-第27-ロミアルの正体-
「あら、誰もこないの?」
ロミアルは羽ばたいた位置で静止するとリナリアから受け取った本を開く
しかし、どの本もロミアルにとって興味がない
その本を少し覗くとすぐ空間に放り投げ、小さな声で『つまんない』と言う
だが、そこでリーナがある事に気づき
エレベーターの中から外に出ようとするとリナリアに止められる
「リーナ?! だめよ……もし外に出たら……死ぬかも」
「大丈夫よ、まぁ……見てなさい、ロイ君いいわよね?」
「ああ、いいぞ」
「ロイ様?!」
リナリアの驚いた声を余所にロイはリーナの言葉に頷く
すると少し微笑んだ後、リーナは空間に1歩踏み込む
「踏み込んだわよ?」
「……たしかに」
リーナは羽ばたいたまま空間に出た
それはロミアルも行ってる行動で、それと同じ行動をしたに過ぎない
「でも、正解でしょ?」
「そうね、歩けないのなら飛べばいい
それは正解、じゃあ……私に触れて御覧なさい」
メイド服から出た羽は5枚羽
リナリアよりも1枚多く、リーナもそれと同じ4枚
純粋な勝負ならリーナの負けは決まっている
「ねぇ、それはなんでもいいから、触れればいいわけ?」
「そうね、武器でもなんでもいいわよ、私はガードとかしないから
ただ、殺気丸出しの攻撃とか魔法は無理よ? 簡単に避けちゃうから」
ロミアルは笑顔でそう言いリーナに背中を見せ
飛び立とうとした時……リーナの顔を見ず、ロミアルは言う
「じゃ、スタート」
そう言った瞬間、ロミアルは頭上に飛び上がる
しかし……リーナはその場から動かず、何かを持ち振りかぶっている
そして、それをロミアルめがけ投げる
すると、それはロミアルの後頭部に綺麗に当たる
「いったぁ……」
ロミアルは後ろを振り向き投げられた物を拾う
すると、そこにはこう書かれていた
『悪魔でもわかる恋愛の仕方』
「私がさっき貰った本……」
「ええ、そうね……殺気丸出しでもなく、魔法でもない
ただの『物』、それ自体に何もないわよ」
「……私が投げた本を使ったのね」
「使っちゃいけないってルールはなかったわよ?」
「たしかに……でも、さすがに本の角は痛いわよ?!」
「それはそれは……運がなかったわね」
リーナはロミアルを見ながら嫌らしく微笑む
その表情は明らかに『本の角』を狙って当てたと言う顔
それに気づいたロミアルは食ってかかろうとしたが
溜息を付き……真面目な顔で言う
「まぁ、負けは負けだし、上に言っていいわよ
ただし、50盤は40盤と合体しちゃって闘技場になってるから」
「合体って……なんでもありね」
「そりゃあ、魔空間だもの
元さえあれば、中は簡単に壊せるわよ」
「元……?」
「そ、元は基板って事、盤と言われてるのがそれなんだけど
その盤に住めるようにご先祖様が作ったのよ」
「ふーん……で、どうして答えてくれるわけ?」
「私に勝ったらよ、気になった事があったらいくらでもどうぞ」
ロミアルは両手を開き笑顔でそう言う
それに対し、リーナは両腕を組み、睨むように言う
「じゃあ、どうして……現魔王は盤の中を壊してるの?」
「さぁ? 気に入らないからじゃない?」
「そんな簡単な理由で仲間を殺してるのね」
「仲間ねぇ……悪魔に元々仲間意識なんてないわよ
あなた達のほうが珍しいわよ、元魔王に女悪魔が2人とエルフが1人」
「……ロイ君の悪魔柄ね」
「ロイ・ファルク、魔王の中で最も野心がなく研究好き
その姿は女悪魔からは人気があり、男悪魔からは人気がない
結果……勇者に敗れたロイ・ファルクを擁護よる者は1人しかいなかった」
「その1人はリナリアね」
「リナリア・ミル、生まれ育ち不明……ロイ・ファルクが魔王になった時
そのサポートをした1人、その才能は優れ……ロイの部下の中でも
飛び抜けていた、しかし『性格』に難があり、人気はない」
「随分と詳しいのね」
「そりゃあ、魔王城の図書館を管理しているのだから
まぁ……管理するようになったのはロイが魔王をクビになる直前だけどね」
「……だから、ロイ君を知っていたのね」
「もちろん、あなたも知ってるわよ、リーナ・ミル」
「……悪いけど、私の話はしないでくれる?」
「あら、残念」
「あ、最後に1つだけ」
「何かしら?」
リーナの質問にロミアルは笑顔で聞き返す
しかし、リーナは後ろを向き……ロミアルの顔を見ず聴く
「どうしてリナリアの本を捨てたの?」
「あー、だってあれ書いたの私だもの」
「なるほど……自分で書いたものを見たくないわよね」
「そーいう事、あ、そうそう……私との話は他の人にしないようにね」
「わかってるわ」
「では、また会いましょう……リーナ・ミル」
それだけ言うとロミアルは空間の中に消える
それを見る事なくリーナは皆が待つエレベーターに戻る




