリちゃんは本当はものすごっく大きいんだよ」
「ややこしいから改名しろよ」
「・・・だが断る!」
「どこでそんなもの覚えて来たんだ?」
のんびりと俺とアゲハは木陰で休みながら探索を行なっている。俺も一応、【念話】で仲間たちにSOSを送っているのだが来る気配はない。
おそらく今は昼ぐらいにはなっている。太陽の位置が高いので本当にそれぐらいだと考えられる。
食料や水は問題ない。非戦闘組に換算されている俺はアイテムボックスに必需品を多く入れており、そこにそれらも入っているからだ。だからそこは問題ではない。
問題なのは・・・
ーーブン、ブーンブーンブンブーン!!
地獄絵図のようにも見える気色悪い虫型魔獣だ。いやもしかしたらこのような姿をしてもいい奴というパター『キシャァアアアアアア!!!』・・・ンな、わけはない。
「またきたのか!!?」
「構えて勇馬くん!」
一匹の生き物のように襲いかかる黒い魔獣の群れに対し、臨戦態勢を整える俺たち。この世界での経験からかアゲハの目には殺意が見えた。
そして黒の大波が俺たちを飲む寸前、
「“勇き光”」
歌うように呟かれた神法の“技”。
そしてそれに精霊は応じた。黄色の光があらゆる方向から敵意を覆うように炸裂する。
残ったものは魔石のみ。光が魔獣の身を浄化したのだ。
アゲハはその成果に満足するとニカッと俺に笑顔を向けた。それを見て俺もアゲハにグッジョブと親指を突き上げた。
そして改めて木陰で体力を残しておく。もちろん魔獣撃退のためには体力と集中力が必要だからだ。
基本的に先頭の負担は全てアゲハが請け負ってくれている。俺が下手に手を出すよりも危険性が明らかにないからだ。
神法士はやはりよほど接近されない限り強いらしく、今のところ傷一つついていない。神法はやはり便利だ。そう心で頷く。
しかしそれを実感するたびに胸は痛くなっていく。締め付けられるように。絞られていく。
俺はそんな不可解な気分を脳裏に追いやり、アゲハに尋ねる。
「アゲハ、お前あと何回神法打てる?」
そうするとアゲハはステータスの欄を確認、そして答える。
「三百発ぐらいかな」
「・・・」
・・・えっぐぅ。
「あっ!? 今えぐいとか思ったよね!!? 酷くない!? 私は傷ついた!」
「すまねぇ」
「言葉だけならばなんとでもできるよ! 男ならば行動で示しなさい! たとえば勇馬くんの枕カバーを私に献じ「アゲハ! それ以上は言ったらダメだ!」・・・ケチ」
「ケチとかそんな問題じゃないだろ!!?」
アゲハの母さん!!? 貴女の娘さん大変なことになってますよ! ちゃんと指導しておいてください!!
「だったら勇馬くんの歯ブラシを「だからダメって言ってるでしょ!!?」・・・お母さん?」
あ、いつのまにかママさん口調になってるな。動揺してはダメだ。冷静に、冷静に。
だがこのままだとアゲハはさらなる珍お願いをしてくる可能性はある。そしてそれらを全て否定するとどうしてもアゲハが拗ねる。
つまり俺が! そう俺が社会的に危険でないものかつアゲハが納得するような提案をせねばならん。
何かいいアイデアはぁ〜!! ・・・ぐぬぬぬぬ。
・・・ピコーン!
「アゲハ! だったら王都に帰ったらお前のお願いを中学生レベルで一つなんでも聞いてやる! これでどうだ!」
「・・・昼ドラレベルは?」
「もちろんなしで!!」
何を言い出すんでしょうか、この子は。俺を混乱させるようなことしか言ってこない。・・・何がしたいんでしょうか。
「うーん、・・・じゃあ、それでいいよ。それ以降は私の実力で頑張るから!」
「おう・・・それ以降?」
「うん! 頑張るよ」
「えっ!? それって俺に何が待ち受けてるわけ? 怖いんだが・・・」
「あ! 新しい魔獣だよ! それー!!」
「誤魔化すな! そしてアンパン○ンのバ○子さんみたいな発言すな!!」
まあ、一応機嫌は治ったみたいだしそれでいいのだが・・・なんだろうか、震えが止まらない。酷く止まらないんだ。
・・・俺の明日に栄光の架け橋はあるのだろうか?
不意にそう思った。
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〜 一方のキャンプでは〜
「「「「「いただきまーす!!」」」」」
クラスメイトたちが一斉に声を張り上げた。キャンプ地は今、最大の盛り上がりを見せている。
その理由は至極単純・・・
「アルベルトさん、どうも俺たちにバーベーキューをさせていただいて本当にありがとうございます!」
そう! 陽キャラにとって神企画、一方の陰キャラは「埃かかった肉を大勢で食うとか・・・」とか言い出す行事、BBQである!
そしてさすがオタクかつ超エンジョイキャラ、天翔 総司ももちろんのことながらテンションMAX! 串に刺した肉を両手に持ちながら企画者であるアルベルトに礼を申し出ていた。
そしてその礼を言われたアルベルトは・・・
「ええ、そうですね」
と、蚊帳の外。視線は慌ただしく動いている。
「何かあったんですか? よければ俺も探しますよ?」
「い、いえ! 大丈夫です! きっと大丈夫です!」
「きっと?」
「なんでもございません! あ、向こうの方でお肉焼けましたよ!」
「今すぐに行ってきます!」
そのような会話を終えるとアルベルトは森の深部へと駆け出した。
「勇馬殿、アゲハ殿・・・無事だと良いのですが・・・」
と、悲壮感に満ちた声で呟いていた。




