-第16- ブック・オブ・グリアスの本質-
「ロイ様っ!」
リナリアはロイに駆け寄る
それの後をゆっくりとリーナは歩き、ロイと眼が合うと片手をひらひらと振る
「ロイ様……一体どこから本を?」
「ん? ああ、リナリア達が遊んでる最中に気づいた事なんだ」
それはリナリアとリーナが空中で姉妹喧嘩をしている時の出来事……
「まったく……あの2人は仲が良いんだな」
ロイは1人、木のテーブルの上に置いた本『ブック・オブ・グリアス』を
手元に引き寄せ、適当なページをパラパラと捲る
しかし……どのページも白紙、文字1つ書かれてはいない
『……この本がもっと実用的だったらいいんだがな……』
そう思いながらロイは無心で白紙のページを開いていく
そしてある程度捲った所でロイはある事に気づく
『……ん? 俺は武器としてこれを使っていたが
物を作ったり……これに影響を与える物はどうなんだ?』
ロイは適当なページを開き、空にいるリナリアに目標定める
その影響に白紙のページにリナリアの使える物が写る
『あった……物質を異空間入れ、出し入れする能力
こんな便利な物を……料理道具入れに使うあたりリナリアだな』
実際違うのは……ここから
リナリアの能力がのっていたページは音をたてて灰になる
だが……自分の手元に『杖』だったりと実物はない
「っと……」
ロイが手をかざすとリナリアが見せてくれた魔空間よりは小さいが
似たような物が目の前に存在する
『なるほど……実物じゃなく、その物が残り続けるかぎり使えるのか
と言っても『元』はリナリアが管理してるのだから
実際は……こっそり借りてるような物か』
そう……物がそこに残り続けるのなら大丈夫
しかし、この本は武器を『別物』として扱ってるようで
どんな物を武器にしようとも、最後には空気に消えてしまう
「まぁ、そういう事だ」
「と言う事は……私の『これ』の中にロイ様の本が入ってる事に?」
リナリアはそう言いながら自分の魔空間を広げ右手を入れている
だが、何も掴まず……魔空間から手を抜く
「でも、私はその本をとれないですよ?」
「こいつがリナリアを主人として認めてないって事だろ」
「……物の癖に生意気です」
リナリアがほっぺを膨らませてるのを余所にリーナが首についている
イヤリングを指さしながらロイに質問する
「あれ? でも……これは物よね?」
「物だな、ようは武器として使用できない物
アクセサリーだったり、服だったり、そういう物は論外みたいだ」
「ふーん、で……その『ブック・オブ・グリアス』はなんなの?」
「本だな」
「ええ、本です」
「それは見てわかるわよ! それ自体が何者かって事」
「……便利な本?」
「便利ですね」
ロイとリナリアが顔を見合わせ、そう言い合っているのにため息を付き
リーナは『もう、いいわよ』と右手を振り、歩き出す
それに続き、ロイもリーナの後を追う中
リナリアは倒れているヘイムに近寄り小さな声で言う
「ヘイム……あたなはもっと強かったはずよ
自分の力に頼らず、欲と物に溺れたのが……結果ね」
それだけ言うとリナリアはロイの後を追うため走り
3人がエレベーターの前付近まで言ったのを確認すると
ヘイムはこっそりと片目を開け、独り言を漏らす
「……ったく、何が魔剣だよ、使い物にならねぇじゃねぇか」
「ごもっとも」
「!? なんだよ」
ヘイムの独り言に目の前に呆れた顔で見ていたイミィと眼が合う
その顔に罰の悪そうに顔を横に背け、ヘイムはイミィに言い返す
するとイミィはため息を付きヘイムに言う
「……ねぇ、あの魔剣擬きだけど、あれ魔剣じゃないよ」
「……あん?」
「ただの剣に魔の力を注ぎこんだ物、ご主人とその姉は気づいていた
見たいだけと……さっきのご主人の言葉とロイの行動でわからなかったの?」
「……」
「はぁ……2羽と言っても所詮その程度……がっかりしちゃった」
「お前にがっかりされそうと俺には関係ないね」
「そうだね、でも1つ言えるのはロイの元部下で
ご主人の下にいたのなら……『もうちょっと手応え』があったと思ってね」
イミィがそこまで言うとリナリアから『イミィ、行くわよ』と声をかけられ
イミィはリナリアの元に飛んで行ってしまう
その時のイミィの視線と言葉、それはヘイムを呆れ、見下した眼と言葉
たかが使い魔に言われたと思えばそこまでなのかも知れないが
ヘイムを右手を眼元にあて……誰もいない場所で独り言を言う
「……俺は……現魔王の脛をかじってただけなのか……」
そしてエレベーターに乗った3人と使い魔
しかし、そこで問題が1つあった
「狭い……」
「この馬鹿姉がついてきたせいでエレベーターにゆとりがないんです」
「私のせい? 違うでしょ?! あなたが太っただけでしょ」
「は? 自分でしょ? ふざけないでよ!」
リナリアとリーナの口喧嘩を密室で聴きながら呆れた顔をするロイに
イミィがリナリアの肩から飛び、ロイの肩に乗ると話かける
「ねぇ……ヘイムってさ、あんな武器を使ったほうが強かったの?」
「ん? あいつは武器なんて使わないほうが強い」
「そうなんだ」
「ああ、物理……殴りの部門だけ言うなら十分に強い奴だったんだがな」
ロイはそう言うとエレベーターの天井を見上げ、悲しそうな顔をしていた
それに気づいたイミィは無言を両目を閉じ、2人の口喧嘩を聴きながら
次の階層につくのを待っている




