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異世界を走る  作者: ユウキケンゴ
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ギルド登録とギャル



 「さて……ここがギルドか。細分化されてないからとりあえずここに来れば良いって言うのは楽だなあ」


 道ゆく人にギルドの場所を尋ねながら今私はギルドの建物を眺めている。周りの公共施設よりも大きめで綺麗なのは多くの人が利用するからなのだろう。


 中に入って見ると屈強な戦士達が……こちらをニコニコと笑顔で見てきたり、商人のような出で立ちの若者や荒事には向かなさそうな女性の姿もある。


 この世界のギルドも昔は商業、冒険者などなどギルドが分かれていたらしいが、10年前にとある戦争をきっかけにしてひとつの組織になったとシーフォの人に聞いた。


 「受付は……と、ギャルだっけ?あれかな?」


 そんなに探さなくてもすぐにギャルと思われる人は見つかった。金髪の緩いうウェーブのかかった髪や受付のカウンターでしきりにマニキュアを塗った爪を気にする動作など、いかに服装がしっかり着ているOLルックだったとしてもギャル感は消えない。眼鏡をかけていても何かのプレイにしか思えない。

 

 彼女意外の受付はカウンターの前に長蛇の列が出来ていたが、彼女の前には誰も近づこうとしなかった。


 「あれか……」


 そう再度小さく呟いてから、私はメルリさんの言う通りに彼女のカウンターの前へ向かう。


 「こんにちは。私初めてでギルドの登録をしたいんですけれど」


 と、声をかけてみると意外そうな顔をしてギャルのお姉さんがこちらを向いた。と同時に爪を気にする動作を止め、綺麗にカウンターの向こうで姿勢を正す。


 「初めまして。私は当ギルドの受付をしていますシャイナと申します。当ギルドは初めてとのことですのでご案内の前にひとつご質問があります」


 「はい?なんですか?」


 「このままご案内をさせて頂くとあなたをこれから担当する人が私ということになります。もしお嫌でしたら再度他のカウンターに並び直されるのがよろしいかと思いますが私でよろしかったでしょうか?」


 と聞いてきた。しかしこちらはお姉さんを狙って来たんですよ。その心配は要らないのです。


 「はい。お姉さんが良いです」


 そう返すとお姉さんは1秒程固まった。


 「……失礼致しました。それではご案内の方をさせていただきます。お時間を頂きますが宜しいでしょうか?」


 「はい、宜しくお願いします」


 と答えつつ、見た目と仕事に対する姿勢のギャップをはやくも感じていた。真面目キャラじゃんどう見ても。


 「こちらへどうぞ」


 と、通されたのは個室のようだ。ここで説明してくれるらしい。促されるままに私は彼女と机を挟んで向かい合って椅子に座った。


 「まずはお名前をお伺いしてもよろしいですか?」


 「シオンです」


 「ではシオンさんと呼ばせていただきます。シオンさんはギルドについての認識はどの程度ありますか?」


 「ほとんど知らないです。職を紹介してくれる仲介屋さんって思ってます」


 「本当にザックリですが今はその認識で間違っていません。昔は冒険者や農業などで組織が分かれていたのですが、今はひとつのギルドとしてほとんどの業種のお仕事を紹介させていただいております」


 「とりあえずお仕事を探すならギルドに登録しなさいって村の人に言われていたのでここに来ました」


 「そうですか。村と言われますと……出身を訪ねてもよろしいですか?無理に答える必要はありません。ここに来る人は訳ありの人も多いですから」


 「シーフォから海を渡って来ました」


 「シーフォの村から?また珍しいですね。あそこの人は中々外に出たがらないのに……どのような仕事をお探しでしょうか?」


 「これから1年かけて魔術学院に歩いていこうと思うんですけど、その傍らで稼げる仕事が良いんですが……何かありませんか?」


 「このパヤの村から歩いて魔術学院にですか!?かなり遠いのですが地理などは理解されていますか?確かに不可能ではないですが……」


 「地理は実はあまり……でも脚には自信があります」


 「そうですか……とりあえずこれを腕に装着して下さい」


 そう言ってお姉さんが差し出して来たのはどう見ても時計だった。長針と短針はあるが、時計盤のほうに時刻を表す数字は記載されていない。


 「これは時間を見るマジックアイテムです。ギルドではこれを改造してギルドに所属している証としています。横にいくつか付いているつまみを……そう、その一番手前の方です。押し込んでみて下さい」


 お姉さんに言われるままにつまみを押し込むとホログラムのように空間に映像が表示された。これが私のギルド所属などを表示する画面みたい。私のセンスも表示されてる。やっぱり健康体は表示されていない。


 「俊足のセンスですか……脚に自信があるというのはこういうことですか。ならあなたにピッタリのお仕事があります」


 「本当ですか?」


 「一般的なお仕事ですよ。ギルドで依頼主からの依頼物を受け取り、依頼場所までそれを届ける運び屋……我々の間ではランナーと呼んでいます」


 「ランナーですか。でもそれは依頼の場所に行くことと私の目的とで方向が違うなんてことも……」


 「それは基本的に大丈夫です。まずは依頼主がギルドに依頼を出します。次にその依頼の中から受けたい依頼をランナー自身が選び依頼を受けます。そういった方式になっておりますので。他に質問はありますか?」


 「その方式だといつまで経っても目的地に着かない荷物が存在している気がするんですが……」


 「ランナー達にもプライドがあります。基本的にそういった荷物が存在しないようにランナー達で融通を利かせています。最悪の場合は我々の方でオーバーセンスに頼むこともあります」


 「おーばーせんす?」


 「知りませんか?我々ギルドは基本的に個人のセンスにあった職を紹介しています。オーバーセンスと呼ばれる彼らはセンス使いの中でもエキスパートであり、センスを用いて人間の限界を超えるそうです」


 そんな存在が居るんだ。センスで限界を超える、ねぇ。


 「要するにベテランに任せると」


 「そうです。大抵そこまで残ってしまったものは彼らのレベルでないと対処出来ないものが多いですから」


 聞く限りだと新米の私に無茶な依頼は来なさそうだね。安心した。


 「どうでしょうか?ランナー。やってみますか?」


 「はい!ランナーやってみたいです!」


 「それではテストしましょう」


 「はい?」


 どうやらすんなりとはいかないみたいです。


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