14、犯罪追跡劇!(犯罪なのは追いかける方)●
園田と蓮は城下町で有名な喫茶店に来ていた。
「こ、ここのホットケーキもどきは美味しいね、園田くん」
「・・・そうだな」
「「・・・」」
蓮が少し慌てながら言葉を紡ごうとするが、園田がすぐさま短い答えで会話を切ってしまう。
一見、少し険悪な雰囲気に見える。しかし実際のところ・・・
(ど、どうして会話を続ければいいんだろうか?やっぱり園田くんだし数学の話をすればいいのかな?でもそれだと「うん、うん」みたいな適当な返事になってしまう可能性が高いから、そんなんじゃ感じの悪い女って思われるかも。どうすればぁあああ!!!)
と、蓮は混乱中。一方の園田は
(蓮と2人っきりって、ユーマのヤロー、オレと蓮じゃ会話が続かねーって知ってんだろーが! ・・・クッソ、どーゆー奴が蓮のタイプなんだよ。勇馬は一向に知らせてくれねーし。・・・会話の糸口も見つけられねー。だれか助けてくれー!!!)
と、こんな感じだった。
実は2人ともお互いのことを好き合ってたりする。それなのにいつもお互いすれ違っていっているわけだ。
そして、そんな光景を
「ふざけんな、園田!!そこはまず会話始めやがれ!テメェのその無口感がすごく話辛い状況を作り出してんだろうが!!」
「蓮ちゃん、ちゃんと園田くんの目を見てね!!あと、襟口を少し開けて色気をだすの!!」
「お二人とも!!声がでかいです!!」
勇馬は一喝、アゲハは応援、そしてアルベルトは園田たちに見つからないように注意していた。ちなみにアルベルトさんは手で顔を覆っている。もっとも目は隙間からガン見であるが・・・。
ちなみにこの3人は園田たちがいる喫茶店の向かい側にあるボロボロでいかにも怪しげな喫茶店へ入っていた。
店の人は「こいつらからなんぼ取れるかのぉお」とか「顔いいんで奴隷として売っちゃいませんか、兄貴」とさすごくやばそうな話をしているが3人にとってはどうでもいいことだ。
「おっ! あいつらまた動くみてーだぞ! 全く喋れてないくせに」
「行こう! 勇馬くん! アルベルトさん!」
「はい、了解です!」
もはやアルベルトさんもノリノリであった。この人多分地球の恋愛ドラマ見たらおそらくスタンディングオベーションをおこなうだろう。
そして三人は走り出す! 出そうとしたのだが・・・。
「待ちな、嬢ちゃんらと騎士様ぁ。有金ぜーんぶ俺たちが頂く」
「ついでにボロクソになるまで扱って、売り捌いてやるよ!」
怪しい方々に入り口を防がれた。ちなみにもう代金は払ってあるので出ていっても特に問題はない。
舌舐めずりをしながら勇馬とアゲハをロックオンするヤクザもどき。
勇馬はそれに明らかな分かりやすい怒りを沸騰させている。怒髪天である。
「・・・遺言なら聞いてやる」
勇馬は脚を屈め、構える。
「ハッハッハッ、面白いこと言うねぇー、お嬢ちゃん、やる気か『ぶっ飛べ!』グベッ!」
いつも通りキレまーす。その理由は単純、勇馬の逆鱗に触れたからだ。
キックで天井まで蹴り上げた勇馬。・・・というか勇馬は決して弱くはない。通常の人々のステータスは10前後である。それに比べれば転生組の非戦闘員は少なくとも100前後ある。並みの冒険者程度だ。十分チートである。
「全員、覚悟してんだろうなぁ」
ゆらり、ゆらりと勇馬が歩み寄る。まさしく亡霊のように!
本来、ここは逃げるべきと怪しい方々は理解できたはずなのに「仲間がやられた、しかも女に。このまま黙って逃げるわけにはいくかぁあああ!!」みたいな感じのプライドのせいで逃げず、結果アイテムボックスから護身用のナイフを取り出した勇馬と戦ってしまった。
その店には「俺は女じゃねぇええ!!」と言う怒号と破砕音、さらには野太い悲鳴が上がっていた。
この後、店の怪しい方々全員が所々を刻まれており、勇馬に対して「「「すんませんでした、兄貴ぃいいいい!!」」」と言うことになる。
ついでに言えば勇馬は「あんだけで降参するなんざ根性がねぇ豚どもだなぁ」とドSな笑みを浮かべながら全員の頭を踏んで行っていた。
連れ2人からは「もうヤクザだよね・・・」だとか「どちらが被害者でしたっけ?」といった感想を浮かべていた。
もちろん、その後園田と蓮を見つけることは出来なかった。
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「もう! 結局あの後2人がどうなったか分からなかったじゃない!」
「・・・面目ねぇ」
「それとあそこまでやってしまうと正当防衛と言えなくなるので注意して下さい」
「・・・それはあいつら喜んでたから良かったんじゃね?」
「「いやいやいやいや」」
城へ帰る夕日に照らされる帰り道、勇馬は2人に叱られていた。ただし、勇馬はドSだった点はあまり反省していないようだ。・・・ドSの根は深い。
すると突然
「あ!そういえば!アゲハ!これやる!」
と言いアゲハに向けて何かを差し出す。
「・・・へ?」
流石のアゲハもあっけに取られたのか間抜けな声を上げる。
勇馬が手を開くとそこにはポップでカラフルな蝶々のヘアピンが数本、存在した。
「いきなり、どうして? 誕生日でもないのに?」
「いや、転生された日が誕生日だっただろうが。あの日買った誕生日プレゼントは多分クラスに置かれたままだったみたいだし、こっちで買ってきたんだよ」
少し照れながら勇馬は「いいから早く受け取れ。恥ずいだろうが」と言った。
アゲハは今が夕方であって良かったと感じた。きっと、そうでなければ自分の真っ赤な、みっともない顔が勇馬にバレてしまうだろうから。
「ありがとう」
小さな、本当に小さな声でアゲハは一生懸命その言葉を口に出す。
勇馬は「気にすんな」と軽やかに笑う。
アルベルトはそんな2人の姿をなんだか眩しいものを見るかのごとく目を細めてみていた。少しだけ瞳から濡れた線が落ちているようにも見える。
そうしてアゲハがそのヘアピンを早速つけ、勇馬がそれを褒め、またアゲハが隠れて照れて、アルベルトさんが涙を流す。
そうしていると城の門の前についていた。そこには顔馴染みの二人のシェルエットが。
勇馬とアゲハはお互いにニヤリと笑って歩み出す。
きっと彼らはこの後楽しげに笑い合いながら、問い詰めて行くことになるだろう。
神はこの微笑ましい光景を眺める。
この後彼らに襲い掛かる困難を想いながら。




