93、貴方、主人公じゃないんだから・・・
すんません、無理そうです!!これで限界です!
思ってたよりも今日予定ありました!!
すいませんでしたぁああああ!!!!
勇馬はそこに寝転がり気絶するドミュルトに目を向け、溜め息を1つ吐き出した。
勇馬の中には未だどうしようもないほどの怒りが荒れ狂っている。ヒスリアをあそこまでボロボロにし、その上リシャーナまで狙おうとしたのだ。許せと言われようと無理がある。
それでも勇馬が今回、彼らを殺さなかったのは同情などではなく面倒くさいから。
ここで全員虐殺してしまえばアズリール家は正当な権利と言ってヴァレンティア家を攻撃するであろう。
勇馬的には特に問題にもなりはしない。しかしヴァレンティア家は話が別である。
勇馬を除く総戦力で言えばアズリール家の方がヴァレンティア家よりも強い。その差は短くはない。
勇馬が参戦すれば全然大丈夫ではあるのだが・・・それでも戦力のいくつかは削れてしまう。ただえさえ戦力が少ないヴァレンティア家にとってそれは多大な損害である。
一番ベストなのは勇馬のみを狙っての攻撃である。なんだって勇馬にはラン、メラといった他2体もの怪物君がいるのだから問題はない。
最悪アズリール家がなんらかの刺客を持ってきていれば話は違う。しかしエルフというものは他の種族を嫌う傾向が大きいのでそれもないと考えた方がいい。
と、言うわけで今回はドミュルトを見逃す方向となる。・・・正直惨殺して個人的な怨みを晴らしたいところなのだが、やめておかねば。
『我が君よ、流石としか言えない腕前でした!』
脳内に聞き覚えのある真龍の声が木霊する。もちろんメラである。
『ああ、そっちの方はどうだ?』
勇馬は【念話】で脳に直接語りかける。
『ええ、まず賊どもの捕縛の任務は遂行し、リシャーナ・チューズ・ヴァレンティアは外傷、脈、毒物反応などいずれも問題がありませんでした』
『おう、・・・それでヒスリアはどうなった?』
リシャーナが無事なのは良かったが・・・それ以上に気になるのは唯一無二の恋敵の安否である。最初の森の頃こそどうでも良かったのだが・・・不思議なものだ。
『それに関しては・・・直接見られた方がよろしいかと存じます』
『わかった。主犯もそっちに連れて行くから捕縛よろしくな』
『了解です。我が君よ』
そうか・・・アイツはもう・・・
そう思うとどうしてだろうか、アイツのやかましい声がどうも懐かしく思えてくるな。
俺はドミュルトを背負いながらただただ歩く事しか出来なかった。
焦げた大地の中で僅かな光を放つ火は勇馬に長い影をもたらした。
...........................................................................
『この通り、リシャーナ・チューズ・ヴァレンティアには一切の傷はございません』
「あ、ああ。ご、ご苦労な?」
『光栄の極みでございます』
「り、リシャーナも無事でよかっ・・・た?」
「う、うん。ありがとう?ユーマ」
明らかにメラタリアさん以外は言葉を濁して喋っている。普段男勝りな話し方をするリシャーナですら女性的な雰囲気が出てきている。なんだかみんな意識が上の空にある模様。
というか目線が明らかに別の方向にいっている。
そして、その視線が集まる先は・・・
『こ、これはどうなっているのだ!!?貴様ぁああ!!!??説明しろぉおおお!!!』
「いや、俺も知らない」
明橙色の光を纏い、空を脚で掴んでいるヒスリアらしき生命体がいた。・・・どうなっているんですか?
「「『説明しろ!!メラ!!』」」
『まさかお主らまでタメになりおったか。リシャーナ・チューズ・ヴァレンティア、ヒスリア・ナクローノ』
「「『そんなことよりも早く言え!!』」」
『あ、はい』
メラタリアさんもうどうもがこうとも、すでに下っ端的なイメージしか残っていないようだ。これでも一介の化け物、のはずなのだが・・・。
まあ、そんな扱いにもちろん慣れているメラさんはそのまま説明を始める。
『今回ヒスリア・ナクローノがこのようになったのはヒスリア・ナクローノが精霊と同化したことが原因かと思われます』
「「『同化?』」」
『はい、今回ヒスリア・ナクローノは致命傷を負い、あと僅かな命でございました。我の力でも無理でしたのでもはや諦める他にない、そう思っておりました』
ここで勇馬はアイテムボックスから取り出した緑茶をひとすすり。これはハルヴァナイ大森林で乱獲した茶葉から作ったものですとも。
『ですが・・・そこで出現した精霊、恐らくは今までヒスリア・ナクローノが使役していたものでしょう。それがヒスリア・ナクローノの体内へと吸い込まれるようにして入り、そして同化したのです』
「・・・え?そんなことってあんの?」
『普通ならばあり得ません、我が君よ。恐らくはそれほどにヒスリア・ナクローノを溺愛していたのでしょう。良き精霊術師であったことが伺えます』
『そうか・・・感謝いたします精霊様』
ヒスリアは地に膝をつくようにして感謝の言葉を告げた。その言葉に反応したのかヒスリアから溢れる光がまた強く輝く。
『それで・・・いまヒスリア・ナクローノはもはやエルフではなく、精霊と考えた方がいいでしょう。詳しく言うならば半精半人と言った方がいいのでしょうか・・・』
「ま、ヒスリアはヒスリアだし・・・別にいいんじゃね?」
『・・・ふん!貴様に言われるまでもない! 私はあいも変わらず姫のために戦う、それだけだ!』
うんうん、・・・ところでなのですが・・・
「今・・・何時?」
「えーっと・・・午前3時だn『よし!それではお休み!』・・・速っ!?もう、部屋に戻ったのかい!??」
『奴の動きが見えた・・・?つまり・・・今ならば互角に・・・フハハハハハ、勝負だぁあああ!!!ユーマ!!』
「流石に寝かせてあげ『ぐはぁあああ!!??』・・・パワーアップしても結果は同じなのだね」
この日、結果的に言えば勇馬はヒスリアに何度も睡眠妨害されたことによってご立腹であった。
またヒスリアはヒスリアで強くなったはずなのに八つ当たり半分レベルでやられることにショックを受けていた。
もはやここに先ほどまでのシリアス展開を気にするものなどありはしなかった・・・なんでだろう?
とりあえず部屋の隅で縛られながら放置されている方々は「え? それで俺たちへの処罰は?」と真顔で訴えていた。




