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七月のアークトゥルス。  作者: 乃咲昼
第一章
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わからない。

「ただいま。」


帰っても誰もいない。

まあ当たり前か。


無駄に広いこの家。

空き部屋は一体いくつあるんだろ。


「今日はうま塩味でいいか。」


買ってあったカップラーメンを手に台所へ向かう。


それにしても、さっきは変なものを見た。

やっぱり、イジメられて泣いてたんだろうか。でもあんなにけろっとしていたのに。俺達の前では笑っていても影で泣いていたりするのかもしれない。無論、俺自身には何の害もないし、気にしてなんていない。だけど、もう、アイツをターゲットにする意味が無くなってしまった。楽しくないし。


そんなことを考えていたら3分なんてあっという間に過ぎてしまった。


「うまいな。いつも通り。」


インスタント麺をすすって

俺は一人で、考え事をしていた。






「おはよ」



「あ!おはよう御座います!」


俺はいつも通り学校に行く。


俺の一番近くにいる堂島が、俺に挨拶をしてきた。


「あの、、夏野冬のことなんですけど」


「あぁ、もういいや。飽きちゃったし。やめよ。」


適当にそう言うと

堂島は口を濁した。


「何?何かあったの?」


「えっと、、それが。。」



堂島が口を開いて

俺に話し始めた。

「学校を辞めたみたいで。」


「学校を辞めた?」





「はい。突然。」



「それがどうしたんだよ。別にいいじゃねぇか。辞めたんだったら。俺らに耐え切れなかっただけだ。そういう奴はこの学校に必要ない」




「ですが、、」


「なんだよ。」



「楽しそうだったので。榊原さかきばらさん。」


「つまんなかった。だって泣かないし苦しんでくれないし。やりがい感じなかったわ。」



「でも。。」



「ハイハイ、もう終わり!」




俺は自分のクラスに着いた。

ちなみに特進クラスである。


「んじゃ。あ、そういや、今日合コン誘われてんだ。来いよ。」


「あ、はい。。」




「んじゃあな。」



俺は教室に入った。



「楽しそうだったんだけどな。。夏野さんと話してる榊原さかきばらさんの顔。。。」







『楽しそうだったので』



は?なんだよ。楽しそうって。何も楽しくねぇわ。

俺は席についた。


「榊原くん!」


「何?」


隣の席の関口。

この人は確かどこぞやの令嬢だったような。覚えてないけど。

いつも、俺に話しかけてくる。

ちなみに特進クラスの人たちは俺がイジメをしてることは知らない。

だけど、このクラスでも、俺は一番の地位を保っている。


「今日、お弁当作ってきたの。もし良かったら食べてくれないかな?」



「いいの?」



「うん!だって榊原くんのために作ったんだもの。」


「サンキュ。昼に食べるよ。」



これで昼に色々考え事せずに済む。



「榊原くん、テストでいつも1位で主席でしょ?どうやって勉強してるの?」


関口が聞いてきた。


「私も知りたい!」


「俺も!」



「いや、何もしてない。ストレスとか悩みがあった時に無我夢中になって勉強してたら、こうなった。」




「榊原くんにも悩みなんてあるんだ!」


「才能ゆえの悩みでしょ!」




そんなこと聞いてどうしたいんだよ。

面倒くさ。。


「悩みくらい、あるよ」


「えーほんとに!?」


ああ、

それはもう、数えきれない程にね。

あんたらには分かんないだろうけど。



「もういい?疲れた」


「うん。。」


俺は話を終わらせてうつ伏せになった


何だろ、このモヤモヤ感。

人の苦しい顔を見るのが俺にとって幸せなんじゃないのか?興奮するんじゃないのか?

あの夏野とかいうやつが、

夜の公園で叫び泣いているのを見てから

学校を辞めたと聞かされてから

 


俺は何も見ても、


何も感じなくなってしまった。


何だ俺。何なんだ。。。





分からない。



分からない。。。




誰か、この感情の正体を教えてくれないか。



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