10、ブラックから始まる異世界移住●
とりあえず、クラスメイト全員がおかしいことを再確認できたとき、ドアからノック音が聞こえた。
「どなたですか?」
アゲハがガチャリとドアを開けた。
するとそこには一番最初に俺に対して殺気を向け、姫さんの次に俺が蹴っ飛ばした騎士さんがたっていた。
この騎士さんはこの世界では逆に珍しい黒短髪に黒色の目を持ってて結構イケメン。ただし鼻が赤くなっているため少し台無し。鼻元には赤く乾いた何かの跡もある。
・・・さすがに少し同情した。いや、犯人俺ですけども。
「・・・勇馬様は起きていらっしゃいますか?」
この人、目つきが何を考えてるかわかんない。ただ、常日頃起こっているようにも見える。騎士さんや怖いよ。
そのくせ基本的にはイケメンスマイル。でも目は笑ってない。しかも殺気ビンビン。敬語使われてるからさらに恐怖するよ。
そして扉を閉めて一拍。来るか・・・心の準備はできている。ばっちこーい!
「先程は申し訳ありませんでした。まさか男性だとは思っておりませんでした。」
・・・はれ?
仕返しに来たんじゃないの?
てっきりさっきの蹴りの報復にでも来たのかとと思ってたよ。
するとそんな俺の内心を感じ取ったのか騎士さんはスラスラと俺の疑問に答えて来た。
「我々は主に対する愚行は許しませんが、主の命令とあれば私怨などで人に刃を向けることはありません」
主君の命令は絶対、てか。イミス、いい部下持ってんのなぁ。羨ましい。
うちの奴ら《893》は「礼儀より力ぁああああああ!!!」っていう脳筋どもだったからなぁ。そして親父も後先考えねぇ馬鹿だしな。
まあ、許してもらえたのならば有難い。そう思っていた矢先に・・・。
「あと、勇馬様は【剣闘士】の称号を持っているのですよね?」
と獣のように瞳に光を宿して俺に訪ねて来た。食ってやろう、と言わんばかりである。
「え? あっ、そうですね」
うん、確かに持ってたなぁー。それどころじゃなかったからなぁ、忘れてたよ。女と言われたり言われたり書かれてたり言われたりで、ね。
「ところでそれがなんですか?」
「私、アルベルト・ヴィル・クラレントが稽古することになりました」
・・・・・・は?
「KEIKO?」
「稽古です。ただし私は【剣術】のスキルしか鍛えることができません。【闘術】は独学でお願いいたします」
・・・なるほどなぁ。これから戦いに向かうんだからそりゃあ鍛錬は必要だわな。まあ、訓練のあと時間はあるだろうし、その時間に情報を集めれば・・・
「ですが正直剣技の稽古にかけられる時間は大分短いですね。勇馬様多忙なので」
・・・・・・・・・・・・へ?
「・・・ちょいと質問いいですか?」
「はい?どうぞ」
「なんで・・・俺多忙なんですか?」
俺、そんな話聞いてないんすが・・・。え? 時間は?
俺は第一の心当たりである友人三人と目を合わせていく。しかし全員が頭を横に振って行く。てっきりこいつらの悪質ないたずらかとも思ったのだが・・・違ったようだ。
そして再度、アルベルトさんの方を見やりアイコンタクトで尋ねる。『いったいどんな了見だ?』と。
するとアルベルトさんが『え? 聞いてないの?』とポカンとして数秒、理由を語り始めた。
「え、イミス王が『ユウマには大量に仕事入れとけ、18時間ぐらい』と申し上げておりましたので・・・って勇馬様!?」
「・・・止めてくれるな、アルベルトさん。俺は奴を・・・殺す!!!!」
なに、ブラックな企業も真っ青になるレベルの仕事入れてくれてるんだ!? 労働基準法を遵守しろ!!
するとアゲハが思い出したように一言。
「えっ、でも勇馬くん王様と話してたとき、王様が『そのぶん働いてもらう』的なこと言ってなかったけ?」
「・・・ああ、そういえば・・・・・・いやでもこれはおかしいだろ!!!休む時間も6時間程度しかないし!!」
「いえ、稽古の時間は省いているので休む時間はもっと短いです」
「アホなん!?あの王アホなん!!?」
あのバカが、家臣はいい奴でも本人は明らかアホやんか!!!
勇馬はとりあえず関西弁訛りになるレベルで動揺をおこした。そしてとりあえず・・・部屋から猛ダッシュで飛び出した。
「どこ行くんですか!?」
「駄王様の所!!!」
奴め、殺してくれる!!
友人は駆けはじめた。自身の自由時間のために! 今日も彼は走り続ける!
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ー???ー
結果あいつのせいで王室の一部がひび割れていた。
怪我人は神法によって誰一人いなかったが、恐ろしいもんだ。
あとあいつの労働時間は議論の末、12時間になったそうだ。
相当短くなったと思う。
その代わり、労働内容が増えたのは放っておくとしよう。
・・・だがあいつはこれから労働時間18時間よりも恐ろしい地獄を見ることになるだろう。
奴は・・・まだそれを知らない。




