-第2-ブック・オブ・グリアス
「は?」
その声を聴いたロイは疑問のような変な声を発する
しかし……その声はまた同じように同じ言葉を述べる
『この本を手にし魔界の物よ……我の力を望むか?』
「……お前は誰だ?」
『この本を手にし魔界の物よ……我の力を望むか?』
「……」
ロイはその言葉にイラついたのか自分のベットの上に座り足を組む
その行動を読み取ったリナリアは隣に座り
両手を自分の膝の上に置くとロイに説明を始める
「どうやらこの本の声? は……特定の言葉以外受け付けないようですね
例えば……そうですね、望む……望まない、どちらかですね」
「……めんどくさいな、じゃあ……望まない」
『この本を手にし魔界の物よ……我の力を望むか?』
「いやだから……望まねぇよ」
『この本を手にし魔界の物よ……我の力を望むか?』
「……おい、リナリア……どういう事だ?」
「どうやら……選択は1つしかないうえに答えるまでこの声はずっと響きますよ
こんな声を朝から晩までとか……拷問ですね」
「あー……めんどくせぇ……望むよ、望む」
『しかと答えを頂いた、ならばこの本の効果を説明しよう』
「効果?」
『ブック・オブ・グリアスは禁忌の魔導書
周囲にいる人物の魔法、技を使う事ができる』
「……まじかよ」
『ただし、1度使う事に本の1ページは燃え散る
使い続ければ……答えはでるだろう』
そこまで言うと本は何事もなかったように地面に落ち、本は閉じられる
それをリナリアが拾い、ロイの手の上に置くと笑顔で言う
「こんな凄い力を手に入れたらなら魔王を目指せますね」
「……リナリア、お前が仕組んだんじゃないか?」
「どうやってですか……というかその本自体、どこから来たのか
知りませんし……何よりも『ブック・オブ・グリアス』って名前知りません」
「……まぁ、物は試しだ、リナリア……実験台になれ」
「え?」
「っていってもこれ……どうやって使えばいいんだ?」
ロイは本の表と裏を見た後、本を開きリナリアの方へ向けた時
本の空白のページに突然字が刻まれて行く……
そしてそのページは薄い蒼色のオーラーと共に杖になる
その杖を見たリナリアが驚いたように言う
「そ、その杖……この子を作るための触媒にした杖
たしか……デーモン・オブ・ロッド……」
「ふーん」
ロイはそう言いながらその杖を持つと……突然頭の中に何かがなだれ込む
それは……リナリアが持っている魔法そして妖精魔道具の力
「……なるほどな」
「……? どうしたんですか?」
「おい、リナリア、試しに俺に魔法を打て……そうだな
『収束ダークネス』でいいだろ」
「え?! ロイ様……どうしてこの子ができて初めにためした魔法を?!
たしかロイ様寝てましたよね……まさか起きてたんですか?」
「いいから早くしろ」
驚いているリナリアを他所にロイは立ち上がり
持っている杖をくるくると回し構える
それに合わせ、リナリアも立ち上がり、狭い部屋の端まで行くと詠唱を始める
それに合わせ妖精魔道具の周りの魔法陣が展開され……その直後
「どうなっても知りませんからね?! しゅーそく! ダークネス!」
・収束ダークネス
闇の魔法の1つであるダークネス……闇を凝縮して放つダークネス
それはレーザーのように一直線に放たれる闇
それを妖精魔道具の力でさらに圧縮し2倍以上の火力として放つ
そのダークネスがロイに向けて放たれた直後
ロイは杖を構え……詠唱なしで言葉のみで言う
「……収束しろ、ダークネス!」
その直後、リナリアが放った収束ダークネスよりもさらに太く
極太となった闇のレーザーが杖から放たれる
そのレーザーはリナリアの魔法とぶつかり……そして打ち勝つ
しかし……打ち勝った影響によりレーザーがリナリアに直撃しようとした直後
ロイは武器を手放す、するとレーザーは消え、杖だった物は塵のように消え去る
「え? え?」
リナリアは急な事に驚きその場にしゃがみこんでしまう
するとロイは本を閉じ、右手で持つとリナリアに近づき
左手で頭に手を置き……説明を始める
「ようは標的にした相手の魔法と技を盗み、それに適応した武器に紙が変化し
さらに同じ魔法を倍近くして放つ事ができるわけだ……さすが禁忌だな」
「……す、凄い」
「たしかにな、だが……それを何度も繰り返せばこの本はすぐに塵になる」
「1回の事に1ページ消費する……たしかに諸刃の力ですね」
「まぁ……魔王と言う職がなくなったせいで魔力も力も無くなった俺には
丁度いい代物か……さすがに本を構えながら戦うのはカッコ悪い」
「そ、そんな事ないですよ! というか今戦うって言いましたよね?!」
「……言ったかな?」
ロイは惚ける素振りをするとリナリアは『言いました!』とロイの前に顔を寄せ
そしてそのままの状態で喋りだす
「いいですか? ロイ様が頑張れば魔王の職に戻れるです」
「ど、どうやって……一度、勇者に負けたんだぞ?」
「問題ないです、ようはここ魔界の『第100盤』から上に上がり
一番上にある魔王城の現魔王を倒しちゃえばいいんです」
「……忘れてたわ、一応ここ……魔王城の地下の地下、最下層なんだよな」
「そうですね、と言っても人間はここにこれませんから……
相手は魔王の職を取り戻す元魔王と……あとは下剋上を狙う雑魚ですね」
「雑魚って……まぁ、たしかに……と言っても俺にはこの本しかないぞ」
「大丈夫、ここはどーんと私に任せてください
リナリア・ミルは力を失ってません!」
リナリアは胸付近を右手で叩く
その胸の大きさは大きく……叩いた事により揺れる
それをロイが横眼で見ているのを他所にリナリアは喋り続ける
「これでもロイ様が元魔王の時に一緒に鍛えたお蔭で
物理から魔法……いろいろな事をできるようになったんですよ」
『そうだった……こいつリナリアの吸収力が半端ない
魔界図書館の本を全て読み、理解し……物理、打撃系もそつなくこなす
元々のスペックが高かった……だからこそ今の現魔王が欲しがるんだ』
「ま、まぁ……私はロイ様の妻ですし……絶対付いていきます」
「……いつ妻になったよ」
「今? というか嫁って言ってくれた時点でそうよね?! イミィ」
「そうだね、元魔王が自分でそう言った、だからご主人は妻だね」
「おい、てめぇ……余計な事言うなよ」
ロイはリナリアの肩のイミィを左手で掴むと睨む
その時……少なからず『ある』感触がある
その感触にロイは一瞬、イミィの顔を見るとリナリアがクスクスと笑いながら言う
「あ、その子『女の子』ですよ、ロイ様」
「……」
「そうだぞ! 馬鹿元魔王、僕は女の子だ、優しく扱え」
「……めんどくせぇ」
ロイは妖精魔導具……イミィを手放すと頭を左手を置き
ベットの上に座ると……本をテーブルに置き、横になる
「ロイ様……また寝るんですか?」
「疲れた」
「はぁ……朝ご飯も食べてないですしね
まぁ……ここより上に行けばおいしい食事があるんですけどね」
「俺はここの屑飯で十分だ」
『第100盤』
魔王城の地下……人間が踏み入れない魔界の魔宮
10盤毎に下に行き、最下層は100盤になる
そして……下に行くほど……売ってる物は貧相になる
「わ・た・しが嫌なんです、ここの物は屑の屑
野菜で言うなら芯だけしかない、肉なら売れ残った物
それは私が許しません、夫には新鮮な物を!」
「そ、そうか……」
「だ・か・ら……もう一度寝て起きたら出発しましょ」
「ぇ……」
そう言いながらリナリアはロイのベットに潜り込む
ロイの立った一言がリナリアと言う人物を本気にさせ
さらに……ロイの妻になってしまったのだから……
『前途多難……まぁ、リナリアはかわいい……じゃなくて
俺はまた魔王と言う職を目指すのか……こんな底辺から……
まぁ、やるだけやってみるか……こいつのために……』
ロイはそう思いながら横で丸くなって寝ているリナリアの頭に手を置くと目を瞑る




