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17、キャンプに来ました!(修行中)●

「はっ!」


 ザシュッ!!


 銀色のサーベルがゴブリンの脳をぶちまける。赤い血潮がそこらを濡らす。


 勇馬はただ一人、俊足と言える速度でゴブリンの群れの中を駆け抜けていく。


 それも当然だろう。勇馬はFPだけならば勇者パーティーを超える。ただしそれは・・・


「はぁ、はぁ、はぁ・・・死ぬ」


 5分間限定である。SPが少ないのでそれも当然である。汗ダラダラで顔も青くなっている。


「一旦休憩です! ・・・ご無事ですか? 勇馬殿」

「・・・ふぅ。後は、まか・・・せた(グッ!)」

「ちょっ!? 縁起でもないことを言わないでください!」


 と勇馬を気遣いながらも残りのゴブリンを片手間に殲滅するアルベルトさん。左手だけで一瞥もせずに完封している辺り、勇馬との訓練では本気でないことをよく理解させられる。


 そして勇馬は不意に尋ねる。


「・・・そ、そういえ、ばアルベルトさん・・・って結構なお偉いさん、ですか? 例え、ば【聖王】だったり?」


 と息切れ気味に。まあ、冗談半分だったりしたのだが・・・。


 ーーカラーン!


 いきなりアルベルトさんの手から剣が滑り落ちた。頰には汗がつたっている。


「え? マジで?」

「・・・どうか御内密にお願い致しますよ」


 流石に勇馬も当たるとは思っていなかったので素直に驚く。まさか身近に大物はいるものだ。


 するとふいに笑顔でアルベルトさんは振り向いた。ちなみにゴブリンはすでに全滅だ。剣が落ちてからというものの、【闘術】のスキルもなしでワンパンK.O.していた辺り、本気でチートである。


 そして浮かんだ笑顔はどこか不気味で影が差していた。勇馬は速攻で首を縦に振った。それはもう発狂したバンドの人達みたいに。


「ところでなぜそのような推測を?」


 アルベルトさんがガチボイスで俺に尋ねてくる。そんなにバレてはいけなかったのだろうか? まあ、たしかに簡単に最高戦力をバラす阿呆はいない、か。


「いえ、あくまで勘に近かったのですが・・・えらくイミスに信頼されてるなー、と思ったのと【聖王】と同格で考えられてるみたいでしたので・・・リリアさんとアルベルトさんは【聖王】なのかなって思っただけです」

「な、なるほど」


 だからこそ本気で推測オンリーである。確信は明らかになかったし、本気で冗談で尋ねただけなのだ。決してそこに腹の探り合いなどはなかったのだ。


「まあ、これからはもっとうまく隠せるようにしますが・・・そうですか、バレましたか。ちょっとショックですね」

「・・・ほんとにさーせん」

「いいですよ、別に。ところで・・・一旦キャンプの方に戻りましょう。そろそろ日も暮れますので」

「ええ、そうしましょう。アルベルトさん」


 とにかくこれで安全性はもっと増した、と言っておこう。アルベルトさんが少し怖くなったというデメリットからは目を背けるのだ!


 ...........................................................................


「・・・よし、カレーに異物は入ってない! 食っていいぞ!」

「「「いただきます!」」」


 勇馬が【万能味覚】で料理の味と成分を確認。今のところLv.は6なんだかんだで一番レベルが上がりやすいスキルがこれだ。・・・まあ、毒殺などの危険性は回避できるので積極的に強化しているが。


 だが森林のど真ん中でカレーを食す。これもまた風情がある、と言えるだろう。キャンプの食事=カレーという異世界でも通用するセオリー。カレーの偉大さがよくわかる。


 それはさておき、勇馬は大きな岩の上に座って一人食す。ちなみにアゲハは神法組と、園田と蓮は純非戦闘組と一緒に行動している。どちらも担当する勇馬はこの場面ではどうしてもはぐれてしまうのだ。


 悲しくなんかは・・・ないんです。カレーを一口、ショッパイです。


「勇馬くん、さっきのいちいちやる必要あるの?」


 孤独の悲しみを久し振りに感じていたところ、アゲハは勇馬の隣に並んだ。


 アゲハはちょうど風呂に入ったようで髪も艶やかになっている。ちなみに風呂はありがたいことに天然風呂だったりする。


「ああ、一応な。身内に毒殺されるとかたまったもんじゃないしな」

「へー。そうなんだ」

「・・・」

「ん? どうかしたの?」

「いやお前、俺の前だと異常にテンションが違うなーって思っただけだよ」


 うん。本当にみんなの前だったら規則的ないい子なのに俺の前だと残念感否めないオテンパ娘。ビフォーアフターが劇的すぎる。


 と、思って言っていると。


「ー〜ーーー〜〜っ!!?」


 アゲハの顔が火照っていた。口はガラ空きでカレーが漏れ出しているし、目は見開いていて瞳孔が縮んでいる。


 照れているのか起こっているのかよくわからない顔に勇馬は困惑した。だがとりあえず・・・


「・・・このハンカチ使え。服やら色んなものが汚れてるぞ」

「・・・ありがと」


 そしてアゲハはカレーのシミをある程度抜いてから、瞬く間に晩飯を口に詰め込む。口はリスのようにパンパンになっている。ていうかもう張り裂けそうである。


「んんんんんんーーー!!!」

「何? 『それじゃ、勇馬くん元気そうだし戻るよ。バイバーイ!!!』って言ったか?」

「(コクコク)」


 アゲハさん、電光石火の如くその場から立ち去る。とりあえずアゲハの頰が破けないか不安で仕方がない。勇馬は内心ハラハラする。


 すると・・・


「テメェも女心理解してねーと思うぞー!」

「そうだね。私もそう思う!」


 と、どこからか恋愛不器用二人組がニョキッと登場。そして『勝った!』と言わんばりのドヤ顔。


 とりあえず勇馬は園田に腹パンを決め、スッキリしたところでキャンプに戻った。


 ーー明日、アゲハと話し合おう。何が悪かったのか。


 そう、自然にも思ったことは当然のことなのだろう。


 勇馬はしみじみとそう感じていた。

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