-第20-サキュバスの誘惑
「で……どうするの? あの子からコイン貰ったけど」
「合わせて4枚……何枚集めればいいのかしら?」
「そうねぇ、じゃあ10.000枚でいいわよ」
その声のする方向にリナリアが顔を向けると
そこには入口で出会ったサキュバスが立っていた
「あなた……ロイ様の所にいたんじゃ……」
「いたわよ? でも、あの子、女体化しちゃったから
ここに遊びに来たってわけ」
「女体化……?」
「……ロイ君はいいとして、なんであんたが枚数決めてるの?」
首を傾げてるのを余所にリーナは腕を組みながら
サキュバスを睨み言う
「だって私がここ70盤の門番だから」
「なんとなく察しはついてました」
サキュバスの言葉と同時にリーナの後ろのリナリアが微笑みながら言う
それに眉を少し動かしたサキュバスは微笑みながら言う
「実はわからなかったのに、実は知ってましたーみたいな言い訳よね?」
「……というか、エレベーターの前に立っているのがおかしいのよ」
「誰もいなかったしね」
「……じゃあ、何? 知っていて私の経営するカジノに首を突っ込んだの?」
「そうよ?」
「ですね」
「は? それはどうして?」
「先に行きたいから……と言ってもロイ君が行きたいって言うからしかたなく」
「私はロイ様のために、ここは女性のみのようですからね」
「呆れた……普通は私利私欲のためにカジノに来るでしょ?」
サキュバスは両手を左右に広げ
呆れた顔で2人を見ると、2人は同時に首を傾げ、同時に言う
『なんで?』
その言葉に少し驚いた表情でサキュバスは言う
「だ、だって……カジノで大金持ちになるとか、景品貰いたいとか
娯楽になるでしょ? あんた達にはそう言う欲ないの?」
「欲? 私はロイ様が夫になってくれればそれで……」
「私は……そうね、あ……あったわよ、ここに対する欲」
リナリアとは裏腹にリーナは両手を広げサキュバスにアピールする
それに笑顔でサキュバスは『何かしら?』と舌で唇をなめる
「次の階層までのコイン、たしか……10.000枚だっけ?
またはーここで魔法を使えるようにしてほしいとか」
「魔法を使えるようにしたいのなら
現魔王様の部下になりなさい、そうすれば使わせてあげる
それが、このカジノでルールだから」
サキュバスは微笑みながらそう言う
しかし……内心は違う
『さぁ、この欲に引っかかりなさい
引っかかったら一生、このカジノから出れないんだから』
「じゃあ、いいや」
「は?」
「いや、だからいいやって」
「な、なんで?」
「だってぇ、現魔王の部下とか死んでも嫌だもん
それに今はロイ君一筋だから」
「……そ、じゃあ自力で集める事ね」
それだけ言うとサキュバスはどこかへ姿を消してしまう
それを確認したリナリアはリーナに話かける
「よく引っかからなかったわね」
「え? 当り前でしょ、私の事をわからない低級如きに……」
「私の事って……現に周りの連中もあなたに気づいてないわよ?」
「それはサキュバスの魔法のせいよ、眼を見なさい」
「……眼?」
リーナに言われ、遊戯の場を叫びながら見ている観客の声を横目で見る
すると眼は『生きていない』、それはまるで人形のように……
「なるほど、サキュバスの毒にやられたってこと?」
「毒と言うより、自分の欲に負けたのよ」
「……あの子、ミミリアはどうなのかしらね」
「さぁ? あの子は自由すぎてわからないから私はパス」
それだけ言うとリーナは楽しそうな遊戯を探し動きだす
その後を追うようにリナリアも続く
そして……噂のミミリアはサキュバスと遭遇していた
「あら、エルフの子なんて珍しいわね」
「……何? サキュバスのおばさん」
「お、おば……私はまだ若いわよ?」
「……何の用?」
「さっき勝ったみたいだけど、楽しかった?」
「まぁまぁ」
「……ねぇ、もっと簡単に勝てる方法あるわよ」
「へぇ、どんな方法?」
『食いついた……!』
サキュバスはミミリアの言葉に少し微笑み話を進める
「教えてほしかったらコイン1枚と交換でどうかしら?」
「じゃあ、遠慮する」
「い、1枚でいいのよ?」
「1枚しかないもん」
ミミリアは右手の掌に1枚のコインを見せる
それ以外にコインがあるような感じはミミリアからしない
「だってあなた……さっき勝ったわよね?」
「うん、勝ったよ、ああ……勝った分はあげちゃった」
「あげた? ……あなたはそれでいいの?」
「別に? 私はここから出れればいいし」
「出るにはコインが必要なのよ?」
「知ってる、って言うかさ……そうやって情報引き出そうとするの
やめてくれない? サキュバスのお・ば・さ・ん」
「おばさんじゃないわよ!」
サキュバスはミミリアに怒鳴るとミミリアは動揺する事なく
平然とした顔でサキュバスの顔を見ると、言う
「……まぁ、とりあえずその情報とか言うのいらない」
「そ、じゃあ負けちゃえばいいんじゃない?」
サキュバスはそれだけ言うとまた姿を消す
その消えた方向を見ながらミミリアはコインを空中に飛ばしながら言う
「負けないよ? だって……は得意だから」




