-第31-決勝戦
先程、ロイ達が勝った事により闘技場の外は
さらに殺伐とし怒号が響き渡るがそんな声を気にせず
ロイとリナリアは屈伸したりと準備運動をしながら2人は会話をしている
「次で終わりですね、ロイ様」
「ああ、そうだな」
「こんなことにその本を使いたくはなかったんですけど……」
「まぁ……使わなきゃ上に行けないのなら使うだけだ」
そう言いながらロイは手に持っている『ブック・オブ・グリアス』を
ペラペラと捲り……白紙のページの枚数を眼で確認する
その時、ロイ達の反対側から男女が闘技場に入場してくる
「……ロイ様」
「……まさか4枚羽2人とは」
ロイ達の前に現れたのは背中に4枚羽を羽ばたかせ余裕の表情を浮かべている
しかし……ロイではなくリナリアの顔を見た女性が
少し怯えた表情をしながら口を開く
「……ま、まさかリナリア・ミル?」
「ええ、そうだけど?」
「なんだ? 知ってるのか?」
相手の男性が女性の顔を見ながら話しかけると女性は男性に怒鳴りつける
「あのリナリアよ?! 現魔王が気にいってる悪魔よ!」
「ああ、そんな事言ってたな」
「……でも同じ4枚だし、凄そうな様子はないんだけど」
女性はリナリアの方を見ると上から下まで見る
その外見は『自分』よりも若干可愛いのと胸が少し大きいぐらい
身長はこっちが上で、腕を見る限りに細い
『……私の方が凄いんじゃない?』
「で、向こうの男は知ってるのか?」
「は? 誰あれ、おまけかなんか?」
その女性の言葉に闘技場の中は一瞬で殺気に包まれる
その殺気を目の前で感じた2人は慌てて臨戦態勢に入りながら
殺気のする方向へと眼をやると……
そこには2人を睨み付け、凝視しながら殺気を全開のリナリアが腕を組んでいる
「ロイ様」
「……なんだ?」
「……ロイ様は止めだけでいいです、まかせてください」
「いや、流石にここは俺が頑張るとするよ」
「え?」
リナリアはロイの言葉に驚きロイの顔の見ると笑顔で頷く
その表情に少しだけ顔を赤らめさせたリナリアは横に退く
そしてロイは本を開き、リナリアの1歩前にでる
するとそこまで確認した司会者の男性はタイミングよく声をあげる
「さて、場は暖まったようだ! 決勝戦始め!」
それと同時に相手の男性はどこからか剣を2本両手で構えるとロイに走る
だが、ロイはそこから1歩も動かず……詠唱を始める
『……魔法使いか? ならば詠唱を始める前に叩きつぶす』
さらに走る速度を上げ、ロイとの距離を詰める男性にリナリアは動かない
女性に動きを止められている訳でもなく、ただ両目を瞑っている
「もらったっ!」
その言葉の直後、吹き飛ばされていたのは相手の男性
ロイは平然とした顔で持っているハルバードをくるくると回している
「……なっ、それ私の武器……」
それを見た女性は慌てて自分の手元を見るがハルバードがしっかりと握られている
「どういう事……?」
「……わからないが、あの魔法……お前のバーストだぞ?」
吹き飛ばされた男性が立ち上がり女性に話かける
『バースト』
火属性の魔法の1つ、自分の周囲に爆発を起こす魔法
距離は狭く、接近する相手に対応する技
しかし、その使い方は難しく……覚える者はいても使う者はいない
「あんな魔法使う奴がいるなんて……」
『次はこれか……』
ロイは話をしている男性と女性目がけハルバードを投げる
それを間一髪2人が避けると壁に突き刺さる
それを確認した2人は何も持っていないロイに接近する
しかし、ロイは冷静に拳を構える
『……大体は把握した、あとは……』
女性のハルバードを右手の掌底で弾き
体を左に屈めながら男性の足にめがけ足を払う
だが、それを男性は予測していたのか上に避け、剣を構えるとロイに斬りかかる
しかし、その剣がロイに届くことはない
「……私も一応剣や槍は使えますので」
その剣を受け止めたのは右手にショートソード
左手には小型のパイクを持ったリナリアがロイの前に立ち攻撃を止めている
「ちっ……」
それに舌打ちをしながら男性は後ろに飛び退く
するとリナリアが武器を構え直し、後ろを振り向く事なくロイに話かける
「……もう知ってますよね?」
「ああ、知っている……お前はほんといろいろできるな」
「……そんな事ないですよ、ロイ様に近づくために努力しただけです」
「じゃあその努力、少しだけ借りるぞ」
「はいっ」
ロイの言葉の前を向きながら笑顔で頷くとロイの手元に同じ武器
ショートソードとパイクが現れるが、その色は薄い蒼色の透明な武器
「なんなんだよ、あいつら……」
「さぁね、まぁ……私達も全力をだすよ、援護して」
「了解だ」
女性は何かの魔法を詠唱をし始めると、その前に男性が立ち武器を構える
左右から突撃してくるロイとリナリアに立ち向かう
「悪いが……後ろには行かせない」




