95、踊り、ポンコポピン
ピーヒャラピーヒャラ、パッパパラパー
「そなたがヴァレンティア家の新たな護衛人でしょうか?・・・なるほど美しい」
「私に仕えてくださいませんでしょうか?金ならばいくらでも・・・」
「クンクンクンクン・・・ああ、髪の匂いすらも素晴らしい!」
「ところで別の国から来られたのでしょうか?」
新緑の木々をイメージさせるような艶やかな髪
蒼く輝く2つの宝石は人々と目を合わせると魅了させた。
細く健康的な肌は手首や首などの僅かな部分しか見えていないにも関わらず男たちの恋心を焦がした。
そして、もちろんそんな魅力的なエルフを男たち・・・女もいるが、は囲い込むようにして群がった。まるで下賤な笑みを隠そうともしていない。
それに対してそのエルフに見える人間の雄は・・・
「・・・」
もちろん勇馬さん(イヤーカフスによるエルフモード)。
顔を青く染めて鳥肌を立たせていた。今にも寒気が身体に走り肌を手でさすっている。あ、また震えた。
いつもの勇馬であれば有無など言わさず【威圧】→ヤクザキック→昇りゅ○拳!→ついでに【魅了】で自身の傀儡に・・・といったところ。なのだが・・・気持ち悪すぎて勇馬の防衛能力が下がっているのだ。バッドステータス【キモ過ぎる】は化け物にすら効くというのか・・・
勇馬は走馬灯気味に自身の愚かな過去を思い浮かべていた。
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「「「『『『『舞踏会?』』』』」」」
「そうだとも。舞踏会だ」
勇馬が襲いかかってきたヒスリアにフランケンシュタイナーを決め、ランがそれに大歓喜、メラは勇馬を褒め上げ、賢者の書が呆れ返り、その他エルフが見ぬふり聞かぬふりを決めあげていた頃、リシャーナが舞踏会について話し始めた。
「舞踏会は基本的に新たな王が決まる頃に行われる行事なのだ。そこで王の財力や人脈を見せる、という趣旨もある・・・というかそれがメインなのだがね。それに君たちも出て欲しいんだ」
「・・・え? それってメラも?」
「いや、メラタリア様は出たら大騒ぎになるに決まっているだろう。 そうじゃなくて君やヒスリアに頼んでいるんだよ。 私を狙う者は多いだろうからね。近衛兵として同行をお願いしたいんだ」
「・・・まあ、剣をもらった手前、断るわけにはいかねぇな」
そう結局あの後、リシャーナが作った中でも一番の業物をもらった。彼女曰く「今後も君と良い関係を築きたいからね」とのこと。そうなれば俺もハッスルして敵をぶちのめしますとも。
『私ももちろん同行しましょう! 普通のエルフのやつらを姫に近づけるわけにはいきません! 姫が汚れます!』
『なにー? 戦闘? なら行くよー!』
『ラン、戦闘以外にも興味を持ちましょう』
そんな俺に続くようにしてヒスリア、ラン、賢者の書。さらに便乗しだすエルフども。
まあ、俺としてはその舞踏会に出ることで別の用事もできるわけなのだが・・・それは置いておくとしよう。
俺たちはいつも通りの雰囲気で行くことになった・・・のだが。
まず勇馬はリシャーナによって華麗なメイクアップを!もちろん勇馬の歯からは軋み音が・・・。今回も以前のファットマンの時のを利用しております! エコは大事!
さらにランはお酒でノックアウト! 賢者の書はめんどくさいと機能せず! ヒスリアは人ごみに流され!(精霊のクセに)しまいにはリシャーナがこの舞踏会の司会の確認を行うこととなり! そんな感じで俺一人となり!
結果、こんな風に囲まれたわけです!
・・・気持ち悪い。もう、なんか人酔いしてきた。
「すまない、この子は私の私兵なのだ。 少し話があるのでどいてはくれないかい?」
遠くから話しかけてくるリシャーナ、このとき俺はリシャーナを救世主かと思いました。白く薄いウェディングドレスをイメージさせるドレスにはそれほどの実力がある。
貴族どもはいくらかリシャーナに舌打ちをかましてから俺の元から離れた。・・・喧嘩売ってんのか? ワレェ?
「ユーマ、とりあえず【威圧】は沈めてくれたまえ。私も少し怖いじゃないか」
「ああ、すまん。・・・それで用事ってなんだ?」
「うむ、実はな・・・ヒスリアから聞いたのだが一話ほど前に君が森の深部に彼を吹き飛ばした時があっただろう?」
「一話ほどってところだけ違和感は感じるが・・・そんなこともあったな」
確か【闘術】コンビネーションで倒した時だな。
「実はあの時ヒスリアが不可解な足跡を見つけていたらしいんだ」
「・・・魔獣の森だしそんなこと普通なんじゃね?」
「そうだね。そうなのだが・・・ここ最近、魔獣の出もあまりないのだよ。もしかすると他の危険地域から移住してきた魔獣が来ているのかもしれない。だから注意してくれたまえ」
「了解!」
まあ、俺が苦戦する相手・・・てのはなかなか出てこないと思うが・・・。注意はしておこう。
「あと・・・君、何か企んでるよね?」
「ああ、わかる?」
「君が何かを企んでるっていう時ってなんだか悪寒が走るんだよ。背筋にビビっと」
「まじかよ!・・・俺そんなにやらかしてないと思うのだが・・・」
「いやしてる。全然してる」
・・・そうかよ。悪うございました。
・・・って!ああ!!
「リシャーナ!」
「っ!? なんだい!??」
重要なことを忘れていた!それは・・・
「俺と踊って下さい!」
勇馬は右手を差し出す。その目は必至である!
「・・・・・・そんなに騒ぐことかい?」
「もちろん!」
周りからざわざわと音がする。なんだか同性愛の方?みたいな目を受けている。俺は男ですとも。
リシャーナは呆れたような目を見せたが、そのあと少しだけほのかな笑顔を浮かべ、
「もちろん、いいよ。踊ろうか」
勇馬の手に縫い合わせるように左手を重ねた。
遠くから野生的な蛮声が聞こえてくるなぁー。とりあえずメラさんに密かに捕まえてもらう。
そして会場の中心でピタリッと止まる。天井から降り注ぐ照明は二人を祝福するようにして降り注いでいる。
そしてゆったりとだが・・・二人は動き出した。
まだ動きはぎこちない。しかも女性二人という異質なペアだ。
しかし黒と白のドレス、翡翠と白銀の共演で誰もかもを夢心地に浸らせる二人を笑うものなどいなかった。むしろ人々の視線はどんどん二人へと集まる。
彼らに合わさるように奏でる協奏曲。度々二人を照らす照明の輝き。それらは二人を引き立てる材料にしかならない。
そして周りのペアや観客も彼らと共に踊り始める。
そこにはもう王女を死神と唱う者などいなかった。ただの一人の美女としか見れていない。
勇馬はリシャーナに笑みを浮かべ、リシャーナもそれに応える。
そしてその笑顔と共にリシャーナは恥ずかしそうにも言葉を紡ぐ。
「ユーマ、今日は踊りに誘ってくれて・・・ありがとう。初めて人と一緒に、踊ったからね」
リシャーナは死神の呪いを持っている。それは金輪際、変わりはしない。
だが、それでもその呪怨にまみれた手を取る男がいた。昔、御伽噺で読んだ英雄のように。
その感謝を込めて彼女は嬉し涙をチロリと見せて笑顔を浮かべた。
勇馬はそれに顔を赤くした。リシャーナと行動を共にしてからどれだけ赤くさせられたかわかったものではない。
この人々を魅惑させる演舞はこの後10分ほどしかなかった。
だがそれは人々に夢幻の時間を感じさせていた。




