-第34-30盤
そしてエレベーターが止まり、扉が開いた時
目の前には……森林が存在していた
それに驚きを隠せない面々はエレベーターから降り、辺りを見回す
しかし、森林に住む小鳥達の声以外何も聴こえない
「……はぁ、やっぱり」
「リーナ? 何か知ってるの?」
「え、ええ……まぁ」
リーナの歯切れの悪い解答にリナリアが首を傾げていると
誰の気配もしない森林の中から4枚羽の男悪魔が姿を現す
すると、リーナを見ると笑顔で抱きしめ飛び込んでくる
それをリーナは横に交わすとその男悪魔は地面にダイビングする
「……なんだこいつ?」
ロイは地面に顔を伏したままの男を見ながらリーナに尋ねると
リーナは『知らない』と言い、その男の方を見ようとしない
すると、男性は勢いよく起き上りリーナの左手を両手で掴むと言う
「何を言ってるんだ?! 僕は君の許嫁じゃないか!」
「……え?」
その言葉にリーナ以外の面々は唖然とした声をあげるが
リーナだけはその手を振り払い右手でおでこに当て嫌な表情をしている
それに気づいたリナリアが男悪魔に話かける
「あの……あなたは誰なんですか?」
「君こそ何者だ?」
「……私はリナリア・ミル、一応そこのリーナの妹です」
「なんと! これはこれはリーナがいつもお世話になっている」
男性はリナリアの両手を取り笑顔を浮かべるがリナリアはそれに
お世辞とも言える笑顔1つ浮かべず、汚物を見るようにその手を振り払い言う
「あなたは誰なんですか?」
「おっと……これは失礼した、僕の名前は『フィンラッド・ステイラ』」
「ステイラ……聴いた事ないですね」
「そうかい? 一応上級貴族では有名なんだけど、君はどこ出身だい?」
「100盤ですが」
「ぷ……ははは、100盤かそうか、リーナの妹は落ちこぼれかっ」
リナリアのその言葉に頭を抱え笑い出すフィンラッドに逸早く反応したのは
リーナ、それも誰よりも速く……フィンラッドの首を右手で掴んでいる
それを驚いた表情で見ながらリーナに言う
「なんのつもりかな?」
「……私の妹を侮辱するようならここで殺すわよ」
「侮辱も何も100盤なんて塵のはきだ……」
「侮辱するなって言ってるの聴こえないわけ?」
フィンラッドが言葉を発するよりも速く
リーナは首を絞める手に力を込める
だが、フィンラッドは表情一つ変えずにリーナの手から逃れると笑顔で言う
「これは失礼した、仮にも君の妹さんだ
塵の掃き溜めから来た子だろうと歓迎するが……そこの男はなんだ?」
「俺はロイ、ロイ・ファルクだ」
「ロイ? それで、君はどこから?」
「同じく100盤だ」
ロイの言葉を聴いた瞬間、フィンラッドは殺意を纏いロイの懐に入ろうとする
しかし、ロイの目の前にリナリアとリーナが体を差し出し
フィンラッドの腕を2人で掴んでいる
「なんのまねかな?」
「私のロイ君に手をだすのはやめてくれない?」
「私のロイ様に手をだすのならここで潰します」
2人の女性は殺意を込めた瞳でフィンラッドを睨む
しかし、ミミリアのみロイの後ろで表情1つ変えずにフィンラッドを見ている
その視線に気づいたフィンラッドはミミリアの顔を見ると笑顔で言う
「おっと、これはこれは……あの時の実験台じゃないか」
「……」
「だんまりか、あの時の実験で言葉すら喋れなくなったか
実に面白くない、所詮はエルフだな」
フィンラッドのその言葉にロイ達は無言でミミリアの言葉を思い出す
『逃げて来た』と言う言葉を、魔力を供給するための物扱い
それをしていたような口ぶりでフィンラッドは言う
それが本当かどうかリーナは口を開く
「ねぇ、実験台ってエルフから魔力を奪うってやつ?」
「そうそう、さすが僕の許嫁、いつかお嫁さんになるだけある」
「そんな御託はいいから教えて」
リーナは掴んでいる手に力を込めるとフィンラッドは笑顔で言う
「いいよ、あの子は供給実験体でね、なかなか魔力で
上位悪魔達は喜んでいたよ、けど逃げ出して探して貰っていた所なんだ
それをリーナが見つけてくれるとは実に嬉しいよ」
そう言うとリーナとリナリアの掴んでいた手をいとも簡単に抜けると
ミミリアの前に立ち頭を撫でるのではなく掴もうとする
その時、小さな声で言ったのをロイは聞き逃さなかった
「次逃げたら晒し首だよ」
その言葉に怯えているミミリアが動けないでいると
フィンラッドは頭を掴み持ち上げた直後
後ろから殺意を感じミミリアから手を離し、フィンラッドは前に飛び退く
「……首を狙ったな、雑魚悪魔」
「ああ、狙った……流石に仕留められなかったがな」
「ふん……僕を狙った事後悔するがいい」
フィンラッドがロイに振り向いた時
その表情は先程の笑顔ではなく、鬼のような形相している
しかし、そんなフィンラッドを余所に
ロイは持っている透明槍を構えながらリーナに離しかける
「……許嫁を殺してもいいか?」
「ええ、遠慮なく」
その時のリーナは両腕を組み、満面の笑みでロイの質問に答える
その横でリナリアもフィンラッドに殺意全開の状態で頷く
「……わかった、全開で行く」
「全開だと? 100盤の虫けらが一撃が終わらせてやる」




