-第42-迷宮、その先は
少し時間を戻し、リーナがスペクトラ相手に魔法を放つ所に時間は戻る
「ロイ様……あれは……」
「ああ、詠唱は最初だけで、後は何も言ってないな」
「無詠……リーナがあんな事できるなんて」
「できるだろう、リナリア……お前だって『力』はあるはずだ」
「……闘技場でやったと言われたあれですよね? 記憶にないですが……」
「きっとお前に力を与えてくれたはずだ」
「そうなのでしょうか……でも」
リーナとスペクトラの戦いの最中だと言うのにリナリアはモジモジとしながら
ロイの顔を上目づかいで見る、それに疑問の眼で見るロイを余所に
ミミリアはロイの後ろで服を片手で掴みながら怯えている
それを慰めるためなのかイミィがミミリアの肩に乗っている
「どうした?」
「力が強い女の子って……好きですか? 腕は太くならないと思いますけど」
「いいんじゃないか? 俺が魔王になった時、側近は強い方がいいからな」
「は、はい!」
その笑顔は満面の笑み、だが……その笑顔は一瞬にして失われる
笑顔でリーナの方を見ると……空中から隕石が落ちてくる
「ぇ」
「……あいつ、全力をだしたな? まぁ……逃げれもしないしこのままだな」
「え、え……ロイ様、私の後ろに隠れてください、防ぎます」
「無理だろ……」
「頑張ります!」
そして隕石……メテオ・ストライクが落ちた直後
その衝撃による風圧がロイ達を襲った
「っ……あれ?」
「……風だけだな、これぐらいなら問題ない」
「もぅ……リーナってば」
そして隕石が残る中、リナリアの緊張が解けたのか
今まで心配していた物が抜け、リーナに駆け寄る
それに微笑みながらリナリアの後ろを歩いていく
「リーナ……大丈夫?」
「大丈夫、問題ないわ」
「本当に?」
「ええ、この通り元気よ」
「だって……殴られたのに……?」
「魔法による治癒だろ、流石だな」
「えへへ、私が魔法を使えるようになったからリナリアはいらないわね」
「なっ?! 私だって接近戦ぐらいできるわよっ!」
「そう? じゃあ今度やってみましょ、姉妹同士ね」
「……リーナ?」
「何よ?」
「なんでもない」
リナリアの前で微笑んでいるリーナだが
今までのリーナではなく、どこか何かが抜けてスッキリしている感じがした
リナリアはそれを少しだけ気にして黙っているとロイがリーナに話かける
「で、スペクトラはどうなった?」
「んー無事じゃない? 一応……当てたけど多分その内
あれをどかして、起き上ってくるはず……ほら」
リーナが指さすと隕石は真っ二つに割れ凄く音を響かせると
スペクトラがその下から姿を現す、しかし傷はなく微笑んでいるおり
微笑みながらロイに近づくとリナリアは警戒する
「ね、ロイ様」
「なんだ?」
「楽しかったから上に行っていいよ」
「そうか……楽しかったか」
「うん、満足……だから、また遊びに来てね」
「ああ、そのうちな」
「うんっ!」
それだけ話すとロイはスペクトラに背中を向け歩き出す
その後ろを歩きながらリナリアが警戒するが、それをリーナが止める
「大丈夫よ」
「え?」
「あの子にもう殺気はない、自分が気を失ったからいいんでしょ」
「……そうなの?」
「じゃない?」
リーナは相変わらず適当に言うとリナリアの隣を歩く
それを横眼で見ながらリナリアはエレベーターに入る
そしてエレベーターに乗ると、スペクトラは両手を笑顔で振ってくる
それにロイは軽く手をあげ、リーナは手を振り返す
すると、エレベーターが閉まり、上に上がっていく
「緊張感がない……」
「あるわよ、まぁ次は10盤……何があるのかしら」
「さぁな」
そしてエレベーターが止まり、扉が開くと目の前は迷路のようになっていた
しかし、道が入り組んでいるのがわかり、道幅も狭い
「ここは……」
「うん、魔王城の地下」
今まで怯えていたミミリアが口を開く
「魔王城の地下って迷路だっけ……」
「現魔王が敵と見なすと地下は迷路になって侵入者を迷わすの」
「……じゃあ魔法を使って楽にいきま……あれ?」
「ここは魔法は使えないよ、もちろん壁を壊すこともできない」
「……糞ね」
リーナの愚痴を聴きながら迷路を中を歩いていくと
道が分かれている、そのどっちを見ても先は真っ黒である
「どっちかが行き止まりで、どっちが正解ね」
「ここはロイ様にまかせます」
ロイ以外の面々はロイの顔を見てどっちを選ぶか待っている
そんなロイは両腕を組み、考え込む
『左か……それとも右か……ここは感だな』
「右だ」
その言葉に従い、ロイ達は道を歩いていくとある部屋に辿り着く
そこには人が入るぐらいの試験管が数十と並んでいる
その1つを見てリナリアは驚く
「これって……魔物?」
「みたいね、どうやら強化? 実験する部屋ね」
「……違うよ、この中の液体は私達の魔力」
それは前にミミリアから聴いた実験の話
その実験の場所がここだと証明する言葉
そして、もう1つ……
「ここにあったのね」
「リナリア? それを知ってるの?」
部屋の端っこに埃を被っている大きな円状の球体
それに触りながらリナリアは懐かい声をあげる
「これが前に言ってたロイ様の魔力を私にくれる物」
「……これが、でもどうして現魔王はこれを壊さなかったのかしら」
「一応プロテクトをかけて置いたから……多分破壊できなくて放置したのよ」
その言葉の直後、白い服を来た男の悪魔が眼に賭けている眼鏡を取り
拭きながら微笑み、ロイの前に現れる
「これはこれは……実験台と美しい女性2人……フェアリーらしき物と
塵みたいな男が1人か……その人物達がここに何の用かな?」




