91、貴方の心を覗き見♡(人権侵害)
遅くなりました!
「『来い!メラ!!』」
『かしこまりました、我が君よ!!』
地面から突然生え並ぶ龍の顎、メラが現れる。
「っ!!? 真龍メラタリア様だと!!??」
一方で人間が地震達が崇拝する真龍を手懐けているという事実に衝撃を露わにするドミュルト。それはすぐさま怒りへと変換される。
「貴様、我らが恵みの龍に何をした!??」
「・・・色々?」
ホントに色々したもん。殴ったり、蹴ったり、雷バリバリしたり、暴言吐いたり、・・・あれ? 俺ロクなことやってない?
いや、そんなことはない・・・はずだ。
「ふん!!それほど貴様が外道だとは思ってーーーっ!?」
「喋ってねぇで外でやるぞ、“踏衝”」
俺はドミュルトの顔面を踏みつけるようにして蹴りつける。
まるでヨーヨーのように縦に回転して吹き飛ぶ。
「メラ!お前はそこに寝転がってる奴らの捕縛、リシャーナの安否確認、あと・・・ついでにヒスリアの看病しとけ!」
『了解致しました!』
勇馬は指図をするとそのまま木材と化した床を吹き飛ばしながら庭へと飛んでいく。
途中で空を飛んでいるドミュルトを見つけたので地面へ蹴りつけてそのまま“飛脚”で地面へと飛ぶ。
シュタッと着地する勇馬に対して地面に亀裂を入れるドミュルト。
ドミュルトはどうやら内臓がいくつかいってしまったようで口から血が吹き出ている。
これ如きの力であそこまでいきがっていたのか・・・と勇馬は思った。もっとも勇馬が強すぎるだけの話なのだが、その認識ができないほど今の勇馬はキレていた。
「グフッ!!・・・貴様、本当に・・・人間なのか?」
ドミュルトがこう言っているのはつい先ほどから目を合わせた時から行なっている行動が微塵も効いている様子がないから。
リシャーナから聞いていたドミュルトの固有スキル、【王の邪眼】。この力は目を合わせた者を操ることができる。
しかし、勇馬には効いている様子がない。一切だ。
たしかにこの力は敵にバレてしまえば能力が弱体化する。そのため決して必殺技とは言える代物ではない。
それでも弱体化された力は必ず効く。
どれほど勇馬が強くとも動きが阻害される程度の支障は出るはず。
ではなぜ効かないのか・・・その答えは勇馬が口にする。
「理由は単純、俺には精神干渉系統のスキルは効かん!・・・まあ、最近リシャーナがいたから【封印】の常時使用忘れてたけど・・・」
そう、そういうことなのだ。
つまりは最初に会った時、勇馬の怠慢が原因で【王の邪眼】が効いてしまっていたのだ。普通なら弱体化せずとも効くことはない。
実はリシャーナの呪いは精神干渉・・・というか魂を強制的に書き換えて殺すという慈悲もないような防御不可能なスキル。
そして最近リシャーナのそばにいた勇馬は無意識にリシャーナ以外から注意をなくしていたのだ。つまりは自業自得である。
【封印】様、案外大切。これからは積極的にレベル上げてきます。・・・余計に神法が使えなくなる点からは目を背けようではないか!
チートを防げる【封印】様は流石に目の前のドミュルトも予想外、特に最初会った時に効いていたため余計驚いているようだ。
「っー!!? なぜ貴様のような怪物がこの世にいるのだ!! 我が伝家の力が全くもって効かぬなど・・・」
「いや、よく思うんだけどさ・・・なんでリシャーナはともかくヒスリアまで狙う?」
激昂するドミュルトに対して飄々とした雰囲気を見せながらも目を笑わせていない勇馬が横たわるエルフに問いかける。
まあ、だいたいは想像できているのだが・・・
「・・・貴様にそれを知る必要はない!!」
「そうか・・・それじゃあ、“束縛”」
シュルルルルル
ドミュルトの身体に糸が巻きつく。【糸生成】と【糸操作】によるものだ。
ちなみに“束縛”はこれらのスキルと【麻痺強化】によって作られた技。これらのスキルによって体をより動かしにくくする上に麻痺によって多少思考が奪われる。
そしてそのまま勇馬はアイテムボックスから賢者の書を取り出す。
そして開け使うスキルは【読心】、強制的に敵の思考を読む権能。
そして賢者の書につづられる目の前の男の思考や想い。
小さな頃の親からの非情な指導。ただただ王になることを強要された。
それにも関わらず時期王となったのは自家と相反するヴァレンティア家の呪われた子、リシャーナ。
彼女は王家の者から疎まれてこそいたものの平民たちからの評価は非常に高かった。だからこそ当然の決定と言えたであろう。
だがそれをよしとするアズリール家ではなかった。そしてその怒りの矛先はドミュルトへと向かった。
ーー貴方なんて産む意味も無かったわ。
ーーお前を育ててきた金や苦労を返せ!!
ーー出来損ないのお兄様はどいてください。
母に、父に、弟に、さらには家の使用人にさえもドミュルトは非難された。
そしてそのとき彼は理解した。
彼らは“王”となる自分にしか興味がないのだと。
それと同時に彼は想った。
もし自分が王となれば・・・彼らは自分のことを、褒めてくれるのだろうか、と。
そして彼は、ドミュルトは決意した。
家族のために、自身が王となると。
だからこそ白い忌み子、リシャーナ・チューズ・ヴァレンティアに求婚者として近づいた。
そして彼女がメラタリア様の元に行く旅の途中で自身の配下に殺させることを決意したのだ。
そうすれば時期王のリシャーナに求婚した中でももっとも権力と戦力を持ったドミュルトが王の冠位へつけたのだ。
しかしここで誤算が1つ。
それは途中で使者たちが人間たちに捕まったこと。これによって使者の数は大幅に減少したことだ。
これによって殺そうにも戦力が足りない状況となり生憎、その隊はこちらへといち早く戻ってきた。
これによって最初の、王になるための作戦は失敗した。
だからこそ今度は失敗はできなかった。
今回、リシャーナのみではなくヒスリアも殺そうとしたのは彼が間違いなくヴァレンティア家の兵の中でも人徳を持っていたため。
人々から注目を集める人物は自身の敵。
ドミュルトは煮た泥のようにドロドロとしたその意思に従った。
これがドミュルトの思考。
勇馬は賢者の書から目を離した。
そしてドミュルトに目を向ける。
しかしそれは憐れみでも怒りでも、ましてや卑下する目でもなく。
・・・純粋な呆れの視線を向けた。




