88、カオスはいつも光りに滅びる
目を覚ますとそこには綺麗な川が流れていた。
岸辺にある花も今まで見たことが無いような美しさを感じさせる。
向こうの岸辺には死んだはずのお爺ちゃん(ヤクザ初代)とお婆ちゃん(極妻)が「こっちには来んなよー!!」と手を振っている。
・・・俺、死にました?
待て!!そうだとすると死因が全く思い出せん!!
最後の記憶は、ヒスリアがアズリール家について話していた時少し不機嫌だったことまで・・・。
まさか、あの館に何か危険なトラップでもあったというのか!!?
・・・いや、それは無いと願いたい。リシャーナも俺のことを信頼してくれていたしな。
そうだとすれば、ほかの要因はぁ・・・俺が人間とバレたのか?
いや、俺はとあるエルフ達ほど冗談で変装もせずに外に出るほどボケてはいない。
それに俺を倒せるって・・・マジでラヴァさん復活!!とかならあり得るけど。
・・・でもそれは無いと・・・思う。そこまでラヴァハートさん暇じゃ無いでしょ。
・・・じゃなんだ?
・・・思い・・・出せないっ!
だが、・・・なんだろう。身体中が思い出すのを拒否しているような気がする。
悪寒をしっかりと感じながら勇馬はとりあえず決断を下す。
思い出すのをやめよう!!と。
そうするとなんだか瞼が重たくなってきた。
・・・そういえば三途の川渡らずに寝る場合はどうなるのだろう。
勇馬はふとそう感じた。
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「ーーーっ!!!ゆーー!!ーぅま!!目を開けてくれ!!」
「ぅんん?」
「あ!!覚めた!!」
そこには・・・
「・・・女神様?」
「・・・ほぇ!!?」
「よし!!頭の方にどうやら支障があるようだ!!今すぐ頭を冷やさせるために氷を!!」
女神様かと思えばリシャーナであった。・・・なるほど女神様なんかよりリシャーナと言った方がランクが上だよな。
ところでヒスリアさんや。・・・その氷水の量はなんですか?下手したら水風呂が出来る大きさの器ですよ?
「よし!!投下ぁあああ!!!」
「させるか、“装雷”!!」
一気になだれてくる水を勇馬は身体に雷撃を纏って蒸発させる。一気に部屋中が水蒸気でベチャベチャに。
「いきなりなにやりやがる!!!テメェが水をぶっかけてきたせいで部屋がめちゃくちゃだろうが!!」
「それを言うならば、貴様が蒸発させなければよかったであろう!!よってその罪、死で償え!!!」
「さて、私はユーマのお粥でも作ってこようかな?」
回復してから電光石火で喧嘩が始まる。この状況をスルーするリシャーナ。彼女は相当この旅でスルースキルを鍛え上げられたことであろう。
ちなみに他の皆さんは部屋から退場中、出来るだけ喧嘩に巻き込まれないようにする。
唯一、ランのみが試合観戦だとその場に残った。
流石、バトルジャンキーのラン様。子供が日曜日朝の某ヒーロー達を見るような純粋な目で彼らの喧嘩を見ている。
だが喧嘩が始まって速攻で邪魔が入る。
「我が新たな恋人よ!!治ったのか!!?」
と、空気やら状況やら人の気持ちやらを全くもって読まない男が登場した。
その瞬間、勇馬の脳裏にある光景が浮かぶ。
誰かと自分らしきナイスガイがキスしている場面だ。確か相手は・・・この男だったはず。
「ぐっ!!?ぐぅああああああああああ!!!!」
そこから流れ込むように襲いかかる後悔、羞恥。それらはまさしく激痛のように勇馬の頭を暴れまわる。
頭がぁ!!!? 頭がぁあああああああああ!!!!
「チャンスッ!!ブハッ!!?」
激痛こそあるものの最後力で一撃を放つ。それはヒスリアの顔面にモロにあたり、独楽のように回転させた。
「おお、ヴァレンティア家の兵士を一発で倒せるとは・・・流石、我が恋人だ!!」
ふざけんな!!と言いたいところだが、今はそれどころじゃねぇえええええ!!!!痛い痛い痛い痛い痛い!!!
仕方がない!!あのキスをなかったものとしてくれる!!
勇馬は口に向けて全力の電撃と炎撃を加えた。
唇は一瞬で燃える燃える。のちに筋肉まで焼けてきたね。
・・・そろそろオッケーかな?
勇馬は口の辺りを完全に消滅させてやっと炎雷を止めた。【再生】で直るからこんなことできるけど・・・良い子はしないでね!!?
とはいえモンスターの勇馬でもそれほどの火傷(?)が痛いのは事実。口の周りを抑えそこらでゴロゴロする。
そこに1匹が勇馬に歩み寄る。
『大丈夫?シショー?胃薬飲む?』
ありがとう、ラン。気持ちは嬉しい。・・・だがこれ胃薬じゃ治らんと思う。
「お粥持ってきた・・・・・・なんだい、このカオスな空間は?」
その瞬間、勇馬、ヒスリア、そして最低クソ野郎(仮)が硬直する。
それはリシャーナの服装が非常に珍しいことにクマさんエプロンだったから。今までのお堅いエルフのフードではなく、・・・クマさんエプロン。
勇馬の頭から激痛は消えた。そんなものなどどうでもいい。
勇馬は神を拝むようにして、クマさんエプロンのリシャーナに敬意を覚えた。
他の2人もそうなのか涙を流しながら崇拝していた。
ギスギスしていた空気もすっかりと消えた。
嗚呼、この世界は平和に満ち満ちている。
勇馬はついに悟りを開いた。すなわち、
「なるほど、リシャーナを見れば人類は救われるのか・・・」
「そうだな、・・・賛成しよう」
「うむ、やはりこの者こそ・・・我が妻に相応しい」
「ふむ、なるほどね。全員、頭逝ったのかね? あと最後のは色々おかしいよ」
リシャーナは呆れながらツッコミをいれた。
するとまたもや、やらかす方が一人。
「ふむ、パンツは案外可愛い系なのだな。これまたイチゴ柄のというのがまた・・・」
「な!!?」
まるで雲が流れるかのように・・・もはや変態野郎としか言えない阿呆がリシャーナのスカートをめくる。
おそらく常習犯なのだろう。当然のようにガン見している。
その光景にとあるお二人さんはスカートめくりをした男に怒りを感じながらもそのパンツをしっかりと脳裏に残した。
おっけい、ちゃんと一ミリの差異もなく覚えました。
そこでやっと気を取り直したのかリシャーナが男から距離を取り、そして
「ししししししし、死ねぇえええええええ!!!!」
呪いの咆哮を繰り出した。
とりあえず、その後勇馬がなんとか助けたのだが反省した様子もない男に被害者二人がマジギレを通り越した軽蔑へと走ったのだが・・・それは後のことである。




