90、激おこなんて生温い
本日は諸事情で二話しか書けないかと存じます(?)
夜だった。
勇馬は急に目覚めた。
理由は至極単純、敵だ。
勇馬は上から襲いかかる風刃を【鱗装】を纏った右の拳で吹き飛ばした。・・・まあ、風刃と言えるほど切れ味は無いけども。
どうやらその風を起こしたのは上に張り付いている黒コート男のようで、流石に天井に張り付くのが疲れたのか降りてきた。
「チィッ!起きたか!!だがしぁかし、俺に叶うことなど『ヴゥォン!!』ガグベッ!!」
死亡フラグという名前の墓穴を掘っていく黒コートの男に風圧が発生するほどのキックで男の象徴を破壊した。
変な悲鳴とともに倒れた男を見ないまま、勇馬はその部屋の窓から出る。そして、
「“飛脚”!!」
空中で脚を踏み込み、一階の窓へと突貫する。
窓ガラスへと接近した勇馬は空中で起こす回し蹴りの風圧で窓ガラスとともにその奥にいる敵を攻撃する。
散らばる硝子は月の光に照らされ幻想的までに勇馬を覆う。
そして、赤く照らされた黒オーブの男達の輪郭が勇馬の視界に入る。
だが黒オーブの周りの光景、
「・・・きさ、ま?なぜここにいる?」
床にへたり込むヒスリアの姿に勇馬の目は向いた。
そしてヒスリアはどこまでも広がっているような血の池を作り上げていた。
ヒスリアは奥にある扉を守るようにして地に伏せている。
その奥の部屋はたしか・・・この館の主、リシャーナのものである。
「・・・なるほどな」
おそらくヒスリアはリシャーナを庇ったためにこれほどの怪我を負ったのだろう。
嫌気が刺す。目の前の罪人どもにも、自身にも。
暑い夜の空気が極寒の風へと生まれ変わる。
勇馬は鋭い眼を男達に向けながら前へと進み出る。
そうして進み出ていくと一人の黒オーブの巨漢が立ち塞がる。顔には刺青が彫ってあり、エルフにあるまじき惨虐な眼光が勇馬を映す。
「へぇ、コイツがお前が言ってた新しいエルフか? なかなかいい女じゃねぇか?遊んでやるよ」
巨漢のエルフがほかの黒オーブの男を見て笑う。
そしてそのまま男がゆっくりと勇馬に手を向ける。すると
男の視界が反転した。
そして、一瞬で襲いかかる曲線の猛打。
蹴り上げて、蹴って、蹴り上げては蹴って。
空中でサンドバッグとなった男は最後の一撃で砲弾のように黒オーブ達の元へと帰る。
もちろん避ける3人の男、しかし
「・・・死ね」
どこまでも冷酷な声。
火がそこらを照らしているというのにまるで闇から生まれたかのようにぬるりと現れる鎌のような軌跡。
そしてその線が通り過ぎた男達のもとには遅れての衝撃が。それは彼らを余すことなく吹き飛ばした。
男達が一階の天井を突き破り、壁にめり込み、そして床に刺さった。
唯一、二階に吹き飛んだ男は息があるようだ。
蒼い眼光はその方向を捉えている。
それと示し合わせたかのように天井を突き破り現れる焼岩の数々。
勇馬はもちろん鱗のある手の甲で弾き飛ばした。
そして上から注がれる視線に自身のそれを合わせる。
その時見た目には紋様が浮かんでいた。
「・・・よう、変態王子」
そこにいたのは血に濡れたような赤髪の男。ドミュルトだった。
「ふむ、・・・邪魔をするのか? 我が恋人よ?」
「恋人じゃねぇって言ってんだろ!!?」
憤慨する勇馬さん。たとえシリアスシーンであろうとそれは譲れない!!
だが、そのような空気はすぐに霧散する。
「ふむ、・・・それでは金か? 金で雇われているのか?」
「・・・あぁ?」
「我が恋人ほどの手練れはなかなか見ないのでな・・・なぜ血が呪われているヴァレンティア家に使えるのか、不思議で仕方がないのだ。もう一度聞く、なぜ我が恋人はそちら側につく?」
心底不思議そうにこちらを見るドミュルトさん。
勇馬はそれに溜息をつき、答える。
「その前にだが・・・お前、勘違いしてないか?」
「・・・何?」
一幕、そして
「1つ目、俺は女じゃない。男だ」
「!!?」
いつもならば一番最後に言って、怒り爆発のところを一番最初に持ってきた勇馬。
「2つ目、俺はエルフじゃねぇよ」
勇馬はおもむろに耳を手で握りそこに付けられているものを壊す。
すると手の隙間からパラパラと金属片、イヤーカフスだったものが落ちてくる。
そして、勇馬の本当の姿が光の量子があちこちに散らばるとともに現れる。
「なっ!!?人間だと!??」
「そ。理解してもらえたかな?」
なんだか彼の顔が真っ赤に染まっている。・・・例の件は無かったことにしたいのだろうなぁ。
だが、俺の話はまだ終わっていない。
「そして3つ目、俺はあいつらに雇われたわけじゃない。勝手についてきただけだ」
「・・・それを我が妻は知っているのか?」
「いや?知らないと思うぜ」
「・・・そうか」
ここで俺が嘘をついた理由は単純、リシャーナの名誉を守る為だ。
もし、人間を忌み嫌うエルフ達にリシャーナが人間を雇っていると知られればリシャーナの人気は一気にガタ落ち。
王家からすれば元々嫌われていたので、必ず何かしらの方向で反乱が起こることになるだろう。
だからこそ俺がリシャーナを騙している、という設定にすれば非難されるのは俺だけ。
「それでは、我は本気で貴様を殺さねばならないようだな・・・覚悟しろ、人間」
「すまないが・・・それはこっちのセリフだ、外道」
そして俺は動く、出来るだけ後ろのヒスリアを傷つけないようにして。
こいつの仇を討つために。




