第1話 「俺、幸せです」
「それじゃあ、学園行ってくるから。フィリアの面倒、ちゃんと見なさいよー!」
「わかってるよ、ニア。まあ、俺が面倒みずとも、他の精霊達が見てくれるし。安心しろよな」
「絶対だからね!」
ニアはそう残して、玄関を飛び出した。
一時間目が始まるまで、あと一○分。遅刻しないといいが。まあ、ニアにかぎって遅刻することはないか。
「ん? レイジは今日も学園いかないのかー?」
いつの間にか、小麦色の肌が健康的な美幼女、フィリアが隣に立っていた。頭には、ちっこくて可愛らしい精霊を乗っけている。
「引き篭もりみたいに言うなよ。所謂、ドクターストップってやつだ」
「ふーん。まあ、なんでもいいや」
と、心底興味なさそうに言うと、フィリアは他の精霊達を連れてどっかいった。
「俺の契約精霊なんだけどな……。ま、仲良いのはいいことだけどな」
黒龍が街を襲ってから、もう一カ月が経つ。
あの戦いで深手を負った俺は、退院した今では自宅療養ということで、家でゴロゴロしている。
することなくて、本当にゴロゴロしている。
フィリアと遊ぼうと思っても、なんか俺の契約精霊達がフィリアを独占してる。
少し寂しい。
仕方なく最近では、フィリアと遊んでる奴以外の契約精霊達との対話が、主な暇つぶしの手段となっている。
今だって、無数の契約精霊が、俺の周囲をふよふよ漂っている。
全ての契約精霊に、いちいち名前をつけるのも面倒臭くて、最近では色で判別している。
そのせいか、知ってる限りでは、「赤」と呼んでる奴が数十匹いる。
ただ、こんな現状であっても、
《やっはろーー! 最近何してます?》
一番付き合いの長い、この精霊だけは一目でわかってしまう。
まあ、一緒に風呂入ったり、ハグしたり、色々したから分かるのかもしれない。
「なんもしてないよ。だから、なんかして」
《やだよー! 言い出しっぺの、レイジがなにかしてよ》
「俺に何かできたら、こんな風に暇は持て余してないよ」
《褐色ロリと遊べばいいじゃん》
褐色ロリって。お前、フィリアのこと、そう呼んでるのかよ。
言っとくが、褐色ロリでは不十分だからな。
正確には、金髪褐色ロリ天使。
「フィリアは他の精霊達と遊んでるから、あんまり邪魔したくない」
《何言ってんの? まざって遊べばいいじゃん》
まざって遊ぶ?
フィリアを独占したい思いが強すぎて、その発想はなかった。
「お前、天才かよ。ちょっと、まぜてもらいに行ってくるわ!」
俺、十七歳、八雲 怜治。
こっちに来てから何やかんや、色んなことに巻き込まれたけど、
「おーい! 俺もまぜてくれよーーー!」
今、最高にハッピーです。




