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字融落下

字融落下 ―浮上―

作者: 莞爾

 表情を伺うために視線を上げる、私はそのまま回転して水中へと沈んでしまった。蓮のような花の花弁はそっと両手を差し出す。水の底に横たわる薄闇の中に繋がる茎、その先にある私の死体・・・。


 誰かがいた。

 両手、つまり花弁の向こうに。

 誰かがいる。


 上へ上昇するにつれ、髪の束である線は植物の茎であると考えられた。茎は伸び、水面から頭を出すと蓮らしき花と結ばれている。髪の毛のような黒い色。花弁は細く、合計で十。そして花弁の位置からして、それは例えるなら人間の指のようである。


――上へ――。

よく見ると髪の一部はいつのまにやら一本の線となり上へ伸びている。先は水面に出ているようだ。


――上へ――。

そのマネキンらしきものの頭部は髪があり、髪の毛はこの水中で水草のように伸びて音もなく揺らめいていた。


――上へ――。

私の頭上には水死体のようなものが浮遊していた。水死体らしきものは生前の経歴があるかどうかが感じ取れない、霊素の残滓さえない。もしかすればただのマネキンかも知れない。それは浮かばず沈まず、無音のなか留まっている。


――上へ――。

私の意識は理解不能な言葉の濁流に押し返され、気が付いた時には水の中にいた。


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