-第28-闘技場
「よくあいつに勝てたね」
エレベーターの中でミミリアは戻って来てから無言のリーナに話かける
しかし、リーナに言葉が届いていないのか無言を貫いている
『……あのロミアル、どこまで私の事を知ってるのよ
図書館の管理と言っても……人の事情までわからないでしょ』
「ねぇ」
『でも……5枚羽よね? それなら多少は知っていても……』
「……何こいつ、耳がないわけ?」
ミミリアは何度リーナに話かけても無視されるため
両手を左右に開き、今度はリナリアの肩にいるイミィに話かける
「で……君は今まで何をしてたの?」
「この子は動き続ける事ができないのよ
体が小さい分、自分を動かす魔力の減りが激しくて」
「じゃあ今はただの人形って事?」
「そうね、カジノに入って魔法が使えなくなった影響で
その能力がほとんど使い物にならなくなっちゃったから」
リナリアはどこか寂しそうにイミィを優しく触る
それを見ながらミミリアは『ふーん』を興味のない素振りをする
そんな空気の中、ロイは1人ある本を読んでいる
それに気づいたリナリアがロイの読んでいる本を表紙を覗き込むと慌てる
「ロイ様っ?!」
「ん? どうした?」
「ど、どうしてその本を?」
「暇な時にリナリアの魔空間を漁っていたら見つけてな」
その本の表紙は『魔法及び、人間が魔法を使える理由』
と手書きで書かれており、内部も全て手書きである
「か、返してくれません?」
「まだ読み終わってない」
「ロイ様には必要ないと思いますよ?」
「……そうか? 興味深い内容もあるぞ?」
「で、でも……」
「ねぇ、リナリア、どうして慌ててるの?」
リナリアとロイの会話に横から割り込むようにミミリアが首を突っ込む
それを睨むようにリナリアは『なんでもないわ』と言う
しかし、先程の慌てぶりが気になり、ミミリアはロイに話かける
「ちょっと、本見して、すぐ終わるから」
「ん? ああ、いいぞ」
ロイはミミリアに本を渡すと、直ぐに裏表紙を見る
しかし、そこには何も書かれていない
すると次は裏からページを捲り……『それ』を見つける
「やっぱり……この本、リナリアの手作りなんだ」
「……」
それを聴いたリナリアは黙り、どこか恥ずかしそうに横を向いている
しかしロイはその本をミミリアから奪い取ると微笑むように言う
「リナリアが書いたのか、だから読みやすいんだな」
「そうなの?」
「ああ、最後まで読ませてもらう」
「え?! ロイ様……返してください」
そんなやり取りを余所にエレベーターが止まる
そして扉が開くと目の前には悪魔混みが現れる
「……なるほど、やっぱり闘技場か」
今まで黙っていたリーナが口を開け、エレベーターから降りていく
それに合わせ、ロイ達もエレベーターから降りると
1人のバニーガールの格好をした女悪魔に話かけられる
「あら、いらっしゃい、挑戦者? それとも賭ける側?」
「上に行きたいのだけど」
「ああ、それなら挑戦者ね、ペアバトルで1番になれば上にいけるわよ」
「ペアバトル?」
「そ、ここのメインは男女でペアバトル
種族問わず、誰とでも好きな人とペアを組む事ができる
ただし……あの闘技場から外に出て攻撃する事は禁止」
バニーガールの悪魔が指さした先は中央にある闘技場
その形は長方形、しかも中心以外囲まれており
その広さは実際の長方形よりも狭い
「対戦者の数は日によって違うけど
今日は……10組ぐらいかな」
「って事は6戦すれば優勝って事?」
「そうね」
リーナとバニーガールの話を横で聴いていたリナリアが
笑顔でロイの腕を両手で掴み話かける
「ロイ様っ、一緒にでましょ?」
「……男女ペアらしいから、俺がでるしかないのか」
ロイ以外に男性はいなく、ロイは固定と言う事になる
だが、そんなリナリアにミミリアが騒ぐ
「なんで? 私がでてもいいでしょ?」
「だめよ、ここはあなたより強い私の出番」
「そうね、私はさっきのロミアルとの戦いで
疲れちゃったから、ここはリナリアにまかせるわよ」
「……むぅ」
「何? もう出る選手決めたの?」
バニーガールの女悪魔がロイ達に笑顔で話かける
それにリナリアは笑顔で『はいっ』と答える
「……そっか、じゃあ、そこで受付するといいわよ」
バニーガールが指さした場所にロイとリナリアが行くと
椅子に座っている悪魔が笑顔でロイ達に言う
「出場者ですね? 優勝者には上の階へ
それ以外、負けた方はここで強制労働です」
「……なるほど」
それにロイが頷くと受付の悪魔が説明を始める
「相手は反対側の入口から来ます、それを倒してください
倒すと言っても、気を失わせたりすればいいだけなので
殺さないように注意してください、それ以外は何でもありです」
「……了解」
「はい」
そしてロイとリナリアが中に入ると反対側から
2人の男女悪魔が姿を現す




