-第7-魔法の子
そしてリナリアがロイの手を引っ張り90盤を歩く中
ロイはその手を振り払う事なく呆れた様子でリナリアに聴く
「で……見つかったのか?」
「見つかりません」
「……じゃあとっとと……」
「だから『全力』で探します、ちょっと待っててください」
「……ん?」
リナリアはロイの手を離すとイミィを呼び、自分の肩に乗せる
そして魔法の詠唱の言葉のような物を唱えていく……
その言葉は薄い緑色となりリナリアの周りをくるくると回り
そして……消えていく……そんな事を数分繰り返した後
リナリアの周りに薄い緑の衝撃波が起きるが音も衝撃もない
「……何をしていたんだ?」
「自分の魔力を90盤全体に放って、その魔法の子と共鳴するようにしたんです」
「共鳴って……リナリアが使っている魔法、魔力とは限らないだろ」
「ですね、だから今……周囲の魔力と共鳴したんです」
「……それで見つけられるのか?」
「少なからず……歩き廻るよりは確実ですね」
「そうか……」
リナリアが行った動作は『魔力共鳴現象』
自分の魔力を周囲にぶちまけ……その波長と合った者を場所を探す
もちろん、リナリア自身の魔力が探している者と同じならばすぐ見つけられる
しかし、違った場合……それを想定しリナリアは90盤に犇めく魔力と自分の
魔力を合わせ……共鳴させる事で探してる子の魔力を追ったのだ
『しかし……リナリアがこんな事もできるとは……さすが本の虫
いや魔女か? まぁ……こいつが敵じゃなくてよかったのはたしかだ』
ロイがそう思いながらリナリアが歩く方へ付いていく
しかし……どこにもそれらしき人影はなく……時間だけが過ぎていく
「いないんじゃないか?」
ロイが呆れた顔でリナリアにそういった時、リナリアがどこか遠くを見ながら
真面目な顔で『いますよ、大丈夫です』と答える
その表情にロイは頷き……リナリアが立っている場所を見ている
『……見つからないように動いているか……それともステルスか……
でもね……あなたが動いた後の魔力の後……それを辿ればいいの』
リナリアはもう一度イミィを呼び出し……先程とは別の魔法を唱え始める
その色は赤色……魔法文字はリナリアの周囲を回り……音もなく消える
するとどこから遠くの方で『パシン』と言う音だけが響く
「……さて、ロイ様いきましょうか」
「……今のは?」
「今の? ああ、今のも先程のと変わりませんよ
今度は探してる子の魔力がわかったのでその子の魔力に
私の魔力をぶつけ気絶させただけなので」
「……」
リナリアは笑顔でロイの質問に答える
リナリア自身、ただロイに質問され使った魔法の説明をしただけなのだが
ロイ背筋に冷や汗のような物が垂れる
『リナリア……お前は本当に魔王になれたんじゃないか?』
そして先程の音がした方向へ2人と1匹が歩くと空き家らしき家の中で
エルフのような耳をした子が茶色の布を着て倒れていた
それをリナリアが抱き起し……確認しロイに言う
「この子ですね、この子から先程の魔力と同じ感じがします」
「……エルフの子供だったのか?」
「いいえ、子供ではありませんね……見た目は子供ですが
中は大人……私と変わらないと思います」
リナリアを人間の年齢で例えるなら18から20ぐらい
ロイを人間で例えるなら23から25とされる
「……見つけられて満足したか?」
「……してません、衰弱してる様子ですし、どこかで休ませたいです」
「と言われても……俺は90盤に来たのは初めて……」
そこでロイは気付く
90盤について自分達よりも詳しい奴に……
「で、俺をここに呼び出して何をさせるんだ?」
リナリアによって呼び出されたヘイムはロイの顔を睨みながら言う
と言うより……先程の一件なのかヘイムはリナリアの顔を見ない
「まぁ、ちょっと拾い物をした、休ませる場所はないか?」
「あん? その……雑魚魔物をか?」
ヘイムがリナリアが抱きかかえてる子を見ると
先程のエルフの耳はなく、リナリアと同じ角、背中に羽はない
髪はロングで長くピンク色……
『俺達が探してる奴じゃないな、あいつにはエルフの耳がある』
「……わかった、リナリア様に免じて案内してやる
しかしだ、ロイ何時の間にリナリナ様に子供を産ませたんだ?」
「……俺の子に見えると?」
「ああ、リナリア様にそっくりじゃないか……」
ロイが睨むように後ろを歩いているリナリアの顔を見るとリナリアは無言で笑顔
をロイに浮かべる、その子はヘイムがおぶり歩いている……
おぶらせたのはリナリアから頼まれたのだから適当に扱えば命はない
そう思ってるからこそヘイムは真剣に背中の子をおんぶしている
『たしかに俺が幻術なり魔法で誤魔化せとはいったが……
まさか誤魔化した格好が自分の幼少時代とは……』
『いいじゃないですか、私とロイ様の子供で』
『人の心の中に話しかけるな』
『えーいいじゃないですかー、毎回毎回、あの本で私の中見てるんですから』
リナリアはロイが心の中で独り言のように喋った事を魔法で聴き取り
テレパシーのように話を続ける
その会話はヘイムには聴かれず、リナリア自身の魔力による物のため
ロイに害はなく……個々でやり取りできる電話のような物である
『……まぁ、誤魔化しは聴くが……けして自分の子とは言うなよ』
『……しかたないですね』
リナリアは溜息交じりにそういうとヘイムの隣に駆け寄り
背中の子の頭を撫でながらヘイムに言う
「この子は私の姉から預かってる子で
先程連絡があって1人先に来たせいか……迷子になったのよ」
「……なるほど、リーナ……いや、リナリア様のお姉様でしたか
あの人も結婚して子供を産んだのですね」
「……そうね」
『あの馬鹿姉が結婚できるわけないじゃない、お転婆で脳が筋肉みたいな人
あれが……ロイ様の婚約者ってだけで血反吐吐きたくなるわ』
リナリアは1人、唇を噛むような仕草をしながら歩く
そしてヘイムが宿屋をロイ達に紹介し部屋で子を降ろすとどこかへ行ってしまう
するとロイは部屋あるベットと1つだけある椅子に座る
その部屋はベットと1つの椅子だけの狭い部屋
泊まるわけではないのだから……別に狭くても構わないだが……
「で、リナリアの姉の子なのか」
「……まさか、あの馬鹿姉が子供なんて産めるわけないですよ」
「相変わらずお前は……リーナの事が嫌いなんだな」
「ええ、嫌いです、勇者の100倍は嫌いな奴ですよ」
「実の姉だと言うのに……随分と嫌われてるな、リーナ」
「ええ、そうね」
ロイの言葉にリナリアが後ろを振り向くと部屋の扉に
リナリアの顔と瓜二つ、だが角はなく……背中の羽は5枚
黒いドレスに赤いハイヒール……赤色のロング
「リーナ……」
「久しぶり、リナリア……元気してた?」
「どうしてここに?」
「暇潰しと言うか、私の愛しのロイ君が90盤に上がったという話を聴いてね
いてもたってもいられなくなっちゃのよ」
「……たしか現魔王の部下じゃなかった?」
「あー……あの魔王、ロイ君の事馬鹿にしたから軽くぶん殴ってきた」
そんな事を言いながら
リーナはベットの端に座り微笑みながらロイとリナリアを見る




