第2話 「他愛ない日常」
今日も俺は、楽しく自宅警備をしている。
ついさっきまではフィリアと楽しく遊んでいたが、少し疲れてしまった為に、契約精霊達にフィリアの遊び相手を押し付けて俺は休憩中だ。
一匹の契約精霊以外は、フィリアの遊び相手になっていることだろう。
一匹以外とは言っても、全部の契約精霊が常に姿を見せているわけではない為、フィリアの遊び相手になっているのは数十匹程度だ。
「なあ、精霊王ってどんなやつ?」
《母親とでもいいましょうか。優しいかたです》
と、精霊。
今回、俺の会話相手になってくれている精霊は、いつものお調子者の精霊とは違って、大人しくゆったりとした精霊だ。
「会えたりしないのか?」
《うーん。マスターならば、会えなくないかもしれませんが、少し難しいですね》
「そうか。でも、いつの日か会ってみたいな」
目の前にいる精霊もそうだが、他の精霊達も一様に幻想的にまで可愛い。
だとすると、精霊王も絶対に美しく可愛いらしいはずだ。いつの日になるかわからないが、精霊王に会える日が待ち遠しい。
もし会えたら、絶対に精霊王の胸元に飛び込んでやるんだ。
《マスター、変なこと考えてますね》
じとーっと、ジト目で精霊が俺を見る。
その姿が反則級に可愛すぎて、思わず、
《マ、マスター⁈》
抱きしめていた。それはもう、精霊の柔らかな肢体の感触を愉しむように、ぎゅうっと抱きしめた。
「ったく、可愛いなー! どうしてそんなに可愛いんだよ、お前ら精霊ってやつは」
《 く、苦しいですよぉ、マスター》
「可愛いすぎるお前がいけないんだぞ! ったく、俺はロリコンじゃないってのによ」
《マスター、そろそろ離してくらはいー》
「何言ってんだ。もう二時間は、絶対に離してやらないからな!」
《ま、マスター! うしろ! うしろ!》
「うしろ?」
俺が背後を振り向くと、そこには鬼がいた。
正確には、紅く揺らめく魔力を身体から放出している、鬼の形相をしたニアがいた。
いや、訂正しよう。
鬼となったニアがいた。
「ず、随分とお早いお帰りで…………」
「おい、ロリコン。なぁにしてるのかなぁあ?」
「え、えええっと、精霊を抱きしめていました。いや、合意の上だよ! ちゃんと合意したよ!」
《いえ、してないです。無理矢理抱きしめられました》
そこは、合意したって言おうよ!
というかそう言ってよ!
君のマスター、死んじゃういますよ⁈
「さて、レイジ。何か言い残すことはある?」
どうせ何を言っても、右ストレートが飛んでくることだろう。
ならここは、せめて強気でいくか。
「嫉妬させて……、ごめんな」
その一言を発した瞬間。
俺の意識は、闇の中に葬られた。