97、シリアスへ変貌する(なぜだぁあああ!!?)
すいません!だいぶ遅いですよね!?
「・・・で、落ち着いたか?」
「ああ、・・・一体貴女は何者『女って言ったら・・・わかってるよな?』やめて!?爪を剥がそうとしないで!!?って、あぁああ!!!??いだいぃいぃい!!!??」
ただ今、勇馬さんによる非常識的な尋問が行われていた。恐ろしいのはこの尋問を一切、勇馬がおかしいと思っていない点だろう。
さて、勇馬がただ今問い詰めているのは・・・
「・・・お前らがリシャーナを襲った・・・そうだよなぁ?」
「「「YES!!MA'AM!!」」」
「・・・俺は女じゃ?」
「「「ありません!!」」」
「だったらMA'AMじゃなくてSIRだろうが!!分かれ!駄犬ども!!」
「YES,SIR!」
と、いうことである。つまりアズリール家を世間的に完全にズタボロにする根幹である。
ちなみに勇馬が今尋問を行なっている場所は舞踏会の会場のど真ん中。そこには以前とは別の意味での体液の池ができていた。・・・スプラッタの方だよ?
皆さまもちろん、酷いんですけどぉ〜、みたいな引き気味の顔となり引きつっている。いや、むしろもうやめたげてぇええええ!!!だ。泣き顔である。
「君、流石にやめてあげたらどうだい・・・?」
「いや!ここは俺に任せろ!こういう奴は完全にプライドをへし折っておいたほうがいい!!」
「いや!むしろ可哀想でこっちが嫌になるんだよ!!なんとかやめてくれ!!」
「・・・まあ、わかったよ。お前ら良かったなぁ?でもこんな目に遭いたく無ければ・・・わかってるよな?」
「「「YES,SIR!!」」」
皆さま綺麗に敬礼をビシッとな。そこにはもう余計なプライドなど一切なく、一途な恐怖心しかない。もう雨の日のチワワのようだ。
そうしてこけて、転がって、立ち上がって、逃げて行く。これほど愉快な逃げ方など普通はありゃしない。
すると会場でポツリとこんな声が。
「・・・まず、あのエルフ・・・何者だ?」
もちろんあのエルフとは勇馬のこと。勇馬はここに来て基本的にはリシャーナの家で家事やヒスリアぶっ飛ばしたりぐらいのことしかしていないのでもちろん知られていなくても無理はない。
そしてその言葉が火種となり一気に燃え上がる。
「たしかに、あんなエルフなど見たこともないぞ」
「綺麗だけども・・・」
「え?ていうかあのエルフ、外から来たんじゃないの?」
「いやその割には近衛騎士などおかしくないか?」
「たしかに・・・途中で拾われたエルフ、というのは無理があるな・・・それではあの者は何者だ」
「あんな居どころも分からぬエルフを従えるなど・・・ついにヴァレンティア家も腐ったか?」
「たしかに、それも言えるな・・・」
会場はその話題でもちっきりとなった。チラチラと勇馬を見てはコソコソと何かを話す。・・・まあ聞こえているのですが。
それにしてもこれは少しまずいかも・・・俺はまだしもリシャーナにまで影響が及んでしまうのはいただけない。
もし俺の正体が人間だと少しでも怪しまれればリシャーナが危ない。元々ここには欲深いエルフが多い。失脚を狙ってそのような行動をしてくるかもしれない。
・・・そういえば、こんなときにアレをすればいいのでは・・・。
一か八かの勝負だが・・・仕方がない。
勇馬は踵で大きな音を立てた。普通、無礼な行為とされるものであるが自ずと視線が勇馬へと集まる。
そしてその一瞬に入り込むように勇馬は耳についているイヤーカフスを外した。
光が勇馬から放出される。そして現れる黒髪の人間。明らかにエルフ達の息を飲む音が聞こえた。
リシャーナやヒスリアも呆然としている。当然だろう。自分から正体をバラすなど誰が思おうか。
だが静寂に包まれたのもつかの間、すぐさまエルフ達の怒りが爆発する。
「人間!!?何が目的だ!!!」
「汚らわしい種族が我々になんのようだ!!」
「いや待て・・・そうなるとリシャーナ姫は・・・」
「なるほど姫もまさか・・・けがわらしい人間を従えていたと言うのか!!?」
「いや、むしろ協力体制にあったのでは・・・」
「ともかくあの者を捉えよ!!」
「ああ、一瞬足りとも奴に逃げる時間を預けるな!」
勇馬を囲むようにして現れる貴族達の護衛エルフ。誰もが勇馬に嫌悪の姿勢を見せている。
そしてもう襲いかかろうとしたとき、死神の鎌が世界を絶った。
底の見えない断層がエルフ達の間に深々と跡を残した。会場の視線は勇馬からそれへと向かう。
しかしここで爆発音のように響く破砕音。
広々とした世界がシャンデリアごと揺れる。
揺れが収まると同時にその震源、黒髪黒瞳の人間が口を裂く。
それは窓から覗く三日月の如く。
そして勇馬は演じる。
最悪最恐の極悪外道を。




