-第19-結果は見えていた
このゲームの1つの利点は
悪魔を何枚だそうとそれは1枚として扱われ
人間も2枚以上でも2枚と扱われる
だからこそ、悪魔2枚と4枚でも引き分けになる
『なるほど……少しは理解しているようですね』
ディーラーの男性は持っているカードを眺める
そのディーラーの眼をミミリアは追っている
『流石に感情を表にださないか……』
「さて、私の出すカードは決まりましたよ」
ディーラーの男性は笑顔で場に2枚伏せる
それに合わせ、ミミリアは1枚だけ場に置く
「おっと、1枚だけでいいのですか?」
「……うん」
「そうですか、では……オープン」
テーブルの光がカードをオープンさせる
すると、ミミリアの方は『悪魔』1枚、ディーラー側は『悪魔』2枚
「……よく、わかりましたね」
「わからなかったよ」
「……は?」
ミミリアの言葉に少し動揺した様子でディーラーの男性は声をあげる
それに微笑みながらミミリアは答える
「……だって人間2枚だされたら負けてたもん」
「……」
ディーラーの男性はミミリアを見下ろしながら黙っている
その視線は明らかに睨んでいる事がわかる
「では、次を始めましょう」
「うん」
ミミリアはデッキからカードを引く
その手札は『悪魔』『人間』『人間』『悪魔』『悪魔』
「じゃあ、私はこの2枚」
今度はミミリアが先にテーブルに2枚のカードを置く
それに合わせ、両目を瞑るようにディーラーは1枚のカードをテーブルに置く
「あれ? もしかしたら人間かもよ?」
「それはないと思いますよ」
ディーラーの男性は右手で持ってる手札をチラチラと振る
その動作にミミリアは気づいた
『なるほど……私が何を持っているのかわかってるのね
しかも……人間を手札に余らせている……だけどね』
「では、オープン」
「……はい、私の勝ち」
「なっ?!」
テーブルの上に置いてあるカードは
『人間』が2枚、『悪魔』が1枚
「なにそんなに驚いてるの?」
「私の手札には既に人間が3枚、これ以上はデッキにないはず」
「なんでデッキにないのがわかるの?」
「……っ」
ディーラーの男性は唇を噛む
だが……周囲の観客もそれを聴いてヒソヒソと話を始める
それに気づいた男性は笑顔でミミリアに言う
「私の負けですね、コイン5枚どうぞ」
「ありがとっ」
ミミリアはそれだけ言うと手札をテーブルの上に投げ
コインを受け取るとそそくさとどこかへ行ってしまう
それに溜息を付きながらディーラーの男性がミミリアの手札を見る
『やっぱり、悪魔だらけ……では、どうして人間を?』
その『イカサマ』に気づかなかったディーラーを余所に
ミミリアはその男性から離れた位置で1枚のコインを投げながら微笑んでいる
『気づかないんだ、最初にやった『人間』のカードを混ぜたのを
ちなみにだけど……デッキを切る振りして取る順番も計算してたんだ』
そのためにわざとミミリアは相手を誘導する振りしてカードの枚数を計算した
しかも……人間のカードがしっかりと相手に行くように計算して……
『と言っても、あのデッキに魔法がかけられていて
人間が必ず『4枚』、あの人に行くようになってたみたいだけど』
デッキを切りながら可笑しな感覚を感じたミミリアは
そう考えて、デッキを切り続けた
テーブルに既にあった人間が必ず、自分の手札に来るように……
『と言っても私はイカサマしてるんだよね、最初デッキから引くとき
デッキからじゃなくて、服に隠してたもん』
ミミリアの服装は最初に着ていた茶色の布
しかも、その布は長く手の指すら隠せるぐらい長い
そんな服なのだから……カードを隠すのもお手の物である
『エルフは悪魔よりも知能は高いほうなんだよーだ』
そして結果的に手札に2枚の人間が来る
と言っても相手側も『イカサマ』をしていたのだから
お互い様と言えばお互い様なのであるが……
「あれ? リナリア」
「……ミミリア、どこに行ってたの?」
「はい、あげる」
ミミリアが2枚ずつ
リーナとリナリアに投げる
それをリナリアは両手で受け取り、リーナは片手受け取る
「いいの?」
「いいよ、さっき勝ったコインだし、それに1枚の方がやりやすいんだ」
「……?」
リナリアが首を傾げてるのを右手をあげるだけでミミリアは
またどこかへ行ってしまう、その行動の真意に気づいたリーナは
リナリアに微笑みかける
「折角の餞別よ、これを増やさないとね」
「……貰ったのは嬉しいのですが、何枚集めれば……」
「あそこに書いてあるわよ」
リーナが指をさす先にはボードのような物に
何枚毎で何が貰えるのかこと細かく書かれていた
そして……その一番上には
『420.000枚 魔王の嫁』
「え?! お嫁……ロイ様のお嫁さんに……」
リナリアはそれを見ると体をモジモジと動かす
それにリーナは呆れた顔で溜息を付くと言う
「現魔王の事よ、まぁ……あんたがそれでいいなら集めればいいと思うけど」
「……ゴミですね、誰が42万枚集めるんですか」
リナリアが侮辱するような態度で両腕を組み、リーナに言うと
リーナは右手を挙げ、右親指で自分の後ろを指す
「あの群れ」
「……ばからし」




