2、同情するなら○○をくれ!●
俺の名前は黒輝 勇馬。ついさっき異世界に到着いたしました、高校一年生です。
俺の目は只今死んでいると思われますが、どうぞよろしくお願いします。
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俺は普段出さないような声で叫んでいた。仕方がないと思います。
なんたって夏期講習がもう少しで始まるところでギリギリ教室に着いたー、って思った途端に床光って異世界転生って正直笑えねー。
たしかに扉の奥から「転移来たぁあああ!!」「冒険は男のロマンじゃぁあああ!!」「素敵な逆ハー、目指してくれるわぁあああ!!」「勇馬は何処だぁあああ!? 道連れにしてやるぅうううう!!!」「・・・いや、勇馬くんならばむしろ笑ってハーレム作りそうだね。・・・怖いなぁ」など様々なセリフが聞こえていたのだがなぁ。なんで俺は入ったんだろう?
なので騎士の方々は俺に手の平を向けないでください。何が出てくるのかだいたい理解出来るので。ファンタジーの産物だよね。魔方陣あることからも想像できる。
しかも騎士の方々、「うるさい!!!」とスラスラ日本語話していらっしゃる。真ん中の人は黒髪だからいいけど、他の騎士たちは金やら赤やら青やらでカラフル、・・・すっごく違和感湧いてくらー。
騎士の方々が口を開けかけたそのとき、つまり俺が自身の生を諦めたとき、誰かの声がした。
「何をしようとしているの、偉大な騎士の皆さん!?」
「止めないでいただきたい、レイール姫! 我々はこの不届き者に罰を与えなければならないのです!」
金色の髪を持ち、碧眼が輝いている。全身的にすらっとしており、胸も・・・なんでもない。華やかな青色のドレスや宝石などから見てお偉いさんであることは間違いない。
とにかく庇ってくれているのか、姫さんとやら。俺はそのご恩を1日は忘れない。だが次の瞬間すごく失礼なことを言いやがった。
「すみませんでした。そこの”女性”。彼らには後で厳しく言って・・・ブハァァァ!!」
「なんつったテメェェ!!!!」
俺は手を差し伸べてきた女に飛び膝蹴りをかました。なぜナイスガイであるこの俺の性別を間違えるか?許せん女だ。
ちなみに今蹴った女は頭からダイブしてグシャッと着地した、惚れ惚れとするような美しい着地だった。クラスメイトも貴族っぽいのも、騎士たちもみんな唖然とするほどだった。俺は素直に拍手した。
「貴様一度ならず二度までも無礼を!貴様には一度痛い目を合わせたほうがよさそうだな、この”女”が!」
「ドラッシャァァァ!!!!」
「グハァァァァ!!!!」
その騎士もまた地面へとダイブした。 周りの騎士たちは「なんで暴れるんだこいつ!?」的な顔をしていた。なんでだと? その理由は単純だ。
「俺は男だぁァァァァァァ!!!!!!」
無礼は暴力で返す。これ、当たり前だ。
「「「「「なんだとぉぉォオオ!?」」」」」
「喰らえェェェェ!!!」
「''空壁ぃぃぃ!!!"」
俺の膝蹴りが奴らの顔と熱いキスをしようとしたとき、俺の膝が何かに弾かれてしまった。
「 いきなんなんなんだ、テメェェー!!!」
「姫とアルベルトを傷つけやがって!」
「というかあのキック人間技なのか!?」
「とりあえず、落とし前つけさせて貰うぞ!」
騎士の方々が切れていらっしゃる。ほう、なるほど姫さんとアルベルトさんという騎士さんを傷つけた極悪人がここにいるのか。みんな俺がいる方向を見ているが、俺の後ろにいるのか?
そう思って俺は後ろを見る。
「てメェだよ、そこの黒髪ロングゥゥ!!!」
「喧嘩売ってんのか、くそがぁぁ!!」
「女じゃねぇって言ってるくせに見た目スゲェ女っぽいじゃねぇか!!!」
女っぽいダト?
日本だったら俺はMr.ナイスガイと呼ばれてたんだぞ!!!
クラスメイトどもは「嘘つけぇー!」「むしろ、女子より女子っぽいっていう称号貰ってただろうがぁー!」「あと週10以上で男女問わず告白されてただろうがー!」などと言っているが無視だ、無視。
・・・俺ってそんな女っぽい?
「なんか急にあいつが可哀想になってきました」
「あいつの目死んでるぞ」
「もう懲らしめなくていいんじゃないですか?」
「ああ、これ以上はよそうか・・・」
なんか同情してきているが、そんなんいらねぇ。同情するなら男らしさをくれ…。
そう俺は男・・・なのだが何故か女に間違えられるという特異性を持った男なのだった。