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異世界を走る  作者: ユウキケンゴ
7/9

ランナー試験



 翌日です。テストは半日程かけてやるものと言われたのでお姉さん、シャイナさんにお薦めされた宿に泊まりました。


 さすがシャイナさんと言うべきか薦められた宿の名前が『宿泊所夜の蝶』だった時はどうしようかと思ったけれど、名前に反して宿の方は至極まともでした。

 

 宿の主がスキンヘッドに蝶の入れ墨を入れた体格の良いおじさんってことぐらいかな?変なのは。やっぱり少し変か。


 今は早朝。村の外でちょうどシャイナさんと合流した所です。


 「テストの内容はこれを指定のルートで運び目的地に届けることです」


 「たまご……ですか?」


 シャイナさんが手に持っていたのはごく普通のたまごだった。カゴに10個程入れてある。


 「これを割らずにギルドまで届けてもらいます。期限は長針2周までにお願いします」


 昨日シャイナさんに説明書を貰ったから分かるけれど、ここの時計の読み方は例えば北の刻で12時。1時、2時、3時になると北からひとつ、北からふたつ、東の刻といった感じで読みます。午前と午後は白と黒で呼び方を分けているみたい。理由は時計盤の色が変わるから。元の世界と違うのは呼び方だけだから慣れていかないとね。


 「運び方を工夫してもいいですか?梱包するとか」


 「構いませんよ。しかし現実的なものにしてくださいね。火を通したり卵自体に変化をもたらすようなものは認めません」


 「分かりました」


 シャイナさんに詳しくルートを聞く。どうやら山をぐるり回ってこないといけないらしい。ちゃんとルートを通らないとバレると言われました。


 これで2時間は走らないと結構キツいなあ。ランナーだし当たり前か。


 「それではただ今よりスタートです。頑張って下さい」


 そう言うとシャイナさんはどこかへと消えていった。


 今私は山ではなく夜の蝶へと戻って来ています。なぜってそれは……


 「おじさーん!今から生卵運ばないといけないんだけれど、なんか梱包するものなーい?」


 「なんだぁ?生卵って……ははーん、さてはランナー試験か。俺に聞いたのは正解だったな。ちょっと待ってろ。対面の緑屋根がランナー御用達の運搬道具専門店だ。今紹介状書いてるからな」


 宿のおじさんなら運ぶもの何か貸してくれるかと思ったんだけれど、そっか。


 「ランナー御用達……そんなのがあるんだ」


 「おうよ。ちなみにルートは?いつもの内容なら山をぐるっとコースな訳だが」


 「そうだよ。山をぐるっと長針2周以内」


 「長針2周以内か。ギリギリだろうけど頑張れよ!ほれ、紹介状だ」


 「ありがとうおじさん!行ってくる!」


 おじさんが書いてくれた紹介状を手に私は緑屋根の店を目指した。


 「……2周以内ってのは今までに無いくらいに厳しいな。試験管に嫌われでもしたのか、試されてるのか。さて……」


 そう呟くおじさんの顔はどことなく楽しそうで他の宿泊客を怖がらせていた。


 「こんにちは〜」


 店の中に入って辺りを見回すと、少し色黒な長身長髪の優男が出て来た。なんかサーファーとかに見える。エプロンしてるあたり海の家の接客?とかにも見えなくはない。


 「いらっしゃい。ここはランナー御用達専門店なんだけれど、大丈夫かい?君は?」


 「初めまして、シオンと言います。今ランナー試験の最中でして、生卵を運ぶ為の道具を探しています。あ、これ夜の蝶のおじさんに書いてもらった紹介状です」


 「ランナー試験か。大概うちに来ないで失敗していく新米さんが多いのに君はしっかりしてそうだ。うん、紹介状は読んだよ。ちょっと待っててくれ。」


 そう言って優男……は失礼か。お兄さんが店の奥に引っ込んで少しすると、ウエストポーチみたいなものを持って出て来た。


 「これはマジックアイテムでね。要領があれば何でも入れられるし、割れる事も無いよ。難点と言えば入り口が通るものでないと無理だから大きいのはまた考えないといけないね」


 「そんな便利なものが……おいくらですか?」


 「初来店記念にタダでいいよ。ただし、少し高価なものだから盗まれないようにね。今後ともうちを使ってくれれば、ね」


 おっと、太っ腹。


 「ありがとうございます。行って来ます!」


 「頑張っておいで〜!……夜の蝶、お代はこっちで持つからって大丈夫なのか?ちょっと顔出して聞いてみるか」


 山へ意識が向かっていたシオンは頑張っておいでという言葉しか耳に入ってはいなかった。


 ここは、村の外。山の入り口です。


 「ついにきた……フフフ、ついにきたのね……」


 念入りにポーチや中身を確認しながら軽い準備運動をする。


 「さあて、初めてはいつもドキドキだ……!」


 それもそのはず、今から普通に走ってもかなりギリギリの時間になってしまったので今まで封印して来たアレを使っていくからだ。


 「それでは、行ってみよう!『俊足』、発動!」


 発動を意識する為に足に意識を集中しつつ、言葉にしてみると段々身体が軽くなってきた。そんな気がするだけかな?


 「さあ、レッツゴー!」


 という掛け声と共に凄まじい勢いで走るシオンの姿がそこにあったと村の衛兵が後に語る。


お待たせいたしました。ほのぼの成分もう少し先なんで待ってて下さい。

感想やご意見等々もお待ちしております。

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